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学校、異世界に転移する  作者: ずんだもちもち
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1話:夢心地な始まり


どうしてこうなった。眼前は黒く、見にくい。いままでの何もない色のあせた生活が嘘のようだ。どれだけ平和だったかほんとわかるよ、まったく。さて、いま置かれている俺の、いや俺たちの置かれてる状況を説明したいと思う。ある日事件は予知もなく覚悟もなく起こった。学校ごと異世界へ飛んで行くという事件が。


1章 学校の情報屋


「電子機器は全滅、放送も、もちろんできません。」

「メガホンを用意しろ、あれなら多少は使えるだろう!」

「わかりました」

朝礼台の近くで集まっている先生方がピリピリした様子で話している。

「えー。今起こっている状況を理解できない人が多いと思います。えー。しかし、慌てず先生方の指示に従ってください。とりあえず、全校集会のときのように整列してください。担任の先生は各クラスの出欠席をとってください。」

メガホンで呼びかけられ、グラウンドに散らばっていた生徒たちが集まり始めた。


数分後


「えーっと、集まりましたね、出欠をとります。浅川、伊藤…。」

 いつもと同じような点呼なのに、いつもとはかけ離れている。空には輝く太陽、白い雲、ここまではいい。しかし、飛んでいるのは自分たちが知っているような鳥じゃない。なんだあれは。ファンタジーの世界で言うドラゴンってやつか?

「春井!春井いるかー?」

「あ、はい。」

空に向かっていた僕の意識を、もとに戻す。僕、春井はるい 桜真さくまはいま置かれている状況について考えるのをやめた。

「北条。北条いるかー?欠席か…。じゃあ次、南。」


「全校生徒360名…。欠席者5名…。主席者355名…。全教諭42名…。全員確認しました。あと、地理や生物の先生方から、やはりここは日本ではないそうです。気候は温暖湿潤気候だと予想されますが、学校の外の地質、生物は地球では見られないもののようです。」

「うーむ。なるほど。では、食料や水はどういう状況だ。」

「え、えと。水道はもちろんのこと使えません。川の水は飲めるかどうか検査をしないとわかりません。食料は、非常食がありますが、全員分は到底まかなえません。それぞれ弁当を持っていると思いますが、1食分だけです…。いまのままでは、全員生き残るのは至難かと…。」

「周りに町とかは…。」

「まだ、そんなに周辺を散策していません。変な化け物がいるかもしれないのでうかつに行動できませんよ!」

「し、しかし…。今のままでは…。」

「わかってますよ!ですが、危険が多すぎるんですよ!」

「危険もそうだが、我々には守るものが多すぎるのだ。全員を守るのは流石に無理ですよ。」

「見捨てろって言うんですか!?」

「そんなことは言ってないでしょう。変な言いがかりはやめてください」

先生たちの苛立った気持ちが生徒を不安にしてしまっている。

「先生方、我々高校生もここでじっとしているわけにはいきません。生き残るために、自分たちもなにかするべきだと思います」

生徒会長の橋本先輩だ。

「しかし、危険…」

「ここが安全だとは限らないじゃないですか!?」

「いや、しかし。」

「まあ、いいんじゃないでしょうか。」

「先生!わかってるんですか!?」

「生徒さんがやりたいことを尊重するのも先生ですよ。なに、全員を外に出すわけではありませんよ。それに、先生方だけでは人手不足じゃないですか。」

「む…。校長!だめですよね?こんなの。」

「いや、生き抜くためには必要かもしれないな。」

「校長…。もしものことがあったらあなたはどう責任をとるつもりですか!?認めませんよこんなの。」

「だからといって大人数いても仕方があるまい。早速担任の先生がたは、各クラスで外の調査したい人を募ってください。」

「校長…。」


2年3組でも何人かの人が名乗りあげた。自分は物語の主人公ではないし、運動できるわけでも勉強できるわけでもないので、参加しなかった。くわえて怖かったんだ。状況はアニメとかラノベみたいだけれども、自分は、作品の主人公みたいにチート能力があるとは限らない。死ぬのは嫌だったんだ。

「かっこ悪いな、自分。」

そう独り言をつぶやくが、外に行く勇気は湧かなかった。


あれからどんぐらいたったんだろう。太陽はだんだん傾き始めている。夜になったらどうなるのだろう。

「えーっと、各調査団の結果を報告します。」

どうやら戻ってきたようだ。

「まず、やはりここは日本ではなく、別世界である可能性が高いこと。次にそこに流れている川の水は汚れが少なく魚も住んでいるそうです。飲めなくはないと思いますが、何かの感染症にかかったとしても治療法がないので、まだ安易に判断できません。そして、近くにそれなりの規模の国があるということです。そしてこれは、先生方で話し合われたことなのですが、これからクラスごとに行動したいと考えています。全校生徒では人数が多すぎるので、全員を見きることができません。学校を本部として明日から各クラスで行きたい方向を決め行動してください。何か発見したら本部へ、それ以外には学校には立ち入らないようにしてください。」

ん?

「先生!せ、生徒を危険に晒すことになりませんか?それに、学校に立ち入り禁止とはどういうことですか!?」

誰かが質問をした。

「これは、決定事項です。」

ん??まじか。強引すぎるだろ。

「先生!外には何があるのか、その国が安全かどうかですらわからないんですよ!?生徒が多く死ぬかもしれないんですよ!?もう少し様子を見てからにしてはいかがですか?」

そうだ、まだグループに分かれて行動するにしては情報が少なく危険すぎる。

「と、とにかく、決定事項です。夜までにクラスごとに話し合ってください。」

押し切る様子だ。

「ホントの理由なんぞ言えるわけなかろう」

校長先生が妙なことを言っていたが、他の人には聞こえていないようだった。


「と、言うわけで。私達2-3は、とりあえず近くの国を目指して、情報を収集をする人。みんなが宿泊できそうな場所…。野宿になるかもしれませんが。それを見つける人。あとは、食料、近くの川や森で食べれそうなものを探す人に分かれたいと思います。」

改めて考えてもおかしすぎる状況だ。先生方は何を考えているんだ。もっと反発が起きてもいいと思うのだが…。みんな起こすつもりはないらしい。

「どのチームがいいのか、手を上げてください。」


「異世界か…。」

誰かがそう呟いた。一日経ってやっと自覚が湧いてきた。今、どんなに異常事態なのか。

「異世界って言ったら、剣や魔法とかで戦って。かわいい女の子と一緒に行動してるイメージだったからな。こんなにも怖いとは思わなかった。」

そのとおりだ。自分も怖くて何もできなかった。

「なんかよくわかんないけど、明日は本格的に頑張らないとな。」

「足ひっぱんなよ浅川。」

「お前こそー。」

クラス内での緊張が解けた。うちのクラスは和やかで良い感じだ。このまま何もなければいいのだが…。フラグじゃないよ、ホントだよ。



春井桜真・・・2-3-27 男子 本編の主人公の中の1人。話すのが得意じゃなく、他のクラスメイトと話している姿はあまり見かけない。人間観察が得意。ピアノをやっていて、耳がいい。やりたくてやっているわけではないが、よく盗み聞きをしてしまう。

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