予想外
少し時間が遡ります──
ガラガラッと馬車の中で移動している者達がいた。
「この調子ですと例の個展には間に合いそうですな殿下」
「別にどっちでもいいけどな。正直、絵や芸術には興味がないしな」
白いスーツに金の刺繍をあしらった服を着ている少年が足を組んで答えた。
「殿下、少なくとも向こうでは口に出さないで下さいね?」
「わかっているよ。今回は友好国のご機嫌伺いに行くんだろう?しかし、大丈夫なのか?色々ときな臭い話が聞こえてくるが?」
少年の前に座っている初老の男性が説明した。
「そうですな。この国の第一王子が婚約者候補を集めたお茶会で、1人の令嬢を叩いた事が始まりだそうですね」
初老の男性は思いだし笑いをした。
「ああ、その話はいつ聞いても面白いな!その後、キレた令嬢がボコボコにして返り討ちにあったんだよな」
少年も面白そうに笑った。
「ええ、その通りです。箝口令が敷かれたとしても、あれだけの大勢の前での醜態です。恐らく王太子には第2王子がなる可能性が高いでしょう」
「だろうな。バカなヤツだ。少し優秀だからといって、傲慢になるとはな。本当に優秀なヤツはいつでも笑顔の仮面を張り付けて、裏で手回しする者を言うのに………」
少年は不敵に嗤った。
「そうでした。1つ面白い話が、例の個展ですが、王子をボコボコにした令嬢が描いたそうですよ?殿下と同い年の令嬢です」
「ほぅ?それは少し興味が出てきたな。前評判はかなり良いと報告があったな」
興味がなかったので、適当に返事をしていた事を思い出した。
「先に見に行かせたものからは、今までにない画風で、絵が飛び出して見えると言っていましたな。一体どんな絵なのか」
「それは行ってからのお楽しみだな」
こうして隣国からの大使として馬車は進むのであった。
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「ついに最終日だね!乗り切るよ~~!」
「シオンも身体に気を付けてね!」
フィーネはシオンの肩に乗って励ました。
「でも、普通は19時までなのに21時まで開館していても、全員が観れないなんてね~」
「まぁ、最初だけでしょう。しばらくすれば落ち着くわよ」
シオンとフィーネは失念していた。現代ならそうかも知れないが、ここは娯楽の少ない剣と魔法の世界である。一般市民も観るようになれば、どんどん人が集まってくるのだ。
中央美術館は、期間限定と言ってあるので何れは、スフレ男爵領にシオン専用の美術館の建設が終われば、移動させる予定である。
「すみません!隣国の大使の御方が到着されました!」
「あ、はーい!」
シオンは返事をすると、入口へと向かった。
「今日の午前中は他国の大使及び外交官の接待になります。午後からは一般貴族に解放されます」
「わかりました」
王妃様から説明を受けて大使が馬車から降りるのを待ちました。
馬車から降りてきたのは、兄ルークの様に赤髪に蒼い目をした美少年だった。
えっ?子供???
目を丸くするシオンに、王妃様が咳払いをして紹介しました。
「ようこそおいでくださいました。ファーランド王国の第一王子ジークレスト・ファーランド王子殿下」
隣国の王子様!?
驚くシオンに、ジークレストも驚いた顔をした。
「暖かい歓迎感謝致します。失礼ですが、そちらのご令嬢の名前を伺っても?」
シオンの前に来ると丁寧に挨拶をした。
「私はシオン・バーニングハートと申します。バーニングハート公爵家の長女でございます。そして、今回の個展の主催者です」
!?
「えっ、君がこの国の王子をボコボコにした令嬢!?」
ジークレストの一言に、王妃様は顔を固まらせ、シオンもなんとも言えない顔をするのだった。
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