お茶会③
スカーレットはシオンの提案に大変感動していた。周囲の令嬢達も同様だった。
お茶会では招待するホストが神経を擦り減らしながら、来客の好みの確認や、派閥の優遇、出すお茶やお菓子の話題性などなど考えて用意する。
例えば、このアークモン家のお茶は社交界を騒がすだろう。しかし、流行とは流行り廃れが激しい。
いっとき騒がれても、すぐに廃れては意味がないが、それは仕方のない事である。
しかしだ。
ストレートで飲むお茶に、少し手を加える事で様々な味の変化があればどうだろうか?
高位の貴族家が開発したお茶に、どんな『飲み方』や、『味の変化』を『変えられる』事を【探す】のが流行りと、社交界に流す事で別の貴族のお茶会でも、アークモン家のお茶にブランデーを数滴混ぜると、美味しくなるなど自慢する事で、必ずアークモン家の名前が広く行き渡る事になる。
さらに、飽きる事がないため、永きに渡ってアークモン侯爵家の名前が社交界に響き渡る事になるのだ。
今までは遠くの珍しい希少な茶葉など用意するのがステイタスだったのが、アークモン家のお茶の飲み方を【探す】ことが流行りになり、ステイタスになると言うことは、貴族社会での位が上がる事を意味する。
今までの常識を変える提案にシオン以外の令嬢達はその価値に驚いているのである。
例えば、流行る前にアークモン侯爵家に招待され、試作品のお茶を『初めて飲んだ』と言う話でも社交界で話題を浚い、多くの令嬢達に囲まれて話題の中心にいられるのである。
これは末端の下位の令嬢達には婚活のステイタスにもなる。冗談ではなく、傘下の家柄といえ、直々に招待され初めての商品を頂けるほどの親しい友人であると見られるのである。
そうなれば、男爵令嬢でもアークモン家と親しい家柄であると見られて、上の爵位である子爵家や伯爵家からの縁談も来るかも知れないのだ。
ここに招かれた令嬢達は『神』に感謝したほどである。キラキラした眼差しで、スカーレットとシオンを見るのも無理はないのである。
「シオンさんは芸術だけでなく、社交界にも精通してらっしゃるのですね。素晴らしいですわ♪」
シオンだけは意味がわかってなく、あいまいに頷くのだった。
そしてお茶会は進み、また簡単な肖像画を下描きして、各令嬢達に送ると約束するのだった。
「あっ、そうだ!」
シオンはお茶会の帰りに思い付いたように言った。
「もうすぐ学校が始まるけど、最初の休日に私の家に来れる?」
「えっ?シオンさんのご自宅にですか?」
突然のお誘いにスカーレットは動揺した。
「うん、カーマインのお母さんが珍しく懐いた令嬢を見てみたいって言ってるの」
!?
「あわわわわっ!?け、結婚のお申し込みに付いてでしょうか!?」
なんでやねーーーん!
と、シオンはツッコミを入れるのでした。




