逃れたい
僕の名前は須藤一希。
高校生になって二年目の春。
今、僕は、目の前に続く平坦な道を、ただただ憂鬱な気持ちで歩いている。
「……」
一年前の今日、僕はどんな気持ちで、この道を歩いていただろう?
真新しい制服。
不安と緊張。
これから始まる高校生活への期待に胸を膨らませ…
…理想と現実は違う。
新しい環境。
新しい生活。
知らない人たち。
僕にとっては、何もかもが苦痛でしかなかった。
変化のない毎日。
それは、僕にとって、安心できる居心地のいい環境だった。
決まった生活リズム、通いなれた道に見慣れた風景、一緒にいる友達。
同じように繰り返されていく毎日が、僕の心を不安や恐怖から守ってくれていた…
それなのにっ──
高校生活が始まることで、その全てが変わってしまった。
大きな変化に、僕の心は不安と恐怖に押し潰されてしまったんだ。
『すぐに慣れる』『新しい友達ができる』
そんな言葉はプレッシャーでしかない。
そんな簡単に、心はついていかないんだよ。
人と関わるのが苦手な僕が、新しい環境に適応し、新しい人間関係を築くまでに、どれだけ時間がかかると思う?
──っ、考えただけでストレスだ。
僕は…未だに馴染めていない。
「……」
憂鬱な気持ちを更に膨らませているうちに、学校に着いてしまった。
新入生を迎える今日、僕の高校生活二年目がスタートする。
一年前と変わらない苦痛。
心臓が痛い。
心と身体が硬直していくのを感じながら、僕は、重たい扉をゆっくり開いた──




