湖の精霊
一通りボートを乗って楽しんだ後、お母様とお茶を楽しんでいた蒼さんがやってきました。
「お疲れ様ね。楽しんだかしら?」
「うん♪綺麗な湖で楽しかったです。釣りもしてみたいな♪」
「そうね。明日は釣りも楽しめばいいわね。ただ私に少し時間をくれないかしら?」
蒼さんの言葉に首を傾げた。
「どうしたんですか?」
「ちょっと知り合いがいるので皆さんに紹介したいと思いまして」
うん?
蒼さんの知り合いとな?
「おーい、準備ができたぞー!」
いつの間にか桟橋に紅さんとお母様が居ました。
「さっ、いきましょう♪」
またボートに乗るのかな?と思いながら桟橋に集まると、蒼さんが指を鳴らしました。
「さて、行くわよ。余り動かないでね?」
パチンッと指を鳴らすと、シオン達は水の球体に包まれました。
「「「えっ!?」」」
「大丈夫だから騒がないでね♪」
一瞬、水の球体ごと宙に浮くとそのまま湖に沈んでいきました。浅い所から深い所に移動する過程で、シオン達は息を呑みました。
「綺麗……………」
「うん、凄いな………」
シオン達を包む水の球体は湖に沈むと、目に見ないよう透明になり、湖の中が見ることができました。そして、一同は湖の美しさに見とれて言葉が出ませんでした。シオンは水族館にいるみたいと目に焼き付けていました。
「これでも昔はもっと綺麗だったのよ?色々と、昔より透明度が濁ってきているわね」
「これより綺麗だったの!?」
人が増え、排水など増えたせいで少しずつ湖は汚れてきているそうだった。まさか異世界に来て環境問題に直面するとは思わなかったよ!
シオンはこの美しい湖を守ろうと心に誓いました。
10分ほど移動すると、湖の底に横穴の洞窟がありそこに入っていきました。
「さっ、着いたわ。ここには空気があるから安心してね」
洞窟の中を進み、少し上にあがった所で人工的に作られた階段がありました。
「太陽の光もないのに明るいね?」
「ええ、光ゴケが生えているのよ」
幻想的な光りを放っている洞窟を進んだ。
「こんにちは~お久しぶりね」
中に入ると、青い色の長い髪を靡かせている女性が椅子に座りくつろいでいた。
「はぁ、気配でわかっていたけれど、珍しい組み合わせね?国でも滅ぼすつもりなのかしら?」
青髪の女性は軽くため息を付いた。
「まぁ、もしかしたらそうなる可能性もあるのだけれど、今はこの人間の女の子の生涯を見届けたいと思っているのよ♪」
青髪の女性は驚いた顔をしてシオンを見た。
「どういう風の吹き回しなの?蒼だけじゃなく、紅までいるなんて普通じゃないわよ?」
「それを説明するわね。ただその前に紹介するわ。この方は水の大精霊アクエリアスよ」
ふむふむ、ほうほう?
それは凄い………のかな?
シオンは周囲を見ると、みんなが驚いた顔をしていた。よし!私も取り敢えず驚いた事にしておこう!
シオンは空気を読めるようになったのだ!
(成長したね!うんうん♪)
「あら?蒼のお気に入りの子は全然驚いていないようね?」
!?
気付かれてる!?
「はぁ、シオン?もう少し勉強しような?」
「そうだぞ。シオンは『頭は』悪くないのに、一般常識が欠落しているからな」
おい!頭は、って強調しないでよ!
ここぞとばかりに王子達は苦言を言ってきた。
ちくしょーめ!
「こほん、シオン?水の大精霊アクエリアス様と言えば、こちらにいらっしゃる古龍の二人と同じく、神話にでてくるような人物で、そうそう目に掛かれる方ではないのよ?」
「それは凄いね!でも、蒼さんと紅さん、オマケに妖精のフィーネを普段見ているから、ありがたみがないって言うか、見慣れたって言うかね~?」
「ちょっと!なんで私がオマケなのよ!」
あれ?フィーネいたんだ?
「ぷっ、くくくっ………あーーははははっ♪面白い子ね!蒼が気に入った訳が少しわかった気がするわ」
わ、笑われた!?
「アクエリアスは意外とよく笑うのよ?」
「あー、幻滅はしないけど、想像していた人物像が崩れていく…………」
蒼さんはそれから順番にシオン達を紹介していくのでした。




