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咲樹は純平に昨日のことを気付かれないように
ごく普通に振舞っていたが・・・・
でも、純平と顔が会うと”ドキドキ”が止まらなくなった。
「何か?……」
純平は何処かで咲樹と会った気がするがどうしても
それが思い出せなった。
「マズいわ! あの子ったら……」
狼の姿になって、校内の茂みに身を隠し、夏華は
咲樹と純平の様子を窺っていた。
突然、夏華の気配を感じた咲樹は辺りを見回し、
『お、お姉ちゃん?……』
夏華のことを探した。
校内の茂みの中に夏華の刺すような視線を見つけた
咲樹は身体を凍らせた。
休み時間に慌てて、咲樹は茂みに隠れている狼姿の
夏華を体育館裏に連れて行くと
「何でお姉ちゃんがここにいるの?」
夏華のことを怒った。
夏華は狼の姿から人間の姿に戻ると
「だって、心配になって…… やっぱり、来て見れば、
あなたってば……」
怖い顔で咲樹のことを睨みつけた。
「でも…… やっぱり、お姉ちゃんがここにいたら、
マズいわよ…… 帰ってぇ!」
咲樹は何とかして夏華を家に帰そうとした。
「咲樹。どこ?…… 授業が始まっちゃうわよ!」
咲樹の友達が中々、帰って来ない咲樹を探し回っていた。
キンコーン、カンコーン……
授業を知らせる鐘の音が鳴り響いた。
「良いわ! ちゃんと見付からずに帰ってよ!」
咲樹は再度、夏華に念を押したが
「はいはい……」
夏華の顔は微笑んで、まるで咲樹の話を聞いていなかった。
咲樹は純平のことで頭がいっぱいだったのに姉の夏華まで
学校に現れたことで全然、授業に身が入らなかった。
「どうしたの? 咲樹。具合でも悪いの?……」
いつもと様子がおかしい真希に親友らが咲樹のことを
気遣ってくれた。
本当のことを言えない咲樹は
「うんん。大丈夫!」
親友らに嘘を付いた。
そんな咲樹の様子を学校の横にビルの屋上から
夏華は見ながら
「あの子、困っているわ! ウフフフ……」
困っている咲樹のことを楽しみつつ、
再び、狼の姿に戻り、家へと帰っていった。
学校が終わり、家に帰ってきた咲樹は
「何で学校に来たのよ!」
と言ったが洋館の中には誰もいなかった。
「もう! 逃げたわね!」
咲樹は夏華がいないことに地団駄を踏んで悔しがった。
その頃、夏華は咲樹が通う学校の正門の前にいた。
夏華は学校から出てきた純平に白々しく、
「あの~…… うちの咲樹はまだ学校にいるでしょうか?」
と声をかけ、近付いていた。
夏華と純平とが咲樹のことを探していると夏華の携帯電話の
着信音が鳴った。
「もしもし…… お姉ちゃん。今、何処にいるの?」
夏華の携帯電話から聴こえてきた声は怒った咲樹だった。
『やばい。バレちゃった!……』
夏華はヤバイって顔をした。
「また、変なことをしているんでしょ?」
そんな咲樹の言葉に夏華は一瞬、純平のことを見ると
「わ、わかったわ…… 直ぐに帰るわ!」
慌てて、咲樹からの電話を切った。
夏華は大きく溜息を付くと
「ごめんなさい。うちの子、家に帰っているみたいだわ……
お騒がせしました!」
純平にそう言い、家に戻った。
夏華が洋館の玄関を入ると夏華の喉元に目掛けて、
一匹の狼人間が夏華を殺す勢いで飛び掛ってきた。
次の瞬間、その狼は咲樹へと変わっていた。
「余計な事をしないでよ!」
咲樹は怖い顔で夏華のことを本気で怒っていた。
リビングの机で本を読んでいた利央が
「咲樹ネエ。その位にしておきなよ!」
と咲樹のことを止めた。




