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第2話 決意

11月16日は彼の誕生日だった。

その時彼は彼女と別れていた。

チャンスだった。

でも、やっぱり「好き」なんて言えなくて。

私は彼にメールした。

「誕生日おめでとう!プレゼントは無いけどね。」

そのメールへの返信は無かった。

やってしまった。

彼は私の感情に気付いて、引いてしまったのかもしれない。

どうしよう。

余計なことをした。

恋にはマイナス思考の私は、後悔の渦にさいなまれた。

もんもんした気持ちを抱えたまま、バイト先のファミレスに行って、

彼の顔も見れずに働いていたら、

彼が私のそばに近づいてきた。

目を泳がせる彼。

「・・・何?」

メールの事があるから、私は彼の顔が見れなかった。

「用が無いなら仕事しなよ。」

彼と私に沈黙は合わない。

私が彼に背中を向けたその瞬間だった。

彼はとても小さな声でつぶやいた。

「メールありがと。」

心臓が跳ね上がる。

とても些細なことだけど。

この時の彼の照れた顔は一生忘れられないとその時思った。



「秋!あーき!」

はっとして顔を上げると彼氏の俊雄が、ふてくされた顔で私を見ていた。

「ごめん。何?」

「今日ずっとボーっとしてんな。なんかあったの?」

「いや、ただ単に就活に疲れてるだけ。」

1ヶ月前、同学年の俊雄は内定をもらった。

うらやましい限りだ。

「秋もすぐ見つかるって。

見つかんなかったらさ、おれんとこに永久就職すりゃいいし!」

永久就職・・・彼は彼女と結婚すると言った。

しかも子供まで!

想像もしてなかった。

あれだけ付き合ったり別れたりを繰り返してきたカップルだけど、

なんだかんだ言ってずっと付き合い続けてる・・・そこまでは想像してはいたけど。

まさか結婚!!

まさか子供!!

「秋ってば。」

「は?」

「オレ、今プロポーズしたんだぞ?」

俊雄が口をとがらせる。

「冗談に付き合ってる暇はないの!就職相談室行って来る。」

「オレは本気だぞ〜?」

俊雄は付き合い初めからずっとこうだ。

永久就職だとか、結婚とか、本気ならこんな軽い口調で言われたくない。

乙女チックかもしれないけど、ちゃんと指輪を用意して、ちゃんと本気の言葉で言われたい。

だから、私は俊雄のこういう言葉は常に無視。

彼は・・・何て言ってプロポーズしたんだろう?

なんだかむしゃくしゃする。

俊雄のこと、好きだ。

でも、彼のことが頭から離れない。

こんな自分が嫌になる。



気持ちが残ってる。

あの頃、彼に恋してた心が片隅にいる。

突然の再会に戸惑うのは当然の事だと思う。

後悔だ。

そう、後悔。

友達という関係が崩れることを恐れた臆病な私。

彼とたわいない会話をずっと続けていたかったから、飲み込んだ言葉。

でも・・・伝えていれば、変われたかもしれない関係。

もしかしたら、今彼の横で笑っていたのは私かもしれない。

馬鹿な考えだと首を振る。

彼が私に対して、そういう感情を持っていなかったことは恋愛に疎い私にだってわかってた。

だから、玉砕覚悟で告白することより、

安穏としてられる友達を選んだのだ。

間違った選択だったのか。

後悔してるということは間違っていたということなのか。

恋人になることより友達というポジションを守りたいと思ってたのは、

真実だ。

だから、連絡が取れなくなった時は本当にショックだった。

友達というポジションは彼にとって不要だったのだと。

けれど、違った。

安心した。

戻れる。

友達だけど、あの頃のような関係に。

でも!結婚する男とあの頃のようにじゃれあって遊ぶなんて、

奥さんになる人がかわいそうなだけだ。子供だってできるのに!

はっと気付くと彼の働く駅ビルの前にいた。

私、夢遊病みたいだ。

やばい。

こういうのも軽くストーカーと言わないか?

このままじゃやばいだけだ。

ちゃんと気持ちにけりをつけなければ。

後悔してるなら。

もう後悔しないように動かなければ。


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