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 純平は昨日の港の倉庫でのことを考えながら、

咲樹がいる教室へと入った。

 純平は教室内を見廻したが、教室には咲樹の姿は

なかった。


 「あれ? 咲樹さんがいないが……」


 純平がさりげなく、教室の生徒らに話しかけると

咲樹の親友の沙耶が


 「咲樹は今日は体調が優れないから休むそうです……」


 と言った。


 「そうですか…… じゃあ、出席を取ります!」


 純平はそう言うと教室の生徒の出席を取り始めた。

 だが、純平の脳裏には昨日の港の倉庫でのことが

過ぎっていた。

 誠也は自分が計画していたことと少し状況が変わったことに

悔しい表情を浮かべていた。


 その頃……


 亜矢は洋館の中で夏華らの姉らと共に引越しの準備をしていた。

 夏華は哀しげな表情で引越しの準備をしている

咲樹のことを見詰めながら


 「本当に良いの?……」


 と優しく、真希に話しかけてきた。


 「うん。良いの…… だって、私の正体がバレちゃったから……

もう、ここにはいられないわ!」


 咲樹は小さく頷き、呟くようにそう言った。

 だが、咲樹の脳裏には純平の顔が過ぎっていた。

 純平が授業が終って、職員室に元気なく、戻ってくると

純平が教育実習を行っている教室の担任の康平が


 「純平君。今、君が教育実習をしている

うちのクラスの咲樹が転校するそうだから。」


 と純平に言った。

 純平は突然の咲樹の転校に思わず、


 「どうして?……」


 と康平に尋ねた。

 康平はテストの採点をしながら


 「さあ。詳しくは知らないけど…… 

家庭の事情みたいだよ!」


 と純平に言った。


 『どうして?……』


 純平が咲樹のことを思うと持っていた教科書などを

机に置くと職員室を飛び出し、真希が住んでいる

洋館へと走った。

 慌てて、学校を飛び出していく純平の姿を見つけた

誠也も純平の後を追いかけた。


 まさに住んでいた洋館から旅立とうする夏華は咲樹に


 「本当に良いの?……」


 と再び、尋ねた。

 咲樹は一粒の涙を流すと


 「もう良いの?…… 行こう!」


 夏華の運転する車へと乗り込んだ。

 純平が咲樹の住んでいた洋館にやって来た時には

すでに咲樹らは旅立った後だった。

 純平は鍵の掛かっていない洋館内に入ると

静かな洋館内で


 「どうして何も言わずに言ったんだよ……

ありがとうぐらい、言わせてくれよ!」


 と独り言のように涙を流しながら、言うと

誰もいないはずの洋館内から


 コトン!…… と物音がした。


 純平は洋館内で一人身構えると


 「誰だ? 誰か、いるのか?……」


 恐怖を打ち消すかのように大声で叫んだ。

 

 「ご、ごめんなさい……」


 物陰に隠れていた咲樹が純平の前に現れた。

 純平は咲樹の姿を見て、驚きながら


 「な、何でここにいるんだ?……」


 と咲樹に言った。


 「ごめんなさい。先生を驚かすつもりは

なかったんだけど…… ちょっと、忘れ物をして……」

 咲樹はゆっくりと純平の方に近付いた。

 純平は咲樹と会えて嬉しかったが直ぐにさっき自分が

言ったことが頭を過ぎり、


 「咲樹。さっきのことを聞いていたか?」


 咲樹に訊くと真希は少し恥ずかしそうに小さく頷いた。


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