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貴殿の真面目さに報いよう

 間違ったことをちゃんと謝れる真面目に仕事をする人って偉い人だよね。

 私は、そうあるよう努力してるつもりだけど中々上手くいかない時もあったりで……。

 職場の後輩君にそういう人がいたら、絶対可愛がるよね。

 あの後、商人さんがお勧めしてくれた宿屋に泊まった。

 この町に貴族が来た際に滞在する高級宿。一部屋に一人付き人いて、色々と便宜を図ってくれる。


 私がこんな格好でも嫌な顔を一つせず要望にはちゃんと応えてくれる。


 食堂に行きたくないので部屋に食事を持って来て貰った。

 美味しい料理ではあった。でも、ゲーム時代に良く食べてたフレンドの料理に比べたらイマイチだなー。


 お風呂は、浴場を使おうとすると他の人に中身を見られる可能性があるので部屋にお湯を持って来て貰った。勿論付き人さんには外に出て貰って体を拭いた。恥ずかしいからなー。


「お嬢様。お客様がお見えです。冒険者ギルドのギルド長が御一人でいらっしゃいました。お会いになりますか?」


「理由は聞いて来た?」


「先日の件について謝罪に来られたようです。どうされますか?」


 冒険者ギルド長が一人。あの人は、昨日の騒動の中一言も発しなかった。

 その間、一体何を考えていたのか。今になって、何を言いに来たのか。気になるところではある。


「仕様がない。会おうかー」


 この宿屋の部屋は、面会用の部屋も付いている。

 そこまで広い訳ではないが、今回の様な場合なら重宝する。


「失礼する」


 部屋に入って来た冒険者ギルド長。

 その顔は、昨日あった時よりも皺が深く刻まれていて、10年は老けた様に見えた。


「ふむ。いらっしゃい、ギルド長殿ー。掛けると良いよー」


「感謝する」


 ギルド長が座った所で、付き人さんがお茶の入ったカップを差し出した。


「さて、ギルド長殿ー。今回は謝罪、とのことであったがー。あの場で一言も発しなかった貴殿は、一体何を言いに来たのかね?」


 ギルド長は、改めて立ち上がると頭を下げた。


「この度は、申し訳なかった。


 戦闘の術を持たぬ者への戦闘参加の強要、傲慢な態度、戦闘時の油断、護衛中の食事の要求。

 昨日少し調べただけでかなりの報告があった。


 まさかこれ程までとは思っていなかった。


 騒動の実行犯には、キチンと処罰を下した上で再教育ないし解雇を行うつもりだ。

 今後、冒険者が実直に依頼に実直に取り組むよう、厳しく躾けていく。


 そして、依頼者と冒険者の命が失われる事がないように、実力に見合った依頼の斡旋をするようにギルド職員にも徹底させる。


 貴方様のお陰で気付くことが出来ました。本当にありがとうございました。

 つきましては、こちらをお納めください」


 ギルド長がテーブルに乗せたのは、両手に乗りそうなくらいの革袋だった。


「こちらには、先日の護衛依頼時の迷惑料。そして、彼等の代わりに護衛をしてくださったことへの報酬。ギルド所属の冒険者を一人、救ってくださったことへの報酬が入っております」


 小さい革袋だというのに、手に持つと結構重い。

 袋を開けると、中身は全て金貨であった。


「冒険者の一人を救出した報酬は、お返しするよー。彼はもう、冒険者としては働けないだろうからねー。私は、戦える実力を持ちながら、彼等がピンチだったのに助けなかったのだからねー」


 私は、その分を革袋から取るように手で促す。


「その分に関しては、今後の迷惑料として先納めさせて頂きたい」


「ほー?」


「冒険者が危機に陥った時、貴方様の御助力を賜りたく思います。救出依頼への報酬の先払い、といったところでしょうか」


「助けないかもしれんよー?」


「構いません。貴方様が助けるに値する。そう思った時に動いてくだされば、それで良いのです。どうか、宜しくお願い致します」


 真摯に頭を下げるギルド長。


 ギルド長本人は、かなり真面目な性格のようだ。

 昨日、私がいなくなってから必死になって調べたのだろう。


 そういう人であれば、応援しようではないかー。進


「うむ。承知したぞー。冒険者が危機の際、余裕があれば助けて進ぜよー」


 ガッチリと握手をして、ギルド長は帰って行った。

 その顔は、先程と違って晴れやかなものであった。

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