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「利央は黙っていて!」
狼の姿から半分、戻りかけた咲樹は
怖い顔で利央のことを睨み付けた。
利央は読んでいた本を閉じると
「大体、お姉ちゃんが仕出かしたかした事でしょう!」
逆に利央は真希に説教をした。
「で、どうするの? 夏華お姉ちゃん」
利央は咲樹の下にいる夏華に訊いた。
夏華は咲樹の下から這い出ると乱れた服と直しながら
「そうね…… このままじゃ、私らのことが
バレるのも時間の問題でしょうね。殺すしかないかも?」
純平の命を奪うことを言った。
純平のことを少し好きになりかけている咲樹は
「そ、そんなの絶対、ダメ!」
と言うと洋館から飛び出した。
「ま、待って! 咲樹ネエ」
利央は咲樹の後を追いかけようとしたが
「利央。良いわ。もう、あの子ったら……」
夏華は咲樹が飛び出していった洋館の玄関を見詰めた。
「飛び出してきたけどどうしよう?……」
咲樹は行く当てもなく、街中を彷徨った。
気が付くと咲樹は親友の沙耶の家の前にいた。
「どうしたの?…… 真希」
「お姉ちゃんと喧嘩しちゃって……」
「また?…… 寒いでしょう? まあ、中に入って!」
沙耶は優しく咲樹を家の中に招き入れた。
沙耶は咲樹の前に温かいココアを差し出すと
「何で喧嘩をしたの? また、くだらないことで
お姉ちゃんと喧嘩をしたのでしょう?……」
咲樹に気さくに話しかけた。
「……」
沙耶に図星を言われ、咲樹は返す言葉がなかった。
「今日は泊まって行って良いけど……
明日は帰って、お姉ちゃんに謝るのよ!」
沙耶が咲樹に夏華との仲直りをするように進めていると
沙耶の携帯電話が鳴った。
「はい。もしもし……」
沙耶が電話に出ると
「もしもし。沙耶ちゃん。 うちの真希、来てない?」
沙耶の携帯電話から聴こえてきたのは咲樹の
姉の夏華の声だった。
沙耶は咲樹の顔を見詰めると
「いいえ。来てませんよ……」
夏華に嘘をつき、誤魔化した。
夏華は沙耶が咲樹のことをかばって、嘘を付いているのを察し、
「ごめんね!沙耶ちゃん。うちの咲樹が来たら、
家に帰るように言ってね!」
と言うと電話を切った。
沙耶も携帯電話を切ると
「お姉ちゃんが直ぐに家に帰って来いって…… どうする?」
咲樹に言った。
「ごめんね…… 今日は無理!」
咲樹は申し訳なさそうに沙耶に謝った。
「まあ、良いんだけどさ…… 一緒にお風呂でも入ろうか?」
「うん!」
咲樹はその日は一晩、沙耶の家に泊めてもらった。
咲樹は家に帰りづらかったが沙耶とも約束したから
しょうがなく、家に戻った。
だが、夏華と利央は何事もなかったかのように
「おかえり!」
と優しく、咲樹のことを家に招きいれた。




