1-始まり
―「ねぇ・・?あの噂知ってる?―
―あれでしょ・・・?親指人形のあれ・・・―
―それって本当なの?―
―実際に見た人がいるんだって!―
「おーい。席につけー。帰りのHR始めるぞ。」
教師が教室に入ってきた途端、ヒソヒソ話をしていた連中は散らばり各々の席に着いた。
「帰る前に伝えておくことがある。隣町の中学校の――」
教師が話した内容は中学生の自分たちにとって衝撃的な物だった。
"隣町の中学校の女子生徒が水死体となって発見された"というものだった―
―――――最近私の学校はとある都市伝説の話題持ち切りだった。その恐ろしさを中学校を卒業して約10年後に知る事になるとは今の私は知る由もない。
帰りのHRが終わった直後、自分の席の目の前とその周辺の子達が話しかけて来た。
「ねぇ桜木さんはどう思う?最近の都市伝説の女。」
「怖くない?」
「見たこと―」
これ以上聞きたくなくて最後の子を遮って話始めた。
「私は自分で見た物しか信じてないよ。特に都市伝説とか幽霊とかの類は全く信用してない。だからどう思うって言われても【どうも思わない】としか答えられない。・・・じゃあまた明日。」
「う、うん・・・・。」
彼女たちの表情は見なくても分かる。どこか困惑したような顔だろう。捲し立てるように喋ったのだから仕方ない。でもこの類の話は私にはよく分からなかった。見てもいないものをどうして信じられるのだろう。
こんな話をするぐらいなら読書でもしてた方が時間を有効的に使えていい。
私はすぐにでも学校を離れたくて下駄箱で靴を履き替えて校門を出た。
帰宅途中に電柱に貼ってある一枚の張り紙を見つけた。猫とかオウムなどのペットの"探しています!"の物ではなく、『〇○ちゃん探しています!』という人探しの張り紙だった。綺麗に貼られているところを見ると最近貼られた物だろう。
「都市伝説・・・・ね。」
ボソッと呟いた一言は通りかかった車でかき消された。