イカサマ麻雀大会編 リベンジ編
※この作品はフィクションで出来ています。
また、コメディ要素を含んでおります。
この作品内で麻雀を扱ってはいますが、
麻雀を知らない人も読めるように、
麻雀のゲーム部分の描画は省いております。
■雪辱戦
僕の名は並木浩一、ごくごく普通の大学生だ。
ゲームを有利に進める為に、数学を使って判断をしようという
「数学的ゲーム研究同好会」に所属している。
僕はそこで、麻雀の研究をしている。
研究が、実を結んできたので、実際に試して見たくなり、
「イカサマ有りの麻雀大会」という大会に参加したのだが、
色々と酷い目に会った。
結論から言うと、研究成果を試せてない。
イカサマという名の、詐欺にあったり、
イカサマという名の、スリにあったり、
イカサマという名の、カツアゲにあって
麻雀牌さえ触る前に、リタイアさせられてしまった。
「こんな大会、二度と来るか」と、その時は思ったのだが
さらなる対策を打ち出すことで、僕は再びこの大会への参加を決めたのであった。
■更なる、更なる仕掛け
前回、点棒を増やして、初期の点数を大幅に増やすイカサマをしたが、
ゲームをする前に全てを失ってしまった。
今回は、前回同様、点棒を増やすイカサマに加え、
さらにとっておきの道具を2点、加える事にした。
大手通販サイトで、入手した、これらの道具は、
危険な道具もあるので、使わないに越したことは無いが、
準備だけは、しておくことにする。
ちなみに、この道具は、前回参加して「荷物検査が一切ない」
という事実が確認できたので、持ち込めると判断できた。
前回の参加も、まったく無駄では無かった訳だ。
さて、準備はできているので、後は大会に参加するだけだ。
■大会当日、少しだけ遅刻している
また、少しだけ遅刻をしている。
おそらく30分くらい遅刻するだろう。
しかし、問題無い。
今回も点棒を持ち込んで、最初から+12万点という、絶対的なリードがある。
しかも、僕の数学的な麻雀理論は、あれから試行錯誤を加え、
ネット麻雀の勝率は9割近くを叩き出していた。
これでは「負ける方が難しい」と言っても過言ではない。
入賞もほぼ確定している様なものだ。
「賞金の使い道は、どうしよう?」
などと考えていると、開催場所である木林公園駅に着いた。
■脱落者
すこし遅れて駅に到着した。
麻雀大会の受付がある、公園入り口へと歩いて行く途中、
またも、大学生らしき3人組とすれ違う。
会話を盗み聞きしていると、やはり大会に参加して、
早くも点棒を全て取り上げられ、ゲームオーバーとなった者らしい。
3人組の会話の端々に
「受付に減らされた」とか
「おっさんにスられた」
「モヒカンに奪われた」とか
話している、今回も色々とイカサマ行為が、行われているらしい。
事前の準備も無しに、この大会に挑む事が、いかに無謀かが分かる。
僕は、この参加者たちとは違う、
これから起こりえる全ての事に、対策を備えている。
後は、冷静に対処する、それだけで大丈夫だ。
あれこれと、対処を復習していたら、
あっという間に、公園の入り口に着いた。
■麻雀大会受付
公園入り口には、前回と同じように、受付が設置されていた。
そして、受付係も前回と同じ、マスターが立っていた。
前回はここで、最初に配られる点数、本来だったら5万点の所を
3万点しか貰えていない、詐欺に遭っている。
僕は警戒しながら、受付に近寄る。
「受付をお願いします」
マスター
「参加料が5000円ほど掛かりますが、ご存じでしょうか?」
「はい、知っています、参加でお願いします」
マスター
「ではこちらに記入をお願いします」
と、いって記述用紙を渡される
渡された紙には、氏名と、アンケート記入欄があった。
さっそく、記入をする。
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名前:並木浩一
年齢:21歳
アンケート
・この大会の事は、何で知りましたか?
Web
・この大会に参加するのは、何回目でしょうか?
2回目
・麻雀経歴は?(おおよそで構いません)
約2年半
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さて、この後、点棒の引き渡しがあるはず。
想定した通りの、対処を始める。
スマフォを取り出し、録画を開始する。
証拠を残すためだ。
マスター
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。
初参加の人しか、ターゲットにしてませんから。
ここだけの話、実は、初参加の人しかターゲットに出来ないんですよ」
マスターは少し咳払いをすると、こう続けた。
マスター
「できれば録画は止めて貰えますか、
そうすれば、くわしい理由を話しましょう」
どういった理由だろう?
話を聞いてみたいので、とりあえず録画を一時停止にすることにした。
興味津々で、話を聞いてみる。
「どうしてです?」
マスター
「ちなみに、初期の点数を減らされる事は、誰から聞きました?」
「小太りのおじさんです」
マスター
「・・・やはりあの方ですが、
ところで点数を取るゲームで、勝ちたい時に、
やり方として、二通りの方法があると思います」
「一つは自分で点数を稼ぐこと、
もう一つは何でしょう?」
少し考えただけで、僕は解った
・・・ああ、なるほど
「相手に点数を取らせない事」
マスター
「その通りです、彼は警告として、
『参加時の点数が少ない』という、情報をばらまいます、
その目的は、私の取り分を減らすこと」
「情報を知ったら、次はもう引っかからないですよね、
彼がいなければ、私ももう少し稼げるのですが」
しかし、ふと疑問がよぎる。
「2回目以降の人に対してですが、気になることがあるんですが」
マスター
「なんでしょう?」
「初期の点数が3万点だと思ってる人と、
5万点だと知っている人、どうやって見分けるんです?」
マスター
「ごく簡単な質問をする事で、解りますよ、
『そういえば、初期の点数、いくらだか覚えていますか?』
そう聞くだけです」
「なるほど、『3万点』と答えた人には、そのまま3万点を渡せば良いんですね」
ずる賢い、なかなかの詐欺師だな、この人は。
マスター
「まあ、質問をしなくても、相手が私を警戒しているかは、
だいたい、様子を見れば解りますけどね」
この大会はどこまでイカサマという名の、違反行為をして良いんだろう?
確認の為、質問をすることにした。
「ところで、スリとか、カツアゲって、ルール違反ではないのでしょうか?」
マスター
「大会の運営方針として、
『ルールに禁止事項として書かれていない事は、何をしてもよい』という、
大原則がありますので、
運営側としては、なにもできないのが現状です」
本当に何でも有りの大会だな。
念を押すように、確認をする。
「どうしようもないんですかね?」
マスター
「そうですね、本来はどうにかしたいのですが、善処はします」
これは、実際には何もしない時にする返事だな。
運営としては面倒なので、放置をする気だろう。
まあ、僕には関係ない事だ、スリの小太りの男、モヒカン兄弟については
対策済みなので、なんの問題無い。
マスター
「さて、前回と同じですが、ルール説明は要りますか?」
「いえ、大丈夫です」
マスター
「それでは、いってらっしゃい、ご武運を」
そう言って送り出してくれた。
今回も特に荷物検査などは無く、
受付を無事に通過できた。
■小太りの男との再開
公園を進んでいくと、また小太りの男が、うろうろしていた。
こちらの存在に気づき、近寄ってくる。
僕は前回、この人に、スリの被害に遭っている。
近くに寄られると、またスられるかもしれない。
近づけさせない、とっておきの道具を、僕は準備していた。
鞄から道具の取り出し、スイッチを入れる
すると、バチバチと音が立った。
スタンガンだ。
すると、小太りの男が身じろぐ
「おいおい、勘弁してくれよ、そこまで警戒しなくてもいいだろう?」
「前回、スリにあったのでね、スったのはあなたですよね」
小太りの男
「そんなに、邪険に扱わなくてもいいだろう?
そうだ、俺が盗んだ。
でも、まあ、少し話しを聞いてくれ」
「良いでしょう、ただし3メートル以内には近づかないで下さいね」
小太りの男は話し始めた
「確かに点棒は盗んだ、だが、点棒しか盗んでないだろう?
その気になれば財布だって盗めるんだぜ」
たしかに、そう考えると、まだ良心的なのかな?
小太りの男
「まあ、財布を盗んだら、完璧に犯罪だけどね
さて、もう少し距離を取るね」
といって、さらに後ずさりをする。
さすがに、そこまで下がらなくても良いんじゃ無いかというほど、
10メートルほど、距離をとった
小太りの男
「正直、ここまで準備したのは関心したよ
普通の人だと、ここまでの行動はとらないからね」
さすがに10メートル以上だと、声が遠い。
近づこうとすると、小太りのおじさんが、それを遮った
小太りの男
「ひとつ、警告をしよう、こちらに近づくんだったら、
スタンガンを後ろに隠した方が良い」
歩みを止めた。
「どうしてです?」
小太りの男
「この状況だと、君は、俺を脅迫して、点棒を奪うこともできる」
そういった発想には至らなかった。
なるほど、言われてみれば、そういうことも出来るな。
小太りの男
「でも、今は出来ない」
僕は気になった。
「なんでです?」
小太りの男
「あれだよ」
といって後ろを指さした。
その先には、公園の監視カメラがあった。
小太りの男が必要以上に下がったのは、
カメラの範囲内に入る為だった。
小太りの男
「じつは俺、まあモヒカン兄弟もなんだが、
この大会のため、準備をまったくしていない訳では無いんだよ、
事前に、前日には公園に入って、カメラの位置を調査をしている」
なるほど、今、強盗をすると、カメラに写る訳か。
小太りの男
「更に、大会運営がカメラを追加で設置するかもしれない。
俺は運営本部に知り合いがいるから、少しお金を渡して教えてもらってる
まあ、大人のやり取りというヤツだ」
この人たちも、ただ闇雲に行動している訳ではないという事か。
それなりに、色々と準備をしているんだな。
小太りの男
「もし、そのスタンガンで、脅迫を続けて、
点数を稼ごうと考えているなら、カメラの事前調査は必要だよ」
「その気はありませんよ、僕は自分の身が守れれば、それでOKです
では、僕は会場に向かいますよ」
そういって小太りの男の横を通過していく。
小太りの男
「気をつけて、行ってきな」
見えなくなる位置になると、
小太りの男は呟いた
「あの小僧、成長したな、前は、良いカモだったのに」
■モヒカン兄弟との再開
いよいよ麻雀会場に着こうというところで・・・
「また、居る」
例のモヒカン兄弟がうろうろしていた。
相変わらず、世紀末から抜け出してきたような、
立派なモヒカンをしている。
一人は前回と同じように、ボコボコに凹んだ、歪な金属バットを持っている。
こちらの存在に気づくと、近寄ってきた。
「ヒャッハー、おまえ、麻雀大会の参加者だろう?」
僕は冷静に答える。
「そうですが」
するとモヒカン兄弟は、小型ナイフを取り出して、こう迫ってきた。
「怪我をしたくなければ、点棒を全て出せ」
「わかりました」
僕は、素直に従う振りをして、
この時の為に用意した、とっておきの道具を、取り出す。
一つ目の道具は先ほど使った、スタンガンだ、取り出してスイッチをONにする。
もう一つの道具は、モヒカン兄弟専用に取り寄せた、
刃渡り30センチほどの、アーミーナイフだ。
ナイフというより、ナタほどの大きさがある。
一方、モヒカンのナイフは5cm以下の大きさしかない、
獲物得物は僕の方が、圧倒的に有利だ。
アーミーナイフを取り出し構える。
さあ、リベンジだ。
「さあ、点棒を出すのはどちらかな」
逆にモヒカン兄弟に迫る。
追い返せれば良いと思っていたが、先ほど小太りの男から
「脅迫することも出来る」と言われて少し魔が差した。
いつも1位と2位を取っている、このモヒカン兄弟をココで潰しておけば、
僕は確実に1位の賞金30万円を、手にできるだろう。
モヒカン(弟)
「兄貴、こいつやばいですぜ」
モヒカン(兄)
「ああ、そうだな、やばい、どうするか・・・」
モヒカン兄弟から、焦りがうかがえる。
じりじりと後退する。
「さあ、どうするのかな?」
今度は僕の方から距離を詰め始める。
すると、後ろの方から「キキーッ」と自転車のブレーキ音がした。
後ろから声を掛けられる。
???
「ちょっと君たち何をやっているんだ?」
■想定外の乱入者
振り返ると、そこには警官が立っていた。
警官
「君たち、何やってるの?危ないでしょ、とりあえずそのナイフ仕舞って」
僕も、モヒカン兄弟も、ここはおとなしく武器を仕舞う。
警官
「で、君たちなんでこんなことになったんだ、
なにか言い訳できる事があるんなら、聞こうじゃないか」
警官
「まず、君のそのナイフはなんだ?」
といって、ナイフを持っているモヒカン(弟)
から聴取を始める。
モヒカン(弟)
「このナイフは鉛筆を削ろうとしただけです」
そういうと、鞄から、スケッチブックと鉛筆をを取り出してきた
モヒカン(弟)
「ワタクシは、公園にスケッチをしに来ただけです。
こんな絵を描いています」
といって、スケッチブックをパラパラと見せる
そこには公園の風景が、スケッチされていた。
以外と絵がうまい・・・
警官
「ふーん、まあ、良い、
そちらの人は、なにか言い訳は有る?」
といってもう一人の、バットをもったモヒカン(兄)の方へ
ターゲットを写した。。
モヒカン(兄)
「バットとったら、野球じゃないですか。
野球の練習をしに公園に来ています」
そう言うと、モヒカン(兄)は鞄から
グローブとボールを取り出した。
「なんでそんなに、バットがボコボコなんだ?」
モヒカン(兄)
「打ち返すとどこに飛ぶか解らないので、
守備の練習用としてちょうど良いんです(キリッ)」
モヒカン(兄)
「ワタクシたち、コレでも社会人野球をやっているんですよ
○×企業で、試合に出させてもらってます」
警官
「○×企業か、大学の時、お世話になった先輩がそこに居て
何度か野球を見に行った事がある。
そうかあのときのモヒカン兄弟か」
こいつら、普段からこんな髪型をしているのか?
モヒカン(兄)
「そうです、いやあ、今シーズンは全然打てませんでしたけどね」
なんか警官と打ち解けてる・・・
そして警官は、矛先を僕に向けた
「で、きみは、そのナイフ何に使うの?」
うまい言い訳を考えるんだ、
モヒカン兄弟以上にうまい言い訳を。
「えっ、えと、その、あの・・・」
警官
「銃刀法違反って知ってる?」
「ええ、はあ、まあ、知ってます」
警官
「刃渡り6cm以上の刃物を所持していると、銃刀法違反にひっかかるんだよ」
「そこのモヒカンの彼は、刃渡りが6cm以下だからセーフだけど、
君はどう見てもアウトだよね?」
「ええ、まあ、そうですね」
ダメだ、言い訳が、まったく思い浮かばない
警官
「ちょっと署まで来てもらおうか」
◇◇◇ 僕は全てを諦めた ◇◇◇
「あっ、えっ、はい、解りました」
僕は交番へと連れて行かれて、事情聴取を受ける事になった。
ナイフとスタンガンは護身用ということをアピールしたら、
なんとか納得してくれたようだ。
銃刀法違反については、初回だったという事もあり、
厳重注意という形で見逃してもらった。
しかし、こってりと絞られて、解放された時間は17時過ぎ。
既に麻雀大会は終わっていた。
あの馬鹿そうなモヒカン兄弟が、
きっちりと言い訳まで用意しているとは想定外だった。
人は見かけによらない、この大会でトップを取るという事は、
ただの馬鹿では無かったという事か、奥が深いな・・・
それにしても、ギャンブルの世界が、ここまで過酷だとは思わなかった。
もう、この大会に参加する事は無いだろう
僕は、重い足取りで帰路に着いた。
イカサマ麻雀大会 リベンジ編・完
読んで頂いて、ありがとうございます。
ちょっと他に書きたい事があるので、
この話で、イカサマ麻雀の話は一端、締めます。
またネタが思いつけば、再開するかもしれませんがw