一難去ってまた一難
たまにぼーっとするのいいよねー。
ウルフ達を追い返した後、再び移動を再開するのに2日掛かってしまった。
護衛のつもりだった覗き魔共でただ一人の生き残りの槍使い。よりにもよって此奴が生き残った。
彼の手当をしてやった後。死体を布で包み、遺品を回収。
倒したウルフの解体をして、皮だけ馬車に積み込む。
ウルフは極普通の野生動物なので他にお金になるところはない。
この時点で1日。
翌日。馬車を引く馬が逃げて行方不明になったので捜索。
先日も捜索していたが近場では見つからなかったので捜索範囲を拡大。
すると、近くの数メートルの崖のそこで死んでいるのが見つかった。
その馬の馬具だけ回収し、仕方が無いので私が馬車を引っ張る。
幸いにも町までは2日で着いた。
道中、槍使いから怨み妬み憎しみの籠もった罵詈雑言を吐かれながらも馬車を引っ張った私は、到着した頃には精神的に限界だった。
商人さんが時々積み荷の一部の干し果物を渡してくれなければ。私は、槍使いを他の死体共と一緒に文字通り投げ捨てていただろう。
「大変だったんだなぁ。怪獣の嬢ちゃん……」
検問してた町の衛兵に同情されるくらいには、この旅は酷いものだった。
衛兵に遺体と遺品を引き渡して検問を抜ける。
「申し訳ありませんが、冒険者ギルドに事情の説明をお願いしたいのですが……」
商人さんのお願いなら仕方があるまい。
そのままの足で冒険者ギルドまで向かう。
馬車を冒険者ギルドの前で止めると、槍使いが駆け込む様にして入っていった。
「お手数をお掛けします」
「良い良い。商人さんは、良くしてくれているではないかー。私は、そのお礼として商人さんの為にやってるだけだよー」
「有難う御座います」
中に入ると、それはそれは酷い有様だった。
槍使いが何か言ったのか、中にいた冒険者と冒険者ギルドの職員全員に睨み付けられる始末。そこには殺意や悪意も含まれている。
あの槍使いは何を言ったのだ?
私達は、断頭台に向かう罪人の様に空いているカウンターへと向かう。
「護衛を依頼されていた商人のユースさん、ですね? 事情を聞きたいと奥でギルド長がお待ちです。どうぞこちらへ」
逃しはしない。
そう言われているようだった。
黙って付いて行く。
通された部屋にはむさ苦しい男共が沢山いた。
その男共に守られるように、一番奥に槍使いと一際大きい男。
全員から冒険者ギルドに入ってきた時とは比べ物にならない殺気を向けられる。
商人さんの体が携帯のマナーモードみたいに小刻みに高速で震えている。
商人さんの肩に優しく手を置く。
「大丈夫。もし何かあっても、商人さんはちゃんと守るよー。商人さんは、何も悪くないー」
私は、男共から商人さんを庇う様に立つ。
「それでー? その失礼な視線と態度のちみ達は、何を聞きたいんだい?」
その一言に、私に向けられる殺気が1段階上がった。
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2021/05/26ー商人さんの名前が間違っていたので訂正致しました。
ジェムズ→ユース