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第4話 後悔

あれはそう、バイト先の送別会の日。

誰の送別会だったかは忘れたけど、彼と私は抜け出して、二人、星空を見てた。

「秋ちゃん座発見!」

「だからそれ意味わかんないから。」

彼はウォークマンを取り出し、にっこりと笑った。

「聴く?」

左側に彼、右側に私、イヤホンをつけて。

流行のバラードが流れる。

「ロマンチックじゃない?!」

からかうような彼の声。

「まあね。」

「あきちゃんとじゃあんまりロマンチックじゃないかぁ」

「・・・むかつく!」

彼と共有する空間はあまりに心地よくて。

それを壊すのが怖かったんだ。



大学の食堂。

いつもは俊雄と一緒に昼ごはんを食べるのだが、今日は俊雄に会う気になれず、友人の元へ向かった。

「久しぶりに一緒にご飯食べるね。」

友人の真由はうれしそうにサンドイッチをほおばる。

「俊雄君と付き合いだしてから、私の存在なんて忘れていちゃついちゃってさ。

女の友情は冷たいね!」

そう言って真由はあははと笑った。

「でもさ、急に私のところに来たってことは俊雄君となんかあったの?」

大学の入学式で知り合った真由とは、いつも一緒に行動していた。

だから、私の変化にするどい。

「俊雄とは何も無いんだけどさ。」

私の次の言葉を促すように、真由が「うんうん。」とうなづく。

「昔すごい好きだった人と偶然会っちゃってさ。

気持ちが昔に引き戻されてるの。

だから俊雄に合わす顔無くて。」

「それって、昔の男に再燃しそうってこと?」

核心を突く言葉。

真由はこういうことをストレートに聞いてしまう。

ある意味、話が進みやすくていいのかもしれないが。

「再燃とは違うんだよね。なんていうか・・・気持ちを伝えずに終わったから、後悔してて。」

「それで?」という真由の顔は少し呆れ顔だ。

「でもね!彼、結婚するんだって!子供出来たんだって!」

笑ってくれるかと思って少しおちゃらけて言ったが、真由の表情は変わらなかった。

「じゃあどうしようもないじゃん。」

「しかもこの前会った時マブダチって言われた・・・」

真由はブフッと思い切り笑った。

「それじゃよけいどうしようもないじゃん!!

悩む意味が無いよ。」

「そうなんだけどさ。」

真由がふとまじめな表情を見せる。

「そりゃさ。伝えられなかった分、気持ちが残っちゃってるんだろうけど。

大事なのは過去じゃなくない?

今そばにいてくれる人じゃない?

過去の事をうじうじ悩んでるだったら、過去にあったことを糧にして、今そばにいる人を大事にすることの方が大切だと思うんだけど。」

一呼吸おいて、真由は言う。

「過去の後悔は、今後悔しないように行動するためにあるんだよ。」



夜、彼から電話が来た。

「秋ちゃんさ、結婚式の二次会来るよね?」

「うん。」

「じゃあ詳しいこと決まったらメールするね。」

「うん。」

本当に彼は結婚してしまうんだ。

もやもやする気持ちが広がる。

「秋ちゃん、オレの将来のおくさんとしゃべる?!」

うんともすんとも言ってないのに、彼の将来の奥さんが電話に出てきた。

「こんにちは〜。お久しぶりです。私のこと覚えてます?!」

聞き覚えのある声。

いや、知っている声だ。

彼の彼女はバイト先で何度か会ったことがある。

小柄だけどスタイルのいいかわいらしい子。

「うん。覚えてるよ。久しぶり。結婚おめでとう。」

ほんとはあんまりおめでたいと思って無いのに、口からは調子のいい言葉が出てくる。

「秋さんに会いたかったから二次会来てくれるって聞いてうれしかったんです〜。

あ!二次会には彼氏さんと来て下さいね!」

かわいい顔してなんて小憎らしいことを言ってくれるんだろう。

とんでもない発言した彼の彼女を怒鳴りつけたい衝動を抑えつつ。

「ああ・・・。来るって言ったらね・・・。」

と電話越しにあいまいに笑った。




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