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優しい兆し
──優しい光に包まれるような感覚。
そっと目を開けると、新緑の美しい丘が目の前に広がった。
少し先には、一本の大樹が見える。
初めて見る風景だが、不思議なくらい穏やかな場所に感じた。
引き寄せられるように、大樹の傍まで歩みを進めれば、枝葉の隙間から木漏れ日が射し、キラキラと輝いている。
その堂々とした姿と美しさに、心を奪われた。
力強い生命力。
全てを包み込むような優しさ。
身体の中に、不思議な力が湧いてくるような感覚を覚えた。
…あたたかい。
包まれたあたたかさに意識を委ねようとした瞬間、ふと人の気配を感じた。
うっすらと人影が見える。
誰なのかは分からないが、自分に手を差し伸べてくれているみたいだ。
僕は、その手を──
ブーン、ブーン。
「──っ」
携帯のバイブ音で意識が浮上した。
目の前には、見慣れた天井がある。
…夢、か。
なんだか不思議な感覚が残っている。
AM7:00。
携帯のアラームを止めて、ベッドから出た。
カーテンを開ける。
いつもと変わらない一日が始まる。
ただ少し、いつもより朝日が眩しく感じられた。




