8-訃報
「起きなさい真鈴。朝ご飯冷めちゃうわよ。」
・・・最近寝不足だ。"謎の女"を見てからまともに眠れていない。
「・・・・今行く。」
あの一度以来"謎の女"に出くわすこともなく、夢に出てくるという事もなかった。
「・・・・・あれは夢だったのか、それとも・・・」
疑念を払いのけ、テーブルに着いた。今日も様々なニュースがやっていた。議員の汚職や殺人事件、朝から憂鬱になる報道ばかりだ。
いつもならパパッと朝ご飯を食べ、学校の支度をするところだが、今日だけは違っていた。
「次のニュースです。昨夜未明、〇〇地区の河川敷で女性の遺体が発見されました。警察が所持品の学生証を確認した所、遺体は現場の隣町の中学校に通っている"百合川薊"さんと見られています。」
―百合川さんが遺体となって発見された。
「ねぇ・・・・この中学校って真鈴が通っている中学よね?百合川さんは知り合い?」
と、テレビを見ている母親が尋ねて来た。
「そう。同じクラスだよ。・・・話したことも一緒に帰ったこともある。」
一緒に帰ろうと誘われた日から何度か一緒に帰っていた。帰る方向が同じなだけで家は知らないが。
・・・・聞いておけばよかったと後悔している。
「その割には冷静ね。友達が亡くなったのに・・。」
母は私が泣かない事、冷静さを責めなかった。普通の人はニュースを見た時点で涙を流すのだろう。だが、悲しみの涙を流すのは後だ。今は"謎の女"を探し出して償ってもらう。
「やるべきことがあるからね。―百合川さんの為にも、茜の為にも。」
そう言って私は家を出た。