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 暗闇の中を歩いていく。彼は男の背中の後ろについて、洞窟を進んでいった。その時低い唸り声のような音がした。グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。動物で例えるのなら野犬のような、しかし明らかに聴いたことのないそれは、彼らを取り囲んで、まるで久しぶりの獲物でも待ち構えていたかの様に、いまにも襲いかかってきそうなのが、声だけで分かった。

「おい、おっさん!これは……」

「ああ、モンスターだな。しかしこれほど多いとは、坊主、俺の背中から離れるな」

 野犬、と思われるものが襲ってきた、円形に囲む奴らは一斉に男たちに襲いかかる。しかし見えないなにかに弾かれる。獣たちは、何か壁にぶつかった様に、一斉に加速した分の反動をその身に味わい地に伏した。

「なんだこれは……」

「坊主、結界を見るのは初めてかい?これは俺が張り巡らさせた防御結界だ、これがあれば安全だが、外にでることできんというデメリットもある、よって……」

 男はなにかブツブツと言い始めた。彼にはその言葉が理解できない。

「風よ、地よ、水よ、炎よ、四大属性司る精霊よ、我に力を貸せ!」

 その瞬間、結界の外が炎に包まれた。その炎は獣たちの毛皮を燃やし、肉を焼いて、骨と臓物を溶かした。結界がなければ、彼も熱さを感じていただろうが、彼には不思議と炎を見ただけで、熱を感じなかった、そうまるでTVでのニュースでも見てるかのように。

「ふう、これでひとまずは安心だな」

「おっさん……」

「こいつが何なのか聞きたそうな顔をしてるな、こいつはいわゆる魔術の一種で、結界魔術という、自身の外側に魔力を放出し、世界と自身との間に壁を作る。

慣れれば身体の外側からある程度距離を離れていても使用が可能だ。さっきみたいにな」

 確かに彼は男の背後に付いて歩いていたとはいえ、野犬のようなモノはそれより数米離れたところで、壁にぶつかり、焼け死んだ。

 彼は魔術の様な不可思議なものを初めて見て、この男を少しは信じる気になった。いや信じてはいたのだが、洞穴の中で都合よく自分を助けた人間に、どうしても疑念が拭い去れなかったのだ。そんなところ自分が死んでいたかもしれない事態に、こうして命を救われ多少の信頼感が芽生えたのだ。

「ありがとう、礼は言っておく、だがこんなのがこれから進んでいく先うじゃうじゃいるのが、この洞窟なのか?」

「礼はいらねぇ、女から貰うならまだしも、野郎、それもまだ青二才の坊主じゃな、それと質問には答えられない、何故ならここに入るのが俺も初めてだからだ。だが、報告によると、この洞窟を探索しに入り、生きて帰ってきたやつはいない、今まで二十四名の戦士たちが入ったが、誰もが行方不明になっている」

「おい、そんな危険な場所なのか」

「心配するな、これでも俺は名だたる魔術師兼ハンターでね、こういう案件を覆してきた男さ、お前だってさっきの結界を見たろ、並の魔術師には扱えん」

「それはそうだけど……」

「なら余計な考えはやめろ、旅は道連れ世は情けだ、黙って俺についてこい、そうすりゃここから出られるよ」

 彼は不承不承に頷いた。まだ彼に対する疑念が消えたわけではない。だが今はこうする他ないのだと理性では分かっていたからだ。

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