第二王女様と超重量ハゲアブラギッシュ男爵
見た目と性格が違うなんてことよくある話よね('Д')ハァー
皆が巨頭竜に群がっている間に、私は呼び出されていた。
目の前には、先程御言葉を頂きました第二王女様。その隣には、軍帽で頭を隠した相撲取りの様な体系のおじさんがいた。
「偉大なる我等が主の御息女である、第二王女フォヴィア=リューク=メルミュクス=アストライア様が、貴様に話があるそうだ。本来であれば、貴様の様な者にはお目通りする機会さえないであろう。貴様の持つ全てで以て第二王女様の御期待に応えて差し上げよ」
その第二王女様よりも偉そうな態度で告げるおじさん。
どうやら暑いようで、汗をかきまくっている。こうしている今もおじさんの顔は汗が溢れ出してきていて、それを布で拭っている。
どこぞの家系ラーメンよりも油ギトギトだ。
「私とお話がしたいと聞き参りました。セーレ=アンジョウ=メルティンで御座います」
一瞬だけおじさんを見──最早に睨んでいる様な気もするが──キラキラした笑顔で私の方を向いた。
「良く来てくれました! あの竜を倒したという貴方に、是非とも話を聞きたかったのです」
もう我慢出来ないとばかりにこちらに駆け寄り、私の手を握る第二王女様。
「第二王女様。嬉しいのはその様子から十分に分かるのですが……宜しいのですか? 後ろの方が何やら難しいお顔をされていらっしゃいます」
おじさんは苦々しい顔をしているが、第二王女様はそれを見ることなく続ける。
「別に良いのです。私は、そんな事よりもあの美味な食材を齎した貴方の話が聞きたいのです」
その一言を聞いた瞬間。驚きの表情を浮かべた後、がっくりと肩を落とすおじさん。
「私の事は構うな。第二王女様の願いを叶えて差し上げ給え」
「それでそれで! あの竜は、どうやって出会ったのですか? どうやって倒したのですか? 他にもああいった魔物と戦ったことはあるのでしょうか? あの竜の様な美味しい魔物が他にもいるのでしょうか?」
ぐいぐいと迫ってくる第二王女様。
「第二王女様少々近すぎます。それくらいになさってお離れください。その様な者に不用意に近付いては鳴りません」
このおじさんも結構酷い事を言うなー。私は、只の善良な怪獣さんだぞー?
「ハーゲン=アブラギッシュ男爵。その様な事を言うものではありません。この方のお陰で私達は、美味しい料理を味わえたのでしょう? 美味なる物には敬意で示さねばなりません。忘れましたか?」
うわぁ……。このおじさんそんな名前だったのか。見た目通りの名前……。もしや、頭も……?
でもこれまでのやり取りを見ているに、結構振り回されてる感じかねー?
「忘れたのではありません! 過剰に過ぎると言っているのです! どうか、お止めください! フォヴィア様!」
アブラギッシュ男爵、意外に真面目な男であった。悪徳貴族といった感じの風貌なのに。
「貴方に名前で呼ぶことを許した覚えはありません!」
「も、申し訳ありません。ですが、どうかご理解頂きたく……」
「何時もお小言ばかりの貴方の話は聞きたくありません! 出てってください!」
私にギュッと抱き着いてアブラギッシュ男爵に告げる第二王女様。
渋々といった感じでアブラギッシュ男爵は部屋を後にする。
その時の彼の顔は、先程と違って疲れ切っていた。
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