魔王様、剣の修行をする。
タイトル通りのお話予定。お待たせしました。
①『魔王様、勇者に選ばれる。』、②『魔王様、お城に拉致られる。』を読んでいないとよくわからないかもしれません。
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①勇者に選ばれる。
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②お城に拉致られる。
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ストーリア王国へとやってきたクラウディオ。エドガン王の期待、騎士団の歓待を受けた彼は、内心の苛立ちを押し殺してにこやかに騎士達と訓練を行っていた。
重い金属音が響く練習場で、クラウディオはうっかり抜いてしまった聖剣を振るっている。その剣筋は騎士達とは異なり出鱈目なものだ。それを見た騎士達は呆れながらもクラウディオに剣の振り方を教えていた。平和と言えば平和な彼らの訓練。それを建物の中からそっと窺う美しい王女。クラウディオは勿論王女に気付いていたが、彼には最愛の嫁が居るので気付かぬ振りを通していた。正直に言うと、自分に惚れたらしい女の相手が面倒なのである。ただでさえクラウディア不足なのになんでどうでも良い女を視界に入れなきゃいけないんだ、それがクラウディオの言い分らしい。
ブンッ(俺がっ)
ブンッ(ディア以外をっ)
ブンッ(視界にっ)
ザシュッ(入れる訳ねーだろがっ)
クラウディオの瞳に王女が映ることはなく、しかしそのストイックなところが良いのだと王女や王宮の侍女達はクラウディオに熱を上げる。この国で一番美しいと言われる自分ならクラウディオも喜んで妻にするでしょう、そんな自負を王女は胸に抱く。一心不乱に剣を振るうクラウディオの脳内は愛する妻の事で埋め尽くされているのだが、そんなことがわかるはずもない。
しばらくして、クラウディオは振るっていた聖剣を鞘に納めると騎士達と共に食堂へ移動し始めた。王女はその背を見つめ、自身も身を翻すと騎士達の食堂へと向かうのであった。
ザワザワとした食堂では、王女がクラウディオをいつも見つめていると話題になっていた。そこへ噂になっているクラウディオの登場である。ざわめいていた食堂は一瞬で静まり、クラウディオへと視線が集まった。クラウディオは煩わしそうに眉をしかめるが、それも一瞬のことで端から何も気付いていないように振る舞う。
クラウディオにとって最愛の嫁以外は些事なであり、それらに意識を向ける価値もない。クラウディオは共に移動してきた騎士達とカウンターで食事を受け取ると、空いている席へ向かいパンへと噛り付いた。そこで話題に上るのはクラウディオの剣の上達具合のみ。間違っても、クラウディオが存在を丸無視している王女の事など口にはしない。クラウディオと接している騎士達は一応空気の読める男達なのだ。クラウディオの纏う空気が日を追う毎に殺伐としていることにも触れない。
そう。地雷は、踏み抜かない。
しかし騎士達の努力も虚しく、その地雷を王女本人が盛大に踏み抜くのはまた別のお話。