心の傷
「……行ってきます」
玄関を開けると、優しい春の日射しに包まれた。
小鳥のさえずりが聞こえる。
とても穏やかな朝だ。
だけど、僕の気持ちは沈んでいく。
本当は行きたくないっ!
学校なんて無くなればいいっ!
本気でそう思ってる。
そう思ってるけど…
結局、僕は学校に行くという選択肢しか選べない。
──情けないっ。
情けなさすぎて嫌になる。
……あ。
同じ制服を着た生徒が数人、少し前を歩いている。
一気に緊張が走った。
同じクラスの生徒が二人いる。
…どうしよう。
声をかける?
でも、何話せばいいんだろう?
挨拶だけして通りすぎる?
頭の中をグルグル回る。
考えれば考えるほど憂鬱になっていく。
ゆっくり歩いて、このまま距離を保とう。
何も行動を起こさなければ、精神的に疲弊しない。
向こうは気づいてないわけだし…
横断歩道に赤信号。
自ずと距離が縮まってしまう。
嫌だな…
二人がチラッと僕の方を見た。
男子生徒A「おい、アイツ、また後ろにいるぞ」
男子生徒B「うわ~、マジかよ」
──っ!
心臓が潰されそうだった。
バクバクと音を立ててうるさい。
苦しいっ、苦しいよっ!
信号が変わった瞬間、二人を抜いて、早足で歩き出した。
二人の会話が頭の中をグルグル回る。
自分が惨めで、いたたまれなかった。
心の動揺を隠しきれないまま、僕はただ、早足で歩き続けた。




