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「どうしよう? どうしよう?……」
純平を目の前に咲樹はうろたえていた。
「何をやっているの? あんたは……」
咲樹を追いかけて来た夏華は呆れた顔で
そんな咲樹のことを見ている。
「どうするの?…… 咲樹」
「どうしよう?…… お姉ちゃん……」
「どうしようじゃないよ! この人には夢だったと
思ってもらうしか……」
「でも……」
咲樹は切なそうに道路に横たわる純平のことを
見詰めた。
「でも…… じゃないでしょ? このままじゃ
私達のことが……」
夏華は怖い顔で咲樹のことを睨み付けた。
「うん……」
咲樹は夏華と共に純平に真希と出会ったことを
夢で思ってもらう為に何事もなかったように
純平を家まで運んだ。
その次の日
自分らの一族を狩るハンターから身を守るために
人の世界に紛れて、生活する咲樹は何事もなかったかのように
学校に通った。
だが、天使の悪戯は最悪なものだった。
せっかく、咲樹と夏華が昨夜の事を何事も
なかったかのように済まそうと思っていたのに
咲樹が通う、女子校に教育実習生として現れたのは
純平だった。
「ああぁ……」
咲樹は純平を見た途端、自分の席から立ち上がり、
純平のことを指差した。
「咲樹。どうした?知り合いか?……」
真希のクラスの担任の権藤は純平のことを見惚れている
咲樹に声を掛けた。
ハッと我に返った咲樹は本当のことを言えずに
「いいえ…… 何もありません」
と言うと再び、自分の席に座った。
担任の権藤は気を取り直し、
「えっーと…… 今日から教育自習生徒して
うちのクラスに来ることになった……」
と純平のことを説明すると
「冬川純平です! よろしく、お願いします!」
純平は権藤のクラスの(女子)生徒達に挨拶をした。
咲樹を除いて、権藤のクラス(女子)生徒達はイケメンで
カッコいい純平に猫を被った可愛い乙女ぶりを
アピールをし始めた。
昼休みになると咲樹は校舎の屋上に上がり、
携帯電話で夏華に電話をかけた。
「夏華お姉ちゃん。ど、どうしよう?……
昨日のアイツがうちの学校に来たよ!」
「えっ? どういう事?…… 説明しなさい!」
事態が飲み込めない夏華は咲樹に説明するように言った。
「あ、あのね…… 昨日のアイツが私の学校に
教育実習生でやってきたの…… どうしよう?」
咲樹からの説明を訊いた夏華は頭を抱えた。
それは天使の悪戯で夏華がまるで予想して
いなかったことだったから……
「良いわ! 普通にしていなさい。あの者の記憶は
完全に私が消して、昨日の記憶はないのだから……」
「うん!わかった……」
咲樹はそう言うと携帯電話を切った。
いくら、純平の昨日の夜の記憶を消したと言っても
夏華も少し不安で咲樹の通う、学校まで様子を見に行った。




