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87/215

87,エルフじゃん。

 


 骸骨魔導士スケルトンメイジは致命傷を受け、死んでしまった。骸骨だろうとも、死ぬのである。

 私は合掌した。


「相手が悪かったよ。『時間停止』とかいうチート持ちが相手じゃ、さすがの骸骨魔導士スケルトンメイジだって、対処できなくて仕方ないよね。というか、ヨグがいなかったら詰んでたね。へんなところで、詰んでたね」


 骸骨魔導士スケルトンメイジの死体は光の粒子となって消えていった。振り返ると、はじめに私の死霊戦士として召喚で来てくれたのだ。暴走した魔獣に殺されなかったのも、骸骨魔導士スケルトンメイジのおかげである。ありがとう、骸骨魔導士スケルトンメイジ


「〔冥王七人衆〕の一角が、こんなところで亡き者にされてしまったよ……この空位、誰を入れよう。悩む」


 ユリシアが溜息まじりに言う。


「そんなことはどうでもよろしいのです、お姉さま。ここで骸骨魔導士スケルトンメイジを失ったことの痛手は、そこではありませんのよ。まずお姉さまの護衛がいなくなります。骸骨魔導士スケルトンメイジは、いざようの護衛要員として、それなりに信頼をもっていたのですが。確かにお姉さまの指摘どおり、今回ばかりは相手が悪かったですわね。ヨグでさえ、瞬殺できない敵でしたもの」


 ヨグが、淡々として訂正する。


「ライラちゃんを護ることを最優先にしなければ、あの程度は瞬殺できた」


 ユリシアはぶつくさ言っている。


「骸骨戦士の軍の指揮官でもあったのですがね。とはいえ、先日のラン要塞のときも現れない骸骨軍など、用などはないのかもしれませんが。しかしながら、指揮官不在は厳しいかと」


 結局のところ、誰しも死ぬときは死ぬものだ。私もいつかは死ぬのだなぁ。私が死んだあと、ユリシアたちはどうなるのだろう。


「まぁ気を取り直していこうよー」


 気を取り直したところ、頭取の執務室を発見。そこでは半裸のエルフと、筋骨隆々の男が事に励んでいた。つまり、性行為ですよ。


 ユリシアが顔をしかめる。


「商売女ですわね、あれは」


「こらこら頭取さん。職務中にプロの方を入れるとは、何事かな」


 私が注意したところ、頭取だと思っていた筋骨隆々の男が悲鳴を上げて、「すいません、すいません」と言って逃げて行った。残った半裸のエルフがデスク(先ほどまでは正しい使いかたをされていなかった)に腰かけて、足を組む。


「侵入者って、あんたたちのこと?」


 えー、つまり、商売女ではなく商売男だったわけか。そして、こちらのエルフ美女さんが、リキュール地下銀行に君臨する頭取。確かに風格がある、たぶん。

 ところでエルフ美女さんの、とんがった耳を眺める。あんまりじろじろ見ると失礼かもだけども。


「はじめまして。エルフとは、初めて会うよ」


「そうなの? まぁ意外なことじゃないかもねー。ロゴス王国じゃ、エルフの一族は多くないし」


「私たちがロゴスから来たのを知っているの?」


「エマ王女を連れてきたんでしょ? それで当人はどこにいるのかな?」


「ここには連れてきていないよ。エマ王女をどうするつもりだったのか、事情を聞いてからじゃないとね。それを聞き出すために副頭取を拉致ったわけだけども」


 するとエルフ美女、頭取、その名は──執務机のネームプレートによると、アデライドは、楽しそうに笑った。


「副頭取? あんな男、詳しい事情は知らないよ。けど、今回は特別に、この私が教えてあげようか。エルフというのは、心が広いからね。侵入者に対しても、礼は尽くすものさ。ついておいで」


 半裸のまま歩き出すアデライド。なんとなく、ガリーナと気があいそうだよね。いやそれとも、同族嫌悪的に仲が悪いかな。


 ユリシアは警戒しながら、アデライドに問いかける。


「先ほど、こちらのほうから男が歩いてきましたが。魔眼の男です。あれは何者ですの?」


「魔眼の? あー、それはお得意さんだね。しかし顧客の情報を、そう簡単には教えられないなぁ」


「聞き出す方法ならば、いろいろとありますのよ」


「あいにくエルフは、痛覚を切れるから拷問に強いよ」


 やがて昇降機のところに出た。アデライドが乗り込み、私とユリシア、退屈そうなヨグが続く。アデライドはヨグを眺めていたが、ふいに顔色が悪くなって、そっぽを向いた。邪神の正体に気付いた? それはエルフだからこそなのか、アデライドが特別なのか。やがて昇降機で降りた先で、さらに入り組んだ通路を進む。


 ついに、ひとつの貸し金庫の前に出た。行き止まりの壁に埋め込まれている代物だ。


「これを開けるために、第三王女は『運搬』されてきたわけ」


 私は、変哲のない(見た目は)貸し金庫の扉を叩いた。


「エマじゃないと開けられないの?」


「そうだよ、冥王さま。この貸し金庫は、特別な魔導が組み込まれているからね。何重にもわたる防衛魔導が。それは破壊することはできない。ただし、ある者だけが開けることができるわけ」


 私、冥王と名乗ったっけ?


「エマ王女は、こんな貸し金庫のことを知らないと思うけども」


 するとユリシアが、何かに気付いた様子で言った。


「遺伝子ですわね。エマ王女が受け継いだ遺伝子に反応するのですわ」


「ご名答」とアデライド。


 私はヨグを見た。ヨグが変な顔をしている。


「どうしたの?」


「ライラちゃん。この金庫、作ったのは、わたし」


 世界は広いようで狭いものだなぁ。


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