第一話
ある一人の少年の名を森野ケイタという。その少年は迚冒険が好きで毎日学校の麓にある森に出掛けていた。家の周辺はのどかで自然に満ち溢れており、朝には小鳥の囀ずりが良く木霊していた
ケイタは少年といっても青年に差し掛かる年代で15才程度だという。
ケイタは学校が終わると直ぐに麓にある森に出掛けた。
街は自然が豊かで遊ぶ場所と言っても限られており、友達と雑談をするか公園で遊ぶか程度であったという。
森はとても緑が深く奥行きは当時想像を出来ぬ程の広さであったという。
ケイタは興味本意で森に行き来し、ある一定の場所まで行けば今日は引き返し、次の日は最も遠い場所へ、次の日は更に遠くの場所への行き来を繰り返していた。此れがケイタの些細な楽しみでもあった。何処までも行きたい、とてつもない広い森の果てを探したいと思っていた。これは人間が宇宙の果てを行き来したい心理に似ている。
ケイタは学校で授業を受けていた
今日は何時もの如く授業中であった。何時もの様に放課後のチャイムが鳴り始める前には僅かながらの高揚が滲み溢れてくる。
キーンコーンカーンコーン
このチャイム音は授業の終わりを意味する。授業は朝に4時限まであって給食を挟んで5時限目まである。5時限目の終了のチャイムは下校を意味する。今がまさにその時であった。森に出掛けられる好奇心がケイタに訪れた。心が高揚し始めた。
「それでは今日は此処までね。それでは解散」
教室はザワつき始めた
ケイタは筆記具を鞄に詰め込むと一目散に椅子から腰を上げるとする。
「森野君」
声をかけられた
「はいっ」
「貴方明日は課題ちゃんとやっておくのよ」
「はい。先生分かってます」
管崎ミーナ先生だ。スパルタ教育である。隣で盗み聞きをしていたと思われる同級生の坂下アリサが次いでにたしなむ様に口を挟む。「ケイタは何時も口だけ何だから。ちゃんと宿題してきなさいよ。」
「分かってるよアリサは横から何時もうるさいな。ちゃんとやるって明日楽しみにしてなよ」
「本当なの」
少し半信半疑な表情をアリサは浮かべた。しかし気にせずケイタは教室から飛び出す。教室を飛び出す手前で
「まぁそういう事だから。先生さようなら」