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17,半巨人と、修道女。

 


 さて、副校長に呼ばれた。

 校長であり〈王の右手〉でもあるコルドー侯爵は、不在のようだ。


 副校長のシュタン少将は、疲れた様子で書類を呼んでいたが、私が入室すると顔を上げた。


「オブリビオン。君は、私が何を言おうとしているのか、理解しているのだろうね?」


「私に、〈探索迷宮(ダンジョン)〉の捜索に向かわせようということでありましょうか?」


「いやその反対だ。君には、なんらこの件にかかわってほしくはない。よって正式に待機命令を出そう。私か、またはより上位の指揮権限を持つ者の許可がでるまで、この士官学校の敷地の外に出てはならん。分かったな?」


「了解であります」


 副校長は話が分かる人で良かった。しかしこの命令に、不満な者もいた。うちのドラゴとアンバー。いやアンバーは『うちの』ではないけどもね。


「くっ。俺の拳がうなりをあげるチャンスかと思ったんですが。そうですか。まさかここの無能な副校長が、姐さんに待機命令を出してきやがるとは」とドラゴ。


 ちなみにドラゴは、いつの間にか、私のこと『姐さん』と言い出すようになった。どう考えても、ドラゴのほうが年上なのだけどもね。いや死んでいた期間を抜きにしても。まぁドラゴにとっての、敬称なのだろうけども。


「せっかく、ライラが〈探索迷宮(ダンジョン)〉での殺戮の謎を解き明かし、あたしたちの株があがるというチャンスなのに」とアンバー。


 ユリシアが溜息をついた。


「なぜお姉さまのご活躍で、あなたまで評価されますの、アンバー? いえ、みなまで言わずとも分かります。確かにお姉さまの名声が轟けば、取り巻きの評価も上がるでしょう。あなたの出世戦略について、お姉さまが承認している以上は、わたくしも文句を言うつもりはありませんが」


 私は、食堂からもってきた紅茶を飲んだ。


「だけどエイブラムは気の毒だよ。まさかこんなところで、志半ばで命を絶たれるなんて。……まぁ、エイブラムの志とかは、私は知らなかったけどね。きっと士官になって、国のために尽くしたかったんだろうに」


 アンバーがあきれたように言う。


「ライラ。それはエイブラムを過大評価しすぎ。あいつはただ、父親の言われるままに士官学校に入っただけよ。箔がつくのよね、士官って。ただ軍内でのし上がろうという野心はなかったから、ここを卒業したあとは、父親のコネで後方支援部に回してもらう予定だったわ。つまり、たとえ戦争となっても、安心安全なところでぬくぬくしようとしていたわけよ」


 ふーむ。しかし捜索任務に行くときのエイブラムは、使命感を抱いていたように思うよ。誰しも、その思考回路は更新されていくのだから。もしかしたらアンバーの知っているエイブラムでは、なくなっていたのかもしれない。いずれにせよ、それはもう永遠に分からないことなのだ。


「……………うーむ。もしかすると、私はエイブラムの仇をとりたいのかもしれない。というより、少なくとも〈探索迷宮(ダンジョン)〉で何が起きたのか、ハッキリさせたいのかもしれないよ。ユリシア、どう思う?」


「それがお姉さまの望みでしたら、わたくしは尽力いたしますわ。さっそく手駒を増やしましょう──」


 その半日後。

 気づいたら、わが部屋は大賑わいだった。まず士官学校に勤めているリスダンがいるのは当然として。ほかに、先日会ったばかりの人魚族のローレライ。この短時間でどうやってキャッスルアンロックから来たのか分からないけど、真祖のガリーナ。

 ほかに、座っているのに天井まで頭が届きそうな、超のつく大男(もちろん巨人族なんかに比べたら、小さいんだろうけども、比較対象おかしい)。

 一方、ガムをくちゃくちゃ噛んでいる、やたらと入れ墨の多い女性もいた。こちらは、修道女の服を着ている点が興味深い。


 ユリシアは腕組みして、


「ふむ。お姉さま、すなわち冥王が呼びかけたにしては、たいして集まりませんでしたわね。まだまだ闇の眷属全域へと、『冥王復活』の情報はいきわたっていないようですが。これはこれで、よしとしましょう。では、新顔のお二人、自己紹介を」


 まず超のつく大男が、汗をふきながら言った。


「へい、あっしはダクといいます。実は半分巨人族の血が入ってまして。あ、誤解しないでくだせぇ。あっしは邪神にはうんざりでして、はい。もう邪神の眷属なんかやってられないと思って、しかし人間社会での生活も大変で、〈暗黒地帯〉でひっそりとやっていたんです。そこを、ガリーナさんに誘われやして。闇の眷属の真王たる冥王陛下が復活されたと。それで、あっしも是非とも、冥王陛下にお仕えしたいと思いやして、はい」


 続いて、入れ墨だらけの、たぶん修道女が言った。


「うちは、アンジェラ。よろしくー。ま、この見た目で分かると思うけど、生前は聖女やってましたー。あ、うちは〔不死者アンデッド〕ね。回復魔導の極致、全回復可能の《女神の祝福》魔導を開発したの、うちだから。長らく死んでたけど、そっちの冥王っちのおかげで、復活したわけ。アンデッドと回復魔導の相性は不明だけど、これからよろしくねー」


 はい、よろしくー。


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