お茶会②
シオンを取り囲んでいた令嬢達を引き離してから決められていたテーブルの席に座りました。
「流石シオンですわね。大人気で羨ましいですわ♪でも皆様、分別良く致しましょうね?」
「「「はいっ!申し訳ございませんでした!!!」」」
アークモン侯爵家の家門の令嬢達ばかりなのでスカーレットの言葉に素直に頭をさげた。
『ふむ、これはスカーレットの方が立場的に上だと印象付けるのが狙いかしら』
メリッサはこのお茶会の趣旨を探っていた。
パッとみは普通のお茶会に見える。
しかし、外部からの視線にメリッサは気付いていた。
『………監視されている?シオンを狙っているのかしら?より注意しておいた方が良さそうね』
メリッサは平然を装いながら周囲を警戒した。
お茶会が進み、テーブルに新しいお茶が注がれた。
「う~ん♪良い匂いね」
香りの強い紅茶のようで普段飲んでいるものより珍しい香りだった。周りの令嬢達も香りを楽しみながら感想を言い合っていた。
「皆さん気に入って頂けてなによりですわ。今回用意したのは、我がアークモン侯爵領で採れた茶葉を使用しております」
あれ?アークモン侯爵家ってお茶が有名なの?
「アークモン侯爵家はお茶が有名とは知りませんでした」
ザワザワ
ザワザワ
あれ?なんかマズイこと言ったかな?
周囲のアークモン侯爵家傘下の令嬢達も困惑しているようだった。
「素直な感想ありがとうございます。アークモン家では『まだ』有名ではありません。今回お出ししたのは、長年研究を重ねて作り上げた試作品のお茶なのですわ」
なんと!新商品だったのか!
「これは売れますわ!香り高く、味わい深く美味しいですから」
シオンはお茶を飲みながらお菓子も食べていた。そして、うん?と首を傾げた。
「もしかして…………すみません。ミルクじゃなくレモンかオレンジってあります?」
側に控えていたメイドさんに持ってきてもらった。
「あら?どうしましたの?」
シオンが『また』なにかやりだしたの見て、メリッサはハラハラしながら見守った。
ズズズッ
「うんっ!やっぱり美味しい!」
シオンは用意された柑橘系の果物の汁をお茶に入れて飲んだのだった。
「スカーレットも飲んでみて♪」
シオンに勧められて飲んでみると──
「なんでですの!?より美味しくなってますわ!」
周りの令嬢もマネをして飲んで驚いていた。
「本当に先程より美味しいですわ!?」
「不思議ですわね。先程より味が濃厚になってますわ!」
メリッサも一口飲んでからシオンに尋ねた。
「それでこれはどういうことなの?」
うん?
シオンはお菓子のクッキーを食べながら言った。
「もぐもぐ………ゴックン。……う~んと、その方が美味しく飲めるかな~と思っただけだよ?少し酸味のあるお茶だったから柑橘系の果物で酸味を強めたら美味しいかなって?」
それだけで?
メリッサはこれだか天才はっ!と、内心で毒付いた。
「素晴らしい発想ですわ♪シオンさん!」
「違うよ?アークモン家が頑張って開発したものだもの。このお茶が素晴らしいのよ。それより、もし売り出すのなら、料理人に研究させて、より美味しく飲めるレシピも一緒に販売したら良いと思うわ。今回も最初から柑橘系の汁を入れて飲むのではなく、ストレートで飲んだ後に汁を入れた事で、より美味しく感じたと思うしね。飲み方1つでも色々あるから、みんなで探すのも楽しいかも」
シオンの言葉に周囲の令嬢達は言葉を失っていた。
「あれ?なんか変な事言ったかしら?」
「素晴らしいお考えですわ!?」
スカーレットはシオンの両手を握って感謝した。
しかし、シオンだけはどうしてそんなに感謝されるのかわかっていなかった。




