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100/215

100,人型、火竜型、ブチギレ型。



 ロゴス王の影から、無数の屍食鬼(グール)が吐き出される。いやぁ、凄い勢いだよね。ドバドバである。


 しかし屍食鬼(グール)とは、確か〈古き者たち〉に仕えていたはず。そんな異形たちを好んで影から出してくるとは、ロゴス王も趣味が悪い。しかしながら、どういう原理だろう。


 一方、サラマンダーは嬉々として、美女モードから火竜モードへと変身。火竜状態でも話せるようで、私に言った。


「冥王陛下。これこそが、この私が魚娘を凌駕している理由であります!!」


 魚娘って、ローレライのことかい。


 刹那。サラマンダーの口(厳密には口内にある噴出口)から、火炎が噴出される。それは火炎の激流のようで、まとめて屍食鬼(グール)たちを巻き込んでは、生きたまま燃やし始めた。うーん、いいですね。リスダンが私の前に立ち、


「わが君、安全地帯までお逃げください」


 だがユリシアが言う。


「いえ、ロゴス王さえも陽動かもしれません。お姉さま、少々、熱いですが、しばしこの玉座の間でお待ちください。いまサラマンダーとリスダンが、ロゴス王の首を真に取りますのです。リスダン、急ぎなさい。お姉さまは、暑いのよりは寒いほうがお好きなのですのよ」


「いや、それは限度問題だけどもね。ただ寒いほうが、着こめば対処できるよね、という──いったい何の話だい??」


 この間も、サラマンダーは休まず火炎を噴き出している。この火炎は、屍食鬼(グール)のような特殊皮膚の敵さえも燃やし尽くす火力でありながら、不必要なところまでは燃え移らない。つまり王城全体を火災現場にすることなく消滅している。ただの業火ではなく、サラマンダーの操作可能な業火ということだね。

 こんな場面を見ていると、やはり適材適所というものはあるのだなぁ、と思える。いまこそが、サラマンダーが輝くとき。さぁ、敵を燃やし尽くすのだー。


 瞬間。

 ロゴス王の影から、これまでとは異なる屍食鬼(グール)が現れる。その右腕が、これまた異様(屍食鬼(グール)自体が異形なのだから、これはまるで『頭痛が痛い』なみの重複表現である。なんの話だ)。


 とにかくその右腕は、巨大な盾のようなのだ。盾が同化している。しかも盾にふさわしく、なんとサラマンダーの火炎を押し返しだす。サラマンダーがさらに火力を上げるが、ついに〈盾の屍食鬼〉が火炎地獄を吹き飛ばした。

 さらに跳躍し、サラマンダーの腹に蹴りを叩きこむ。火竜状態のため、かなりの重量のあったサラマンダーが、木の葉のように吹っ飛ばされる。

 そのまま壁を突き破って、城外まで飛ばされてしまった。


「あぁっ! 生き生きしていたサラマンダーが! なんということだ!」


「お姉さま。屍食鬼の中には、より強化された者たちがいると聞きます。どうやら、〈盾の屍食鬼〉は、その一体のようですわね。しかし、まさかうちの戦力の中でも『強め』のサラマンダーを撃破するとは。なかなかEASYモードとはいかないようですわね、お姉さま」


「ふーむ。やっぱりユリシアちゃんも、〈盾の屍食鬼〉って名付けた?」


 ちなみに影からはさらに、左腕が剣と同化した、どう見ても〈剣の屍食鬼〉もまた現れた。盾と剣か…………とくにコメントが思いつかぬ。


 リスダンが前に出る。


「わが君、ここは私にお任せください」


 そしてリスダンは、〈盾の屍食鬼〉と〈剣の屍食鬼〉、二体の特異な屍食鬼を相手取って戦いだす。その戦いは拮抗しているように見えたけども、


「剣技《覇道螺旋》!!」


 とたんリスダンの剣が螺旋回転し、その破壊力が増す。しかしリスダンは、繊細な斬撃で敵を斬るのを好む戦闘スタイル。思うに《覇道螺旋》のような大味の技は、好みではないはず。それでも使わざるをえなかったのは、やはり二対一という状況は、かなり厳しいのだろう。


 ふと視線を転ずると、壁の大穴から、サラマンダーが戻ってきた。しかし火竜状態ではなく、美女な人間状態──いや、それとも違う? 基本は美女の姿なのだが、瞳や髪は赤く輝き、火の粉を発している。そして両手は、竜の鱗状。そこから火炎の刃が突き出している。


「サラマンダー、どうしたの?」


 隣にいたユリシアが言う。


「聞いたことがあります、お姉さま。サラマンダーには、三つの形態があると。まず人間の形態、火竜の形態。そして、火竜状態の火力さえも大きく上回る、ヒト型にしてケモノ型の形態。古来より、畏怖をこめてこう呼称されてきました──〔ブチギレ形態〕と」


 私は固唾をのんだ。


「〔ブチギレ形態〕…………………………………………………………まんまだ」


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