18,遠足っぽい。
にしても、またまたわが死霊軍──または死霊ファミリー? なんでもいいけども──大所帯になったなぁ。ちゃんとみんなの名前を覚えよう。
こほん、とユリシアが咳払いした。
「さて、お姉さま。リスダンがつかんできた情報によりますと、〈探索迷宮〉内に研究目的で入った、12人の魔導系統の大学関係者が、予定帰還日をこえても帰ってきませんでした。そこで捜索依頼が正式に出され、どういうわけか、この士官学校の生徒も駆り出されることになったのですわ」
「エイブラムが所属していたパーティだね」
「はい。本来ならば、簡単な任務のはずでしたので、そこまで意外ではないのかもしれません。つまり、士官学校の生徒が参加したことは。ただ経験を積ませておこうと。とはいえ、わたくしは第一候補は、やはりお姉さまだったのではないか、と考えていますのよ。ところがいま、〈王の右手〉である校長は、王宮にいて不在。副校長のシュタン少将は、お姉さまを過少評価しているようですので…………ふむ。不愉快ですわね。この男、消しましょうか?」
「消しませんー。そんなお手軽に人を消していけませんー。
だけどさ、エイブラムたちパーティ、そして同時に捜索に入った、王国軍の大隊も含めて、死んでしまったんだよねぇ。ご愁傷様に」
確か王国軍って、大隊の兵員数は400人だったはず。この数が、一度に捜索のため駆り出されるというのは、やはり〈探索迷宮〉の特性かな。
「はい。では、どのように『全員死亡』が確認されたのか、ですが──というのも、〈探索迷宮〉内でぽつりぽつりと死んでいたのならば、それらすべてを『集計』するのは難しいですし、何よりも生存者がいなければ、報告もできませんから」
「だよね。そこは、私も気になっていたんだけども?」
「結論から申しますと──箱詰めにされて、〈探索迷宮〉の入口に置かれていたそうです。まったく、誰が置いたのか不明ですが──いきなり現れたと」
「あの、ごめん。箱詰めの部分がよく分からなかったんだけど。つまり、何が箱詰めされていたの???」
「生首が、ですわ。ひと箱に、5個。この箱が82個。406人の犠牲者の生首が、すべての箱に綺麗に入れられていたそうです。ところで406人に対して、生首が5個入る箱が82個。つまりひと箱だけ、生首が一個ということですが。なんとその箱には、空いたスペースに、ちゃんと緩衝材が入れられていたそうです」
私は想像してみた。箱の中で、一個だけの生首がころころ転がらないように、ちゃんと緩衝材が詰められている。なんという、丁寧な仕事ぶりでしょう。
「誰が、そんな丁寧な仕事をしたのかな?」
「もちろん不明です。いまごろ〈探索迷宮〉は立ち入り禁止になっていることでしょう。それと不思議なのが、捜索に入った者だけは犠牲になったのに、はじめに入った研究チームは、いまのところ生死不明ということですわね。さて、お姉さま。どうされますか?」
「うーーーん。研究チームのほうは生死不明というのなら、無視はできないよねぇ。ここは捜索しにいくしかないよ。けど私は副校長から待機命令だされているので、もう無断外出がバレたら、退学処分だよ。涙がとまらないよ」
「それでしたら、ガリーナが副校長の蒸留酒に眠り薬を混ぜてきました。これほどストレスのあった日です。いまごろ副校長は蒸留酒を飲んで──深い眠りについているころでしょう」
仕事が早いなぁ。
「じゃ、行こうかぁ。あ、アンバーは留守ば──」
「あたし、留守番しているわ! だってライラの『帰る場所』を守護するのが、あたしの仕事だもの! だから、ここであたしは待っているわ!!!」
「………………うん、まっててねー」
というわけで、出立。
今回は、本当に大所帯パーティ。
まず〔不死者〕たちは、ユリシア以外は、初代剣聖のリスダン、格闘技大会ワンパン優勝者のドラゴ、《女神の祝福》開発者の入れ墨多めの聖女アンジェラ。
そして〔不死者〕以外は、吸血鬼の真祖のガリーナ(ちなみに世間では、吸血鬼もアンデッド枠だが、死霊魔導のもとでは区別されているそうな)。半巨人のダク。人魚族のローレライ。
「みんな、一致団結して、頑張ろうねっっ! えいえいおー、とかする?」
「お姉さま。テンションが高いですわ」
「遠足っぽいとか、思ってないよ!」
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