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天才とは

総合1000ポイント突破しました。思ったより多くの人に読んでいただいていて驚いております。これからも読んでいただけると幸いです。

「ネージュ、反省会もいいけど、そろそろ次行くよ」


脳内で先ほどの戦闘の問題点とその改善策及びシミュレーションをしていた僕は先輩の声で反省会を切り上げる。


「分かりました、シエルさん」


返事を先輩の後に続く。ふと意識を配信画面に向けると視聴者から先ほどの戦闘に関する称賛の声や驚きの声が目についた。自分としては納得のいく内容では無かったが視聴者からの評価は上々のようだ。少ないとはいえ上がっていたシエルさんの足を引っ張るから配信に来んなといったコメントがなくなっている。その様にコメント欄を眺めているといくつか質問が来ていることが確認できた。


{どこでそんな戦闘技術を磨いたんですか?}

{いつから剣を振ってたんですか?

{剣を習い始めたきっかけは何ですか?}


「いくつか質問が来ている様なので順番に答えていきますね」


「えっと、先ずどこで戦闘技術を磨いたのか、ですけど、これは高校卒業まで所属していた道場ですね。通い始めたのが3歳からなので計15年間剣を振ってきました。まあ通うというかほぼ道場に住んでたんですけど」


{住んでた?}

{どゆこと?}


そこまで話した所で更に視聴者から疑問が出てきた。この理由には僕の両親が絡んでくる。


「あ~、少し暗い上に長い話になるんですけど、僕の両親って僕が高校2年生の時に僕を置いて蒸発したんですよ。


そのあと何とか高校は卒業して進学はせずにブラック企業で2年間働いていたところをシエルさんに声かけられて今こうして配信を一緒にさせて頂いてるんですけど、高校生の子供を置いて蒸発するような人がまともな訳がなくて。


僕が小さいころ虐待を受けてたんですよ。それである日、家から逃げ出して街をさ迷っていた時に道場の師匠に助けられて、暴力から身を守る為の護身術を学んだんです。


そしたら、それが意外に楽しかった上にどうやら僕には戦闘の才能があったみたいで、それを見いだした師匠に家には居たくないだろうからここで生活してわしの技を習得せんかと提案されて、それを受け入れた僕は高校卒業までのほとんどの時間を師匠の道場で過ごした訳です。


まあ、だから両親が蒸発したこと自体には大して傷つかなかったんですけど、お金のことは困りましたね。あんな両親でも必要な金は払ってもらってましたから」


あははと笑って話を終えると、コメント欄では、


{波乱万丈過ぎるよ…}

{ネージュくん、今まで大変だったんだね…}

{師匠に出会えて良かったね}


僕の過去を労る言葉がたくさんあった。ここは暖かいな。両親は最悪だったが、それ以外で僕が出会って来た人たちは素晴らしい人ばかりだ。特に師匠と先輩には、頭が上がらない。もし、あの時師匠に出会えてなかったらと思うとゾッとする。まず間違いなく今こんなに元気で生きていることはなかっただろう。


そう思うと近いうちに師匠の所に顔を出しにいくべきだろう。卒業後ブラック企業に入ったせいで、1回も行けてないし。


近いうちに師匠に会いに行くことを決めた僕に先輩の声がかかる。


「ネージュ、次の獲物が来たよ」


その言葉を聞いて切り替えたぼ僕は視界に映っているウサギのようなモンスターに「識別」のスキルを使う。


種族:ホーンラビット


相変わらず種族名しか読み取れないが、要するに角が生えたウサギだ。それが3匹。さっそく倒そうと刀を抜いて歩み寄ろうとすると、先輩に杖で制された。


「次は私がやる」


どうやら次は先輩が1人で戦うようだ。大人しく僕は引き下がると


「頑張ってください、シエルさん」


先輩を応援する。


「ん、」


短く返事をした後、杖を構えて詠唱を始める。


10秒程の詠唱の後、杖の先端が光り魔法が発動される。


「ファイヤボール」


直径10cm程の火の玉が3匹の中で1番油断していたホーンラビットのもとに一直線に飛んでいき命中した。

小さくないダメージを与えたが倒すには至らない。今の攻撃で油断していたホーンラビットも警戒体制になった。


己の持つ角で、先輩を貫かんと突進してくる。初見でかわすのは素人には難しいのではないかと思われるスピードをしているが先輩は危なげなくかわしてお返しの魔法を発動する。


「ウィンドアロー」


文字通り風の矢が先ほどファイヤボールを食らった個体に向かって飛んで行く。当たったら死んでしまうであろうその攻撃をホーンラビットは何とかかわした。


お互い攻撃をかわされる展開になっているが有利なのは先輩だろう。ホーンラビットの方は何とかギリギリ避けているのに対し、先輩は相手の攻撃のタイミングを完璧に読んで危なげなくかわしている。


そして先輩は同じ失敗を2度もするような人ではない。そもそも失敗と呼べるようなものではないが。攻撃のタイミングを読んで相手が突進してきたタイミングでクールタイムがとけた魔法を発動する。


「ファイヤボール」


なかなかのスピードを出しているためとっさに避ける事ができなかったホーンラビットは2回のファイヤボールに耐えられず倒れた。


これで後2匹。


1匹倒れたことで更に攻撃的になった残りのホーンラビットは2匹でタイミングを合わせて突進するが、攻撃手段がそれしかないため先輩に完全に避けられている。


また、先ほどと同じように突進してきたところに魔法をぶつけるのかと思いきや先輩はかわした直後に魔法を発動した。


「ウィンドアロー」


さっき避けられた時の二の舞になるかと思いきやそもそも放ったウィンドアローがホーンラビットの横1匹分ずれた所に向かっている。


これは当たらない。そう誰もが思ったその瞬間本来まっすぐにしか飛ばないウィンドアローがクンッと曲がった。当たらないと油断していたホーンラビットに命中する。


その後、突進したら避けられないタイミングで魔法を発動され、当たらないと思った魔法が曲がったり落ちたりして当てられたホーンラビットたちは何も出来ずに先輩に完封されるのだった。





「お疲れ様です。シエルさん。さすがでした」


先輩に労いの言葉をかけると、


「ん、ありがと」


表情もあまり変えずに返事をする先輩。


「あの、魔法が曲がってたのはどうしてですか? 魔法ってまっすぐにしか飛ばないはずですよね?」


先ほどの戦闘で気になった点を先輩に質問する。


「ん、確かに普通はまっすぐにしか飛ばない。だけど私はマニュアルで魔法を発動させてるからある程度軌道を変えられる」


…なんて事の無いような言い方をしているがマニュアルで魔法を発動させるというのはトンでもない技術がいる。そもそも魔法というのは詠唱を終えたら後はその魔法が設定されている軌道を描く。


つまりプレイヤーは詠唱と最初のエイムさえ合わせれば良いわけだ。しかしマニュアルで操作しようとすると桁外れの空間把握能力と演算能力が必要になる。まっすぐ敵に向かって発動するのでさえ普通は難しいのだ。


その上曲げたり落としたりするのがどれだけ難しいかは語る必要も無いだろう。もちろんこの高等技術ももっと遥かに時間が経てばトッププレイヤーの何人かは使えるようになっているだろう。


しかし、今このタイミング。正式サービス初日にこの技術を使っているのははっきり言って異常だ。これが先輩、如月天音が天才たる所以である。


僕は天才と呼ばれる人種には2種類いると考えている。


1つ目はある特定の分野にずば抜けた才能を持っている人。自分で言うのも何だが僕の戦闘に関する才能もここに分類される。ここに分類される人の中には他のことは平均と比べても全く出来なかったり、独特な自分だけの世界を持っていたりと変わっている人がいるのも珍しくない。


もう1つは何でも人よりありとあらゆる面で優秀な人だ。仮に先輩を分類するならここに分類されるだろう。先輩の場合もし幼い頃から努力していたら女性初の棋士だったりオリンピックで金メダルを取ったり、ノーベル賞を取ったりする事が出来ただろうと思う。そもそもある分野で世界のトップレベルの場所で戦おうと思ったら才能は必須だ。


こんなことを言うと努力が1番大事だと主張する人が怒るかも知れないが、僕の考えだと1番大事なのは才能だ。とはいっても努力が必要ないと言っているわけではない。例えば学生の部活であれば才能が無くても一生懸命努力すれば自分より才能がある人にも勝てる可能性は十分ある。


ただし、世界のトップであれば話は別だ。はっきり言ってこのレベルになると限界まで努力をするなんて至極当然のことで周りも全員そうしている。そんな中で才能が足りない人が勝つことが出来ないのは自明だ。


そんな中で先輩は異常だと言っていい。先ほど言った何でも人より優秀なタイプの天才だが本来はあくまで他の人よりある程度優れているだけだ。イメージで言えばあらゆるジャンルで偏差値60を超えるぐらいだろうか。間違いないく優秀だがそれ1つだけを見ると別に天才と呼べるレベルではない。ありとあらゆる面でそうだから天才と呼ばれるのだ。


しかし、先輩はありとあらゆる面で偏差値75以上を取れると言えば良いだろうか。1つだけを取ってみても天才と呼べるラインにいるのにそれがたくさんある。神は二物を与えない、何てよく言うが先輩を見ても同じ事が言えるのだろうか。


そんな事を考えていると、コメント欄が賑わっている。


{マニュアル操作とかヤバすぎw}

{シエルちゃんとネージュ君のコンビマジで最強まであるぞ}

{シエルさんさすが}


どうやら先輩を称賛しているらしい。確かに称賛されるべきプレイだったが視聴者は先輩の異次元さを正しく感じ取れているのだろうか。はっきり言って、ドン引きしてもおかしくないレベルなのだが。


そんな風に僕は先輩の凄さを改めて肌で感じるのだった。
















先輩がチートすぎるっていう話。

ちなみに戦闘に関する才能は先輩も天才と呼べるレベルですが主人公と比べると大分劣ります。

つまり主人公の才能は天才というか化け物です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんかゲームの知識ありすぎじゃない? 相当難しいらしい。とかみたいちに○○らしい。なら分かるんだけど実体験感がすごい。事前に調べた描写とかをしっかり入れるとかでもしない限り違和感は残っ…
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