2―事件発生
隣町の中学校の事件から数日が経ち、徐々に都市伝説は影を潜め始めていた。
その水死体には謎が多く都市伝説が関わっていると誰かが言ってしまったからだ。
亡くなった女生徒は毎年の様に水泳大会に出場している生徒だった。
それ故に溺死などあり得ないと思われていた。河童の川流れ、もしくは猿も木から落ちるなんて言葉があるけど、それだけで片付けられない事件だった。
事件前に友達と出掛けると言っていた彼女は、待ち合わせ場所には来なかったらしい。"らしい"というものこれはただの噂でしかなく、結局のところ隣町という事もあり事件の内容は曲がりに曲がってこちらに伝わってくる為だ。
そんな中事件は起こってしまった。
「HRを始める前に訃報がある・・・・。隣のクラスの高木が亡くなった。それも水死体となってだ。」
教室中が騒然とする。何しろ"この学校"で同じ事件が起きたからだ。高木さんも水泳部ではないにしろ、運動音痴ではない。むしろ運動においては右に出る者はいないレベルだったからだ。まぁ運動音痴じゃなくても泳げない人はいるだろうけど。
「明日には全校集会を行う。不審者が出てるのかもしれんから今日は何人かで固まって下校するようにしてくれ。じゃあ解散だ。」
仲の良いグループ達は一斉に集まりだし下校していった。私はそんな時に一緒に帰る人なんていない。
「桜木さん、一緒に帰らない?」
この百合川さんから声をかけられるまでは。
「・・・いいけど。」
この時に断っていれば大きな悲しみも起きる事はなかったんだろうな。
色々と話してみたら百合川さんの家は私の家と同じ方向だった。
「桜木さんは怖くないの?・・・不審者。」
「いるかどうかも分からないしね。実際に会ってないからよく分からない。」
会ってたら会ってたでそれは最悪だろうけど。
「そっか・・・桜木さんは強いね。あたしなんて怖くて寝れないと思う。」
「私は・・・・ううん。なんでもない。お母さんに相談してみたら?」
「なんか気になる・・・・・。まぁいいや。ところでさ・・・」
百合川さんは立ち止まり、聞きたいことがあると言ってきた。
「聞きたい事?」
彼女が言うには、夢に謎の女が出て来たとのこと。そしてそれを見たことがあるか?というものだった。
身長は高く、赤いリップをした長髪の女性。白いワンピースのような服装で、一見すると清楚な女性を思い浮かべるが両手両足はなく、目と鼻もない。何だその妖怪はと思ったが、百合川さんはとても怯えているようだった。
「あたし夢の中でその女のワンピースの中に吸い込まれたの・・・・」
洋服の中にダイ〇ンでも持っているのかとツッコミを入れたくなったが所詮は夢だしと何も言わなかった。
「吸い込まれた後どうなったの?」
「あたし、親指人形になってたの・・・・」
ん?親指人形ってあの親指人形?
「まぁ夢だしね。気にするこ・・・」
それだけじゃないの!!と私の台詞を遮るように叫び出した。
「次の瞬間にはあたし死んでるの・・・水死体となって・・・そしてその死体をあたし自身が見てるの・・・それがやけにリアルで怖くなって・・・ごめんね、叫んじゃって。じゃあここで。」
彼女は足早に帰っていった。
1人取り残された私は呆然とするしかなかった。
帰宅後、ネットを使いその謎の女について調べてみたけど、結局"検索結果はありませんでした。"と表示された。