プロローグ?
ゲームやアニメ、漫画とかでよく出てくるファンタジーの世界に行ってみたいと小さい頃からずっと思っていた。
魔法があって、竜が空を飛んで、1日1日を充実して生きている実感を持てるような世界がたまらなく羨ましかった。
今もそう思いながら俺は毎日流れ作業のようなつまらない現実でかれこれ30年生きている。
「つまんねぇなぁ〜」
そんな独り言を呟いてワイシャツの胸ポケットから煙草を取り出し、火をつけそれを吸う。すると隣から呆れたようにハァーっというため息が聴こえてきた。
「なんだよ」
俺がそう言うと呆れたように
「いやね、いい加減聞き飽きたんですよ、齋藤さん。言ってて悲しくなんないですか?」
なんて言いながら呆れたように笑った。
「....あのね、悲しいに決まってんだろうがコンチクショウ!!こんなつまんない生き方してるくらいならファンタジーやら何やらの世界に行きたいんだよ!!!美少女エルフとキャッキャウフフしたいんだよ!!」
それを聞いてさらに彼は今度はこらえきれなかったように笑い始め
「....斉藤さんが?び、美少女.ブフッ.エルフとキャッキャウフフ....ブフォッ!!アハハハ!!!無理無理その顔じゃ..ハハハ」
笑ってる彼の言葉に内心グサッときた、なんて失礼なやつなんだコイツ...
「顔は至って平凡でしょ?俺」
そして、落ち着いた彼の言葉は今後生きているなら忘れることが出来ないくらい酷く心に突き刺さった。
「確かに平均的なフツーの顔ですけど、目が死んでるんですもん」
その言葉にあっけに取られていた時に、吸っていた煙草の灰がぽとりと落ちた。
数年後、俺はどうしようもない交通事故に巻き込まれて死んだ。
今思えばしょうもない人生だった。
なんせ、死ぬ間際に煙草が吸いたいと考えていたのだから。
あの時俺は死ぬなんて思わなかったんだろうなぁ〜、とかどうせ目が覚めたら小説とかでよくある自分の家と違う天井だなとか思いながら病室で目が覚めるんだろうなとか少なからず思っていたんだと思う。だけど現実は違って死んだ。
「事実は小説よりも奇なりとはよく言うなぁ」
そう呟くとテーブル越しの彼女が
「え?何いきなり変なことを言い出してるの?しょう..せつ?何それ?食べ物かなんか?」
と、不思議そうな顔で見ている少女の容姿は金髪のショートで若干ウェーブのかかった髪、端正で人形のように整った顔で森のように深い緑色の瞳、そして何より....胸がでかい...じゃなく、長く尖った耳。
そんな彼女の言葉に対し、俺は
「いや、何でもない、ただの独り言だよ」
と返した。
へんなの..と対面するエルフの彼女は呟く
そんな昼下がりの風が気持ちいい日に俺は改めて思ったことがあった。
異世界転生モノって現実に起こってくれることなんだなって。