絵に興味がわいた。
ジークレスト王子はしまったと内心で思った。
自国でも滅多に見ない美少女がいたので、名前を聞いたら、例のキレて王子をボコボコにした令嬢の名前だったので、口に出してしまった。
オレとしたことがミスった!?
「え~、コホンッ。そろそろ中に案内して頂いてもよろしいでしょうか?」
「えっ、あっ、はい!こちらです!」
シオンも慌てて案内した。
『箝口令を敷いていたけど、あれだけの人数が居たとはいえ、他国にも知れ渡っているなんて、侮れないわね』
王妃様と公爵夫人は視線で合図をすると、他の大使達を笑顔で迎えるのだった。
「さて、こちらから個展の入口となりますが、ジークレスト様からお入り下さい」
シオンが丁寧に案内すると、1人の従者が口を挟んだ。
「待て!どうして殿下が先なのだ!何かやましいことでもあるのではないだろうな!?」
キョトンとしたシオンだったが、すぐに笑顔で答えた。
「いえ、入口の入った所に来場者を驚かす仕掛けがあるのでお先に入って欲しかったのです。もし、心配であれば貴方からどうぞ」
そう言われれば、引き下がることができず、その従者は先に進んだ。
「うわぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」
突然の悲鳴に、周りの騎士達が身構えた。
「クスクス、大抵の方はああして驚くのですよ♪」
シオンはジークレストの手を繋いで歩き出した。
「ジークレスト様は余り叫ばないで下さいね?」
「ジークで良いぞ。呼びづらいだろう?」
シオンは微笑むと先に進んだ。
!?
ジークも声を上げようとしたが、心構えができていたので、飲み込むことができた。
「こ、これはいったい…………」
目の前には先に進んだ従者が腰を抜かしていた。
「これは伝説の古龍であるファフニールとリヴァイアサンをモチーフにした3Dアートです」
「これが飛び出て見える絵なのか………凄いな」
ごくりっと喉を鳴らして驚愕した。
『これが絵だと?こんな絵なんて見たことないぞ!本当にこの絵をこの少女が描いたと言うのか!?』
ジークは驚きながらシオンと絵を交互に見た。
「驚きました?迫力があるでしょう?でも、まだ入口ですよ?中には面白い絵がいっぱいあるので楽しんで下さいね♪」
!?
「入口でこれかよ………」
この先の絵はどんなものがあるのか、楽しみな反面、怖くもあった。
シオンの案内で美術館の中を見て廻ると、驚きの連続だった。
入口にあった迫力のある絵とは違った、ユニークな絵がたくさんあったからだ。
絵が破ってあると思ったら、それが『絵』であったり、斜めからみると笑顔の絵が泣いている絵に見えたりと、ジークは初めて絵の素晴らしさに触れたのだった。
そして、母の仕込みである妖精の絵の所に行くと………
「綺麗だな。妖精の絵なのか?今にも飛び出してきそうだ」
綺麗なタッチで描かれたフィーネの絵を見ていると…………
!?
突然、フィーネが絵から飛び出てきた。
「うわっ!?」
驚いたジークは尻餅を付いてしまった。
「こら!フィーネ、やりすぎよ!」
「ごめんなさーい!」
フィーネは頭の上を飛んでいた。
「い、今のは本物の妖精ですか!?」
「ええ、ごめんなさい。イタズラ好きでして………」
ジーク以外も妖精に釘付けだった。妖精を見た者は幸せになれると言うジンクスがあるくらいだからだ。
フィーネはシオンの肩に止まると言った。
「う~ん?シオンと同い年かな?このくらいで腰を抜かすなんて軟弱ね~」
「こらっ!フィーネ、言葉に気を付けてね」
シオンが妖精に注意する所をみた王子の側近はぼそりと呟いた。
「妖精姫………」
バーニングハート公爵家には妖精が住み着いているという噂は隣国まで伝わっていたのだ。
ジークも初めて見る妖精に目が離せなかった。
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