2話:生存戦略
1章2話
異世界に来てから2日目。昨夜は、男子は化学室、女子は2-3の教室で睡眠をとった。環境も良くないし、昨日あんなことがあったからか睡眠不足だ。いつの間にかみんな起きていた。
「今、何時だ…。」
「6時前…かな。」
「俺、こんなに早起きしたことねぇぞ。」
「夢じゃなかったんだな。」
そう。夢じゃなく、僕らは異世界に転移していた。
「集合は、8時だっけ?」
「そ。12時に、学校立ち入り禁止」
「ほんとわけわかんないよな。どうして立入禁止なんだ。」
「食料もろくにない、水も確保できてない状態で、外にほっぽりだすとかなぁ。」
「んー。わからん。何か秘密がありそうだけど、調べるにしても生き残るのが先だな。」
「大谷は、食料班だっけ?29人分とか、酷だよなー。頑張れー。」
「他人事みたく言ってるが、拓哉も大変だからな。ちゃんと情報収集しろよ。あと先生も含めて31人分だ。」
「まず、言葉が通じるか問題だよな。あと、その、王国とやらに入れるかどうか。」
「まあ、みんな気をつけようぜ。ここは、日本じゃないんだ。」
「そうだな…。」
「うん。」
みんな黙ってしまう。沈黙を破ったのはムードメーカーの浅川だった。
「みんな見ろよ、朝日がきれいだぞ。」
「建物の明かりがないからかな。」
「今日も天気は良さそうだな」
「引きこもり気質の自分にはきついっす…。」
「外でろー、中野ー。」
「嫌っすよ。」
「春井もだぞー。」
僕もか、別に僕は引きこもりじゃあないんだけどな。とりあえず、頷く。
「さあ、そろそろ朝ごはんを食べようぜ。」
僕たちは、先生方がとってきた木の実を分けて食べる。オレンジのような柑橘類の果実から取れたジュースを片手に。
「こんなんじゃ足りないよな。」
「でもまあ。全クラス分とってきたと考えたらすごいよなー。」
「でもさぁ、どうやったんだろうな、この量。」
「謎が多いよな。」
「だな。」
先生たちには、やっぱり秘密があるのか。あるとしたらなにが…。
「でも、肉も食べたくなるよなー。」
「肉ー?」
「そ。あと、米も。日本人といったら米っしょー。」
「パンも食べたいよなー。」
「おいおいお前らまだ2日目だぞー。」
「農場とかって作れるのかね。」
「種があればワンチャン?」
「気候的に、やはり米?」
「稲作かー。」
「小麦…。」
「あう気候があればな。」
「というか、すでに王国にあるかもよ?」
「そっか。まだ分からんな。」
「うおおお!楽しみになってきたぞ、王国探索。」
「ははは。はしゃぎすぎんなよ。」
当面の問題は食料だよな。王国に何があるかもわからない。
朝食の間は、ほとんどの人が食料について話していた。あとは、今日のそれぞれの行動ぐらい。あと、気になったのは、廊下の離れた所から聞こえた…。
「多くのクラスが、パニック状態になり統率がうまくいってない様子です。全滅も近いかと。」
「そうか。先生方も明日からよろしくお願いしますよ。これからが楽しみだな。」
「ええ。」
確かこの声は、校長先生と、教頭先生…。なんの話をしているんだ。どうしてこんなところに。
「先生はついてこない!?」
「昨晩の話し合いにもいなかったし、予想はしていたが。まさか、本当に高校生だけでとは…。」
「先生、そんなんでいいのかよ!?」
「決定事項ですので。」
「また、それかよ。」
「ええ。決定事項ですので。では。」
先生が教室から出ていく。時刻は8時。最終確認のため集まったときだった。
「昨日の夕方辺りからやっぱおかしいよな。」
「また、決定事項…。」
「くっそ。とりあえず、確認をしよう。えーと、食料班は、あの様子だと先生の分はなくて良いから、29人分の今日の夜と明日の朝、できれば明日の昼の3食分。あとは、水の確保をしてください。量が多いので、無理はしないようにしてください」
「情報収集班は、王国へ行き、食べ物や地理的情報。生物なんかを調べてください。お金の概念があれば、稼ぎ方も調べてください」
「話ができるとええけどなー。」
「宿泊班は、宿泊できそうな場所の確保。支給されたテントには限りがありますから、雨を凌げそうな自然のテントを作ってください。」
「自然のテントって言っても、誰か作れるか?」
「だよなー。キャンプ用品とか全部売ってたから。自作なんて。」
「じゃあ、女子はテントで男子は野宿ね。」
「んなの、不公平じゃないか!?」
「まあまあ、落ち着けって、高崎。とりあえず今日1日だけだ。王国で宿が見つかるかもしれない。」
「希望でしかないがな。」
「とりあえず、宿泊班は数少ないテントをどうにかするかを考えておいてくれ。それじゃあ、みんな、動きだしてください。」
おいおい、大丈夫かよ。不安でしかないのだが。かく言う自分は、無言でできる食料班である。頑張らなければ。
学校近くの森の中
「ね、ねぇ。魔物とか出てこないよね?」
「出てきたらどうするか…。」
音を聞く限り、小さいリス程度の生き物はいるようだが、凶暴そうな動物の声は聞こえない。あとは、他のクラスの足音だろうか。
「なあ、日本でもオレンジとかって取れたっけ?」
「取れるんじゃねーの?和歌山とかさ。」
1つだけはぐれた人の足音?こちらに近づいてくる?しかも、速い。敵意があるかわからないが伝えなければ。
「っ…。」
伝えなければならないが、声が出ない。
「どうしたの、春井くん?」
「春井がどうかしたか?」
…。声が出ない。声が出せない?…。
あと20m
「なんの足音?」
「他のクラスの人じゃね。」
あと10m
「近づいてきてるぞ?」
あと5m
「やばいなんか、来るぞ。逃げろ逃げろ!」
「あ、足が、。」
「桜!」
「そんなに大きくはない!戦えるぞ!」
「待てよ、脳筋!」
あと1m
足がすくんだ東山のため、みんなは臨戦態勢をとっている。
草むらから飛び出してきたのは。
「に、人間か…。」
小さな子供だった。緊張が解けた。ただ、僕たちが普段見ている人間とは明らかに違う部分があった。
「しっぽ…?」
「犬のような耳が。」
「お、おい。俺たちの声がわかるか?」
女の子は頷く。
「良かった。声は通じるんだな。」
「やったな。話せるなら、希望はあるぞ。」
「この子どうする。」
「近くにこの子の親とかは。」
女の子は首を横にふる。
「…。森の中じゃ、何があるかわからないし。とりあえず、連れて行って、川の方でみんなと合流しましょう?」
「んー、まあ、そうだな。でも、俺はもう少しとっておくよ。」
「大丈夫か?ひとりで。」
「おう。安心しろ。」
「じゃあ、健吾頑張れ。」
不吉なことが起きそうだと、感じる。
高崎を1人、森に残して、川に向かった。
今作は戦闘のない。グダグダっとした物語になりそう。