恋愛話と魔王城
前の話から続く間話なので、読み飛ばして頂いても問題はないと思います。
コンコン…
小さな音が扉からした。
誰が来たのかはおおよそ予想がついていた。
「エルヴィン?開いてるよー」
そういうと、扉はゆっくりと静かに開き始めた。
そこに立っていたのはこの城の持ち主、魔王エルヴィン・ロアである。
「お邪魔します。ねぇロウガ、さっきのことだけど…」
エルヴィンは部屋の扉を閉めると立ったまま喋り始める。
「エルヴィンちゃん、待ってたよ!こっちおいでよ、ガールズトークしましょ?」
そう言うとソファーの方へと歩き始めた。
奥を見ると、常に誰かきているようだ。
美しい赤い髪の毛がソファーから出て見えるーー。
「ぁ…」
レーベルがこっちを見ると小さく声をあげた。
私が聞きたいと思った事の張本人が目の前にいるのだ、どのように対応したらいいかわからない。
「あの、エルヴィン…さん、薄々気が付いているかもと思うのですが…私、女の子…なんですよね…」
レーベルは申し訳なさそうに俯きながら喋る。
エルヴィンの知っているレーベルという人物はビバ!オタクライフ!美少女ゲーム大好き!アニメキャラの抱き枕ちゅっちゅっ
ーーそんな人物である。
「え、えっと…」
私が言葉に詰まっているとロウガが紅茶を手に取りながら喋り始める。
「今まで聞いてた話のレーベルも別に嘘じゃないんだよね?ただ、本当は女の子なんだよね?」
そう言いながら手に取った紅茶をゆっくりと口に運ぶ。
「ロウガさんはいつから知ってたんですか?」
用意されていた紅茶を手に取り砂糖を入れくるくるとスプーンを回す。
私が質問するより先にレーベルが口を開く。
「ロウガさんには、最初からお伝えしてました。エルヴィンさんにも伝えようと思っていたんですけど…言い出すタイミングが無くて…」
「まぁ、言い出しにくいよね。そういうことって」
それを聞くとレーベルは頭を下げた。
「本当はもっと早く伝えようと思っていたんですけど、本当にごめんなさい」
それを見るとこちらまでいたたまれない気持ちになってしまう…
「私は気にしてないけど、この事はグラシオンさんは…」
「言ってません。というか、言うつもりもないですし…。師匠に対して恩義とか、憧れとかはありますけど…その…好きとかまだわからなくて…」
言葉とは裏腹に顔を真っ赤にしながら喋っている彼女には説得力など皆無だ。
「ちなみに、エルヴィンちゃんは好きな人とかいないの?」
ロウガはそう言いながらクッキーをすごい勢いで口に運ぶ。
「私は、そんなの考えた事ないですね…。前に人のこと好きになったのなんていつの事だか覚えてませんよ」
それを聞くとロウガはエルヴィンのほっぺを突く。
「こぉんなかわい子ちゃんが、何言ってるんだか…世の中の男がほっとかないよ?そんなこと言ってるとお姉さんが食べちゃうぞー?」
口元は笑っているが、目がキラキラしている。
まるで狼に襲われる小動物の気分だ。
そんな楽しいガールズトークはしばらく続いたのであった。