第6話 雫が落ちる前に
尾関「なぁ、東川。」
東川「うんどうした?」
尾関「この状況はなんだ?」
東川「停電だね・・・。」
尾関「なんで、エアコンつけただけでブレーカーが落ちたんだ?」
東川「さぁ。」
俺はとある理由で東川雫の借家にいる。
エアコンをつけただけでなぜかブレーカーが落ちた。
部屋は真っ暗になった。
数日前・・・。
尾関「では失礼します。」
浜東「なぁ、これからどうする?」
尾関「今日は帰る予定だけど。」
浜東「そうかぁ、じゃあ、俺はサークルまで図書館にでもいようかな・・・。」
尾関「そういや、お前どこのサークルはいったん?」
浜東「秘密に決まってるだろう。有名になってから教えてやるよ。」
尾関「おう、わかった。」
浜東「そういえば、お前東川さんと付き合ってんの?」
尾関「いや、付き合ってないが?」
浜東「でも確実にあっちはおまえのほうみてるぞ?」
尾関「え?」
浜東が指をさした方向をみると、東川がこっちを見てにこにこしていた。
浜東はそのまま行ってしまった・・・。
尾関「どうした?東川。」
東川「これみて!!!」
そこには、「東川雫様、オーディション合格報告。」と書かれた封筒があった。
尾関「東川、これってまさか?」
東川「やっと受かったの!!!」
尾関「やったじゃないか!お前の念願だったことだもんな!」
東川「うん!」
そう、東川は駆け出しの女優である。女優としてスクリーン上に立っている自分の姿を見せることで反対した両親にぎゃふんといわせたい。
そのため、家から出てアパートを借りた。
尾関「それで、なんの役なんだ?」
東川「主人公の親友役なんだ!!!」
尾関「重要な役じゃないか!!!」
東川「それでさ、マネージャーさんにしっかり練習しろって言われたから尾関君に手伝ってほしいの!」
尾関「え! なんで俺?」
東川「いやちょっと頼めそうな人余りいなくて。」
尾関「まぁ、いいけど・・・。」
東川「ありがとう!また連絡するね!!!レッスン行ってくる!!!」
尾関「おう、行ってらっしゃい!!!」
と、その日の夜に東川から三日後の夜に東川の住む「タワマンヒルズ」に行くことになった。
名前からして相当高そうなんだな・・・。
そう思ったのは、間違いであった。
そして、今。
尾関「お前の家、オンボロナノカ?」
東川「仕方ないじゃん!お金もないし・・・。しかもなんでカタコトなのさ?」
尾関「まさか、『田和万ヒルズ』だったとは思わないだろ?」
東川「いいもん、尾関君が住めないような家に将来住んでやるんだから。」
尾関「今も十分住めないよ・・・?」
東川「なに?トイレ貸さないよ?」
越谷もそうだが東川も男とかかわったことがないから変な脅ししか思いつかないらしい。なんやかんやで練習が始まった。
練習が始まれば、まったくの別の人間になりきっていた。
東川「私あなたのことが好きなの!!!」
尾関「・・・。」
東川「ちょっとー。練習にならないんだけどー?」
尾関「あぁ、すまない。東川が可愛かったからつい。」
東川「・・・。」
尾関「そ、そういう意味じゃなくて・・・。」
東川「・・・。」
尾関「・・・。」
東川「・・・。いったん休憩にしようか?」
尾関「・・・。そう・・・だな・・・。」
この日はこれ以降練習に力が入らなくて困った。
後日、「この前はありがとう」というLINEが来た。
たった1話だけの登場とはいえ、オンエア当日には、「無名の女優」ということでTwitterなどではトレンド入りを果たした。
東川「尾関君のおかげだよ。ありがとうね?」
尾関「東川自身の頑張りだ。」
東川「いやいや。」
尾関「それで?いいのか、おごってもらって?」
東川「うん!」
尾関「貴重なお金だろ?」
東川「いいの!!!おごらせて?」
尾関「まぁ、そこまで言うなら・・・。」
結局その日、1000円をおごってもらってしまった。
東川「あれだけでよかったの?」
尾関「まぁ、未来の有名女優に1000円おごってもらったんだ。全然いいさ。」
東川「尾関君がいいっていうならいいけど。」
尾関「ごちそうさま。」
といって今日はそのまま解散となったはずだった・・・。
東川「ねぇ、そういえばみんなは泊まりに行ってるの?尾関君のうちに・・・。」
尾関「まぁ、多少は・・・。」
東川「今日泊まりに行っていい?」
尾関「まぁいいけど、週刊誌にとられないか?」
東川「大丈夫。だと思う。」
尾関「まぁいいぞ。行くか。」
東川「うん。」
といって今日はそのまま俺の家で泊まった。