第六話(アリサとの記憶2)
memory2 恋愛系です。人により飛ばしても可。
ポプラの樹を見つめながらケイタは考えた。そしてアリサとの学校の帰り道を徐々に思い出しつつあった
そうだった。少しずつ思い出してきた。学校の帰り道の記憶を。あの頃のアリサ少し髪の毛が長かったんだ。セミロング位だったかな。だから風に髪が靡いてたんだ。その風に乗って仄かなリンスの薫りが充満していた。
道中は暗く険しかった。だからアリサは僕の腕に絡みついて来たんだ。何かに怯えている様で学校で見たアリサとはまた違うアリサを見れた気がした。何か人が変わった様な気がして凄く面白かった。
「…怖い」
「何時もの帰り道だよ」
確かにその当時は凶悪事件が相次ぎ、避難警告が出されていた。怖い気持ちは僕も一緒だったんだ。だからその時はより一層二人の親密度は増した。
本当の事言うとアリサより、僕の方が怯えていたんだ。いざとなると一人だけ逃げたしたい気持ちで一杯だったんだ。でも横をチラリと見た。僕以上に怯えてる彼女見て何故かそんな気持ち無くなってしまったんだよね。今思うとあれは演技だったのか
なるべく前方にだけ注意を引き付けていたんだ。辺りは暗かったけど慣れれば十分に辺りを見渡せる程度だったから。
ふと横の叢から何か出て来たんだ。死角だったかな。
「キャ」
何だったんだろ。良く見えなかったんだ。小動物か何かか…。
「どうしたんだ」
「なんか出てきたよ。可愛い」
するとだ、兎かな。白くて可愛いらしいんだ。でも良く目を凝らして見てみると怪我してるんだ。表情は変わらないが苦しそうなそんな印象を受けた
「可哀想」
アリサは兎を抱えようとした
「よせ。そっとして置くんだ」
俺は自然の摂理に手を加えるのは良くないと思った。だからそのまま道中を進む事にした。凄く残酷なようだがその時はそう思ったんだ。もう仕方なく先を進む事にしたんだ。
黙々と進んでいる内に蛍光灯の光がポツリポツリと見え始めた。その直ぐ目の前にベンチがあった。公園で見掛ける様なベンチを。