第三話(テレパシー)
telepathy
「気にするな」
テツヤは冷静に問い返した。
ケイタは突如の疲労からか貧血を起こした。気が少し遠くなる気がした。
「おいケイ。しっかりしろ
寝るなよ」
テツヤの声が遠退く。体が痺れてきた。視界が薄らぎ曖昧模糊している。頭の中で声がする。
───
(…大…夫か)
…ん
(…大丈夫か)
誰だ
(…意識はある見たいだな。俺は今お前の頭の中にテレパシーを送っている)
…なんの事
(何れお前には気付く時がくるはずだ。テレパシーの時間は極僅かしか無いんだ。いいかよく聴けよ。)
…何
(この森、いやこの世界に今とてつもない天変地異が起きているんだ。今日会った人喰いクロコダイルがいい例だ。単刀直入に言うぞ。此のままでは世界は崩壊する。)
えっ。本当に
(だからお前が救うのだ)
…救う?
(そう…悪い。時間がきた。また後日会おう。
詳しい事は次の機会だ。お前には世界を救う力が備わっていると信じている…)
───
目の前にはテツヤがいた。ケイタはふと我に帰った。記憶が少し飛んでいた様だった。しかしあまり気にしなかった
「助かったぜ。サンキューなテツヤ」
「ああ気にするな。そんな事より大丈夫か」
ケイタはたった今テレパシーという不可解な現象を体験したが、この時はあまり深く考えなかった。
「大丈夫だ。今の所なんとか平気」
人喰いクロコダイルは深い森に姿を隠した様だ
ケイタとテツヤは人喰いクロコダイルについて考えた。ケイタは語りかける
「あんな凶悪怪物この地域で見たことないぞ」
「ああ俺もだ。あの怪物はある一定の地域でしか現れないはずなんだが。」
少し日が暮れ初めていた。
鴉が鳴き始めた
蝙蝠が飛び交った
ケイタはある事に気付いた。時間が無いのだ。日が暮れてしまう。
こんな処で時間を費やしている場合ではないのだ。目的を忘れていた。森を駆けるのだった。しかしまだ昨日の地点にまで到達していない。しかしどうしようか悩んだ。
今日の森は少し危険。
今までに類を見ない怪物と遭遇したのだから。此のまま進めば生きて帰れる保証はないが責めて昨日の道標までは向かいたいと思っていた。
「テツヤお前帰るか?」
「は。いや俺は帰らねぇ」
「じゃこの森一緒に駆けようぜ。昨日の地点までだけどな。用意出できてるか?」
「面白そうだな。付き合うぜ」
「俺についてこいよ」
「任せろ」
彼等は森を駆け出した
森を徐々に深い霧で覆い尽くされている