6-開始
茜の葬儀が終わり、数日が経った。
相変わらず"謎の女"の手掛かりはない。
(水死体なのに綺麗なままの遺体、都市伝説、行方が分からない百合川さんが見たという"謎の女"の夢・・・・そしてその正体。)
「この女が本当に現れるとしたら無作為に犠牲者を選んでいるのか、それとも法則があるのか・・・・」
学校の昼休み、弁当を広げながらも私は箸が一向に進んでいなかった。頭の中は"謎の女"でいっぱいだったからだ。ここ数日間手掛かりを探すため、近場の噴水のある公園、河川敷、そしてプール。"水場"を中心に捜査を行っていた。・・・・まぁ捜査といっても水場を選んだら、その"謎の女"が出てくるかもと思ったからウロウロとしてるだけだけど・・・・
ところが期待は外れ、それらしき怪しい物を見ることはできなかった。犠牲者に共通項があるとすれば、亡くなる前にぶつぶつと独り言を話していた事、夢の中で"謎の女"に会った事。その2つしか今のところ情報がない。法則があるならそれに従って行動をすれば会える期待はするが、もし無作為に選んでいたとしたらどうしようもなく、"謎の女"に自らコンタクトを取ることもままならない。すべては"謎の女"の気まぐれで行われるという事だからだ。
放課後になり、隣町の中学校の近くのとあるプールに来ていた。そこは一番最初に不審な水死体が発見された場所の数メートル先にあり、何か手掛かりがあるのではないかと感じていたからだ。水着に着替え、プールサイドをうろうろしたり、たまにプールに入り泳いでみたりもした。・・・・1時間ぐらいその場にいたのだが、結局手掛かりは何一つ掴めなかった。
「収穫なし・・・・か・・・。」
気づけばもう暗くなりかけていて、学校終わりの学生や、親子連れが家路についていた。
そんな中、遠くに私は違和感を感じた。
―身長は高く、赤いリップをした長髪の女性。白いワンピースのような服装で、一見すると清楚な女性を思い浮かべるが両手両足はなく、目と鼻もない―
・・・・紛れもなく百合川さんが話した特徴と一致する"謎の女"らしき物が怪しげな笑顔でこっちを見ていた。