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ようこそ!シルヴァンリークへ!  作者: 小鳥遊 星蘭
序章
1/5

シルヴァンリークの魔王様

シルヴァンリーク・エピソード1


王国暦1308年ーーー。


世界に激震が走った。

魔王エルヴィン・ロアがこの世に生まれた。

暴虐、惨殺、非道の限りを尽くす魔王がこの世に生まれたのだー。


しかし…

「どうしてこうなったんだよ…」

深いため息をつき、目を伏せる。

それも仕方がないことだ。

この世界はーーシルヴァンリーク・エピソードのーーゲームそのものである。

今、日本中で流行っているアプリゲーム、シルヴァンリーク・エピソード、このゲームはプレイヤーが操作するゲームとは違う。

ただNPCを作り、世界を見たり観察するどちらかと言えば癒し系のゲームなのだ。

もちろん、魔物や亜人ーエルフやドワーフーなどの種族も暮らしている、操作できない事を除けば王道RPGと言える作りのゲームだ。




長原結衣は普通の会社員だ。

毎日上司に怒られたり、褒められたり、くだらない毎日だと思いながらも日々を生きてきた。

今、日本中で流行っているゲーム、シルヴァンリーク・エピソードのプレイを日課にしていた。

今日も仕事が終わり帰りの電車の中でシルヴァンリークのアプリを立ち上げる。

するとゲームのマスコットキャラクターであるシルクハットを被ったウサギが出てくる。

ゲーム内でのお知らせを教えてくれるウサギシルバーくんだ。

「ようこそ!ゲームの世界へ!」

いつもならば「おしらせ!」と喋るシルバーくんに違和感を覚える。

直後、端末から眩しいくらいの光が照らされて目をつぶった。


次の瞬間ーー

目を開けたら城の中にいた。

理解が追いついてこない。

ふかふかの椅子に腰掛け、偉そうに踏ん反り返ったポーズをとっていた。

目の前には執事やメイドなどの従者が膝をつき顔を伏せている。

私はこの場所を知っていた。

それは、友人から紹介されて、始めたシルヴァンリーク・エピソードの世界そのものだった。

私が始めた時にたまたま、「貴方が魔王キャンペーン」なるものがやっていて、偶然にもそれに当選してしまい、自分が作ったキャラがいきなり魔王になって、友達に報告したのも覚えている。

友達曰く「宝くじに当たるくらいの当選率だよ…それ…」と呆れられたのも覚えている。

特賞として魔王が1人、その魔王に使える忠実なる従者になれる賞が5名に、その他魔王の力の一部が封じ込められている武器など…

魔王というキャラクターにはとてつもないメリットがあった。

初期レベル255…それはこのゲームにおいて最高のレベル、一般プレイヤーでこのレベルまで上がってきたキャラクターは存在しないと言われている。

魔王のために作られた最強の装備たち。

魔王が遊びやすいように、剣、斧、槍、杖、弓、銃、重鎧、軽鎧など…全てがエルヴィンのために新しく作られた装備たちだ。

魔法も全ての魔法が使える。

シルヴァンリークでの魔法職は大きく分けて3種類

ヒーラー、召喚士、魔法使いー。

転職システムはあるが、全ての魔法職を極めている人物両手で数えられるくらいしかいないそうだ。

そんな、魔法全てに加えて魔王専用特殊スキル

従者召喚、刻印付与など名前から想像しやすい物から血肉の園など、詳しく説明を読まないとわからない攻撃的な魔法まで。

ただし、魔王のデメリットもしっかりと存在する。

他のキャラが死んでも街に戻されるのに対して、復活不可能、全装備ドロップ、キャラロストなどー。

これはこのゲームにおいて魔王討伐こそが全てのプレイヤーの最終目標であると言えるからだ。

今いる世界はそんなゲームで観ていた世界だった。


周りを見渡し、次に自分の姿を見る。

白と金の豪華の限りを尽くした正装。

胸は邪魔にならない程度に主張し、髪の色は金色、腰のあたりまで伸びている。

鏡がないので確認はできないが、キャラメイクの時に私が思う限りの美形にしていた。

もし、今の顔がその美形になっているとしたら、生前からは想像できない姿になっているのだろう。


突如、声が聞こえた。それが聞きなれたマスコットキャラのシルバーの声だと気がつくまで時間はかからなかった。

「えー、マイクテス、マイクテス!このたびはシルヴァンリークをプレイしていただき誠にありがとうございました!日頃の感謝を込めまして、プレイヤーの皆様をこちらの世界に招待させていただきました!引き続きシル

ヴァンリークの世界をお楽しみください!以上!」

意味不明な事を言われ頭が混乱する。

ゲームの世界へ招待?そんなことができるはずがない、夢だとしか思えない。

それはここにいる他のキャラクターも同じようで周りや自分の姿を見ていた。


「まったく、意味がわからない…これは夢か?」

執事の1人が顔をあげ、声を荒げる。

エルヴィンほどではないが、かなり上物の衣服に身を包むはその男ーー

グラシオン・ユニゾン

このキャラクターも「貴方が魔王キャンペーン」の当選キャラクターの1人だ。

顔立ちも整っていて、誰の目から見てもイケメンと言われる顔立ちだ。

このゲームで一番すごいところはキャラメイクにある。

目のパーツだけでも、100は超える。

髪の毛に関しても細かい組み合わせ等ができるのでほぼ、同じキャラクターは狙ってない限り作れないようになっていた。

そんなグラシオンの姿は程よく筋肉をつけた高身長な肉体に、 少し長めだが綺麗に整えられた執事に相応しい黒の髪型。

まさにイケメン執事としか言いようがないー。

そんな彼に声をかけられたら、現実世界なら恥ずかしくて目を逸らしてしまうレベルだ。

それでも、数分前の元いた世界の人間だと自分に言い聞かせれば、少しは耐えられる。

「夢だと思いますか?この手触り、匂いこの感覚が全部夢だと思いますか?」

声を荒げてしまった。

「いや、すまない…まだ私も混乱しているみたいだ…」

そういうとその場にしゃがみ込んでしまった。


「本当に意味がわからないわ…でも、私は元いた世界に興味なんてないし、こっちの世界の方が好きだから嬉しいわ、うふふ」

次に顔をあげ声をかけたのは赤毛に縦ロール、貴族のお嬢様と言って差し支えがないほどのーどこか幼さを残したー美人だった。


「レーベルさんは帰りたいと思わないのですか?」

「どうして?生きてる意味がないって言われた世界なんかよりよっぽどこちらの世界の方が私は好きですわ、元々異世界に飛ばされたいって妄想してましたし」


よくある現実逃避を言われているが格段驚くことはない。

このゲームはチャット機能搭載であり、同じ魔王キャンペーン当選者ー魔王エルヴィン軍ーは言ってしまえば少数精鋭のギルドだ。

ギルドチャットをすること以外には自分のキャラクターの行動を監視する以外ほとんどやる事がないゲームだからこそ、必然的にお互いのことを話す機会が多くなっていたのだから。

このゲームのプレイの仕方はキャラクターを作成し、行動のログを観察して所持アイテムの変更やどこのダンジョンに向かわせるかなどを決めるだけだ。自分のキャラがこの世界においてどのような行動をとり、何が目的なのかー言ってしまえばキャラを作るだけでそのキャラを主人公としたノベルが読めるのだ。

だからこそ、課金アイテムのキャラ枠追加が飛ぶように売れるのだ。


「正直、驚きましたけど私もそんなに悪くないのかなって…だってここには何でもあるし…」

「流石エルヴィン様!話がわかりますね!しかし、 今後どうしましょうか?とりあえず今の状況の整理…」

「俺を元の世界に返せ!!このクソウサギが!!!」

魔王軍の1人、エルスが大声で叫びだした。

「エ、エルスさん、そんなに怒鳴らなくても…」

「はぁ…分かってるけど、騒がずにはいられないだろ?」

エルスは半分泣き顔になりながらこちらを見てくる。

銀髪青目、長めの髪の毛を後ろで結んでいる男性ーグラシオンと比較してもー顔立ちは整っている。


「まだ、嫁が来ていると分かれば少しはマシなんだが…」

「お嫁さんって確か…」

「ロウガだよ、このゲームで知り合って結婚した…」

「あー…ロウガさん…確か通常キャラも2人持ちのプレイヤーでしたっけ…?」

「ど廃人だよ…あ、そうだ!エルヴィンさん、呼べませんか?」

そう言われて気がついた。私には従者召喚というスキルがあるのだ。

しかし、使い方がわからない…。

どうすれば従者召喚を使えるのか、とりあえず従者召喚を使うイメージをしてみる。

両手を前に出し、ロウガを呼び出すイメージをした。

すると目の前に魔法陣が展開され、一瞬にしてそこにロウガの姿が出て来た。

「呼ばれて飛び出しジャジャジャジャーン!って本当にこれどうなってるの?」

黒くあちこち跳ねている髪の毛ーーしかし、それは汚い感じではなく跳ね方すらも計算されているかのように左右対称。

そして、紫の綺麗なつり目の女性の顔に似合わない頭部の大きな耳や、お尻のあたりから生えたフサフサのしっぽが種族を物語っているー。

人魔狼王ーデビル・ワーウルフ・キングー

それが彼女だ。

「ロウガさん!」

「さっちゃん!」

「すごいよ!シルヴァンリークの世界に来たんだよ!はぁ…夢のよう…って、どさくさに紛れてさっちゃん言うな!」

「やっぱりロウガさんも来てたんですね…元の世界…戻りたいと思いますか…?」

「私的には戻らなくていいと思ってるけど、誰かそんなこと言ってるの?」

ロウガがキョロキョロとゆっくりあたりを見渡たし、しゃがみ込んで未だ考え込んでいるグラシオンを見つけ近く

「グラくーん、とりあえず帰るより先にこの世界で生きること考えないと、ね?」

「そう、ですね。生きてればいつか帰れる方法が見つかるかもしれませんからね」

「そうそう!ところでエルちゃん、バルザくんが居ないけど、呼ばないの?」

「一緒に呼び出すつもりだったんですけど、従者召喚はクールタイムが長くてそれに…」

言い終わる前に、天井に黒い渦が展開された

ー次元移動ー

その中から翼をばさつかせ態とらしく神々しい雰囲気を出しながら降りてくる。

「魔王エルヴィン様、黒き漆黒の堕天使バルザ・ムーク、お呼び出しに招かれ参上させていただいた…ふっ!」

金髪の切りそろえられた短髪、顔を隠す画面には狐の面のような模様が書き込まれている。

来ている軍服にあちらこちら赤い布が巻きついており、背中からは黒い天使の羽と蝙蝠のような悪魔の羽が生えていたーー。

痛い。

非常に痛い。

この混乱している中にあっても、誰も何も言えなかった。

誰か突っ込めよ、と言わんばかりの空気に耐えて居たらバルザが口を開いた。

「なんて、今はそんな中二病なこと言ってる場合じゃないですよね。お久しぶりです、皆さん」

「バルザくん…わざとだと知ってもなお、やっぱりすごーく痛い…」

グラシオンとエルスは目をそらし、自分の中二病を思い出し、苦い表情を作っていた。

ロウガに至っては腹を抱えて笑い転げて過呼吸のようになっている。

「しかしまぁ、魔王軍全員この世界にいることは、不幸中の幸いといいますか…最強クラスのキャラがこれだけ揃っていればいくらでもなんとかなるでしょ」

全員がウンウンと首を振っていた。

甘い考えかもしれないが、今はそれに縋りたいのだ。この世界で

ーーすこしの間かもしれないがーー

生きていく事を決めなくてはならないのだから。


この今集まっている従者たちに人間という種族はいないと言っていい。

私ーーエルヴィンーーのキャラは一応人間の枠には入るのだが、人間種変異魔王という特殊な種族となっている。


グラシオンは魔王従者ハーフエルフという種族になる。

ハーフエルフはエルフに嫌われ、人にも嫌われ、一部の魔族や差別をしない人間としか暮らせないのであまり人気がない種族だ。

中の人は30代後半の男性で独り身との事。


レーベルは竜血姫と呼ばれる種族。

ドラゴンとヴァンパイアのハーフだがそもそも本来であればなる事を躊躇する種族だ。

課金ガチャの賞品だが出現率0.03とされ、その上に復活なしのキャラロスト有というデメリット持ち。公式的にはシークレットアイテムらしい。チャットで聞いた話だと、魔王従者になれると聞いて使うのを決めたとのことだった。

中の人は男性の高校生で、学校でいじめられていたらしい。


エルスはダークロードドラゴンだ。

ダークドラゴンという種族が従者として変化してダークロードドラゴンになった。

人の姿は高レベルになれば覚えることのできる人化で化けているためだ。

20代前半の男性で社会人。このゲームで知り合ったロウガと結婚している。


魔王従者堕天使のバルザ・ムーク

魔王様の力に魅せられ、天使の位を自ら捨て、この力を魔王様のために使う漆黒の堕天使とは本人談。

しかし、中二病を演じているだけで本人が成人済み男性というのは魔王軍では周知の事実だった。


人魔狼王のロウガ・ウル

人気キャラの人狼が魔王従者になるとどんな変化があるのか、という興味だけでこの種族を選んだ変わり者。

結果として人魔狼王というトンデモない種族に変化した事が彼女にとっては最高の喜びらしい。

通常の人狼王ですらなれた人が50人も居ない中、さらにその上をいく魔王従者専用職。

そしてエルスの嫁であり、まだ20代にもなってないと言う。




しかし、本当にどうしてこうなったのだろう。

ゲームの世界に憧れていたが、いくらなんでも非現実的すぎるのだ。

しかし、グラシオンを除く魔王軍では不安や嘆きよりも興奮が先だったのだ。

なにせ大好きなゲームの中にいて、その世界の仲間と話せるのだから。

当面の目的は生きる事、ただそれだけだ。

そして、情報を集めて何としても元の世界に戻れる方法を探す。

そして、魔王軍の進行が始まったー。


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