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 ワオォー・・・・・


 まだ、夜風が冷たい春の夜に美しく輝く満天の月に

遠吠えを上げる一匹の狼


 人里から離れた深い森の奥に古びた洋館が一つ、立っていた。


 その洋館には人には言えない秘密を抱えた少し変わった3姉妹が

住んでいた。


 「絶対、絶対! 私は街で暮らすの。」

 「ダメって言っているでしょ!……」


 いつものように3姉妹の次女【咲樹】と長女【夏華】が

リビングの長いテーブルを挟んで、追いかけっこをしながら

言い争っている。


 「何でダメなのよ! 理由を教えてよ!……」


 咲樹は姉の夏華に街で住んでいけない理由を聞いたが

夏華は押し黙ったまま、答えることが出来なかった。


 「もう良い! こんな家、出て行く!」


 怒った咲樹は洋館から出て行こうとした。


 「ダメ! 言うことを聞きなさい!……」


 夏華は身軽にテーブルを飛び越え、家を出て行こうとしている

咲樹を取り押さえようとした。


 「捕まるもんですか!」


 咲樹も夏華をひらりと交わすと洋館の玄関へと走っていった。

 咲樹も夏華もその身のこなしはまるで獣のようだ。

 咲樹と夏華の姉妹げんかを二階へと上がる階段の上から

見ていた末っ子の利央が分厚い本を読みながら


 「うるさいわね! 勉強に集中できないじゃないの……」


 二階から降りてきた。

 洋館の玄関前で立ち止まっている咲樹は階段の真ん中で

立ち止まっている利央を見上げ、


 「利央からも何か言ってよ!……」


 と言った。

 だが、利央は冷やかな目で咲樹のことを見詰めながら、


 「何で私が……」


 無愛想に咲樹に言った。


 「いい加減にしなさい! 咲樹」


 夏華は咲樹に駆け寄り、咲樹のことを捕まえようとした。


 「嫌だもん! お姉ちゃんのバカ!……」


 咲樹はそう言うと洋館の玄関から飛び出していった。


 冷たい風が洋館のリビング内に吹き抜けた……



 教育実習を明日に控え、純平は緊張しつつも鼻歌交じりに

浮かれていた。

 それもそのはず、純平が教育自習に行くのは

女子高なのだから……


 「もう! お姉ちゃんには本当にムカつく!」


 洋館の家から飛び出して、街に下りて来た咲樹は

姉の文句を呟きながら、全速力で細い路地を曲がった。

 そこを何も知らない純平が運悪く、通り掛かり、

咲樹と鉢合わせて、勢い良く、ぶつかり、二人とも

派手に転んだ。

 咲樹は尻餅を付いたお尻を擦りながら、


 「痛たたぁ…… 何処を見ているんだよ!」


 ぶつかった純平のことを睨み付けたがあまりにも勢いよく、

純平にぶつかったのか、純平は道路に大の字に

寝転び、のびていた。


 「あちゃぁー やっちゃった!…… ねぇ、大丈夫?」


 咲樹は道路で大の字にのびている純平を起こそうと

純平の身体を優しく、揺すった。

 純平は寝ぼけて、咲樹を別れた彼女の澪と間違え、


 「澪……」


 と言いつつ、咲樹に思わず、抱きついた。

 男性にそんなことをされたことがなかった咲樹は


 「きゃあぁぁぁ…… 何をするの!」


 と言うと純平の頬っぺたを思い切り、引っぱ叩いた。

 咲樹のその一撃で純平は再びのびて、道路に大の字に

倒れ込んだ。


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