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1-1異世界へ。

「望月千也様、紅茶などはいかがでしょうか?」




非常に好みの顔をした女性の客室乗務員が話しかけてきた。




「せっかくだから、いただこうかな。」




仕事後の達成感の中、飛行機の中で、紅茶を飲みながら、雲の上からの景色を楽しんでいる。


あたり一面雲だらけで、真っ白な地平線を見るのが俺は好きだ。


さらにさっきの女性のような人が、隣に座っていたならば文句はないのだが、俺の職業柄そういうわけにはいかない。






いきなりだが、殺し屋という職業は知っているだろうか?




端的に言えば、小説なんかで出てくる人を殺す職業だ。




俺はその殺し屋という職で飯を食っている。




頼まれれば、いつでも、どこでも、だれでも掃除するというポリシーで暗殺稼業をやってきた。


今は、ある組織の専属の殺し屋として、世界的政治家の暗殺を頼まれ、その仕事の帰りというわけだ。




千也は紅茶を飲みながら外の景色を楽しんだ。




「少し眠いな。次いつゆっくりできるかわからないから、寝ておくとするか。」




千也は世界的政治家の暗殺という大仕事を終えた後であったので、体の欲望に身を任せ、瞼を閉じた。












目が覚めた。




しかし俺の目の前に広がっていたのは飛行機の天井ではなく、真っ白な右も左も、今どの方面を向いているのかすらわからず、まったく人の気配もしない空間で目が覚めた。






「ようやく目が覚めたか。」




そこには白髪で、白いひげをもうすぐ引きずろうかというほど伸ばした、もうすぐ齢90歳を迎えるのだろうという老人が立っていた。




まったく人の気配がしないと思っていたところ、いきなり声をかけられてので、飛び上がって構えてしまったが、殺気を微塵も感じないので、すぐさまに構えを解いて、その老人に尋ねた。




「ここは?それにあなたは?」




「ここは神が住む空間じゃよ。それでわしがここと世界の管理をしている神じゃよ。」




この老人の言っていることを理解するのに数秒時間を要した。


だが、声のトーンからして、この老人が嘘をついているわけでもなさそうである。




「なぜ、私がこのような場所にいるのでしょうか?」




「それはおぬしが、現実世界で死んでしまったからじゃよ。紅茶に入った毒にやられたようじゃな。それで天界に行く前のおぬしの魂を、わしがこっちに呼び寄せたんじゃ。」




紅茶.....あの客室乗務員まさか殺し屋か?


おそらく、暗殺が終了した時点でもう自分は不要な存在であったのだろう。




しかし、私は所属していた組織に自害しろと命令されれば、自害する程度も忠誠心は持っているつもりだった。


暗殺稼業なんぞに信頼という二文字は存在しえないということであろう。




「でじゃ、やみくもにおぬしをここに呼び寄せたのではない。」




なんだと?


じゃあなぜ?と口から出そうになったが、老人がそのまま話し出しそうな勢いだったので、ぐっと抑えて老人の話に耳を傾けた。




「おぬしをここに呼び寄せた理由は、おぬしを違う世界で転生させるためじゃ。」




「なぜ?!」




老人の続きの話を聞いてこらえた言葉が出てきてしまった。


なぜ暗殺稼業でたくさんの人間を殺してきた自分が、転生するのかがわからなかったからだ。




「ほっほっほ。このような場所にいきなり呼び出したのに取り乱さなかったおぬしが、やっと取り乱したのう。」




「生きていたころは暗殺稼業をしていたせいで、感情があまり表に出ないだけで、実際は驚いてましたよ。で、なぜ私が転生するのか、理由を教えてもらっていいですか?」




「ほっほ。そう焦るな。


おぬしを転生させる理由はの、おぬしがろくな生き方をしていないからじゃよ。」




確かに俺が8歳の時に、両親が交通事故で亡くなり、18歳になってから自衛隊に入ってもろくにいいこともなく、そこで銃の腕と体術のみ評価され、無理やり暗殺稼業をやらされたりなど思い返せばよいことなんてなかったのかもしれない。




「おぬしのような、前世でいい思いのしなかった人間を本人の意思のもと、転生させたりするキャンペーンを行うことを神の議会で決議されてな、おぬしはその第1号ということじゃ。」




「あーそういうことなんですね。」




半ば納得できないまま返事をした。




「で、おぬしは転生したいかの?


もちろん元の世界で転生することは無理じゃが、おぬしがもし転生する道を選ぶのならば魔力がそんざいし、魔法が使える世界に転生することになるのでな。


飽きることはないじゃろう。




もう一度聞く、転生するか?転生せんか?」




「例えば、転生しない道を選んだら私はどうなるのでしょう。」




もし転生しなかったのならばどうなるのか、尋ねてみた。




「そうじゃな、おぬしが転生しなかったら閻魔の判断のもとほぼ100%の確率で地獄行じゃろうな。」




かなり衝撃なことが返ってきた。


続けて神が言った。




「まあわしは転生することを勧めるぞい。おぬしのようないい思いをしなかった人間に対して、来世では幸せを味わってほしいという取り組みであるし、おぬしは第1号であるから試験的な面も踏まえてぜひ転生してもらいたいのじゃ。」




俺も何度か思ったことはあった。


普通の家庭で、高校を卒業して、普通の職種に就職して、顔がタイプの女性と結婚して幸せの家庭を築きたいと。




もう叶わないものだと、あきらめていたがこのような機会が偶然回ってきたのだからこの際叶えられるチャンスがあるのならば、叶えたいと思った。




そう思ってからは、なんの迷いもなく神に返事をした。








「転生、したいです。」



最後まで、ご覧になっていただきありがとうございます。

ゆっくりゆっくり自分のペースで投稿していくつもりですので、気長にお待ちいただけると幸いです。

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