3―幼馴染と友達
あれから何度かネットサーフィンをしたが、何日経っても百合川さんが言った"奇妙な女"についての情報は皆無だった。
その間も百合川さんは何度かその夢を見ていたらしい。
「おはよう桜木さん。」
「お、おはよう・・・」
夢の所為だろうか、百合川さんは日に日にやつれていった。
「百合川さん・・・今日は帰った方がいいよ。家に帰って・・・あ。」
―私は馬鹿だ。ここで"寝た方がいい"なんて言ったら百合川さんにどれだけ負担をかけるか―
「・・・・家に帰って休んだ方がいいよ。先生には言っとくから。」
「うん・・・そう・・だね。来たばっかりだけど帰るね・・・・バイバイ・・・」
「バイバイ・・・」
その日、朝と帰りのHRに来たのは副担任だった。どうやら担任は学校にすら来ていなかったらしい。
それも"無断で"だ。普段は真面目な担任が無断欠勤なんてと違和感を感じた。クラス中が思っただろう。
学校から帰ると、隣の家に住む幼馴染の紫苑楓とその家族が私の家にいた。
「どうしたの?楓の家何かあった?」
重たい雰囲気が家を支配していた。
「紅葉と茜が2日前に出掛けたまま帰ってこないの・・・今ニュースで騒がれてる不審死と何か関係あるんじゃないかなって思って・・・・怖くなって・・・」
これからどうやって身を守っていこうかという家族会議をするようだった。
「私は信じてないから。自分の部屋に・・・・」
通り過ぎようとした時、ふと"謎の女"の事と百合川さんの話を思い出した。
―待てよ?確か百合川さんは"女の服に吸い込まれたら親指人形になり、その後、水死体となって発見される"って言ってたけど、もしそれが今回の事件と何か関係あったらどうなる?警察は信じてくれるのだろうか。・・・いや、信じるわけがない。それを信じてしまったらあらゆる失踪事件が"都市伝説"の所為となり、捜査はされないまま終わってしまう。
「真鈴?どうした?」
「いや。何でもない。自分の部屋行くね。」
こうして私抜きで家族会議が行われ、結局、平日の朝は一緒に登校。帰りは担任が言っていたように固まって下校するというものになったらしい。休日はなるべく1人で出歩かない事もだ。
翌日、その日は学校が休みだったため、私は水死体が発見された現場に来ていた。
「何で私こんなところに来てるんだろ。」
現場には花が手向けられていたので、お祈りをして家に戻った。
早速会議の決定事項を1つ破ったわけだが、帰宅すると怒られると思いきや全員が驚愕していてそれどころではなかったのだ。
「お帰り!真鈴さん!!」
「あ。真鈴お邪魔してるよ。」
―紅葉と茜が戻ってきていた。
どうやら方向音痴が災いして当初より帰るのが遅くなってしまったらしい。
・・・どうやってそんなに迷えるんだろう。
「そうだ。二人だけじゃなくて、みんなに聞きたい事がある。」
唐突に話したものだから視線が一気にこっちに来た。家族とはいえ慣れない・・・・
話は戻すが、みんなに"謎の女"について聞いたみた。
「あぁ。なんかうちのクラスでもちらほらと出始めてるね。」
楓のクラスにも紅葉のクラスにも出てはいるらしい。
だが見たことはないらしい。・・・見てたら親指人形になるんかな?
「珍しいね。真鈴がそんな話するなんて。」
「真鈴さんそういう話好きだったっけ?」
「ただの偶然かもしれないけどちょっと引っかかってね。まぁ忘れてくれていいよ。」
楓と紅葉は納得したのだが、茜だけが神妙な顔をしていた。
「茜?どうしたの?」
「いや・・・・」
茜はしばらく考えた後、
「今の"謎の女"・・・あたしそれらしき人見たかもしんない・・・」
と、とんでもない事を言い出した。
「それって夢で?」
「道に迷っている時に。ほら河川敷通ったじゃん?その反対側に見た気がするんだ・・・」
確証はないらしい。その日は見間違いだという事で解散になった。