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81:開幕!!

 タイトル通りですが、まだ競技(種目)には入りません。

 ”パァン!!”という爆竹の音が、体育祭開始の合図を告げた。選手入場口と書かれた看板の前で待機しながら辺りを見回していると……居た。親父だ。

 父、相澤良隆あいざわよしたかは、俺が家を出るよりも早く学校へと足を運んでいた。

 なぜって?ななこから「場所取りよろしく!」と命令されたからだ。我が相澤家においての力関係は【男<女】である。【親父の威厳】【兄の威厳】というものは存在しないのだ。

 まあその甲斐あって、グラウンドの中央の最前列に陣取った親父は、清清しい笑みを浮かべている。


 馬鹿め……最前列っていうのは見晴らしは確かに良いだろうが、砂埃がハンパないんだぜ。







 たまにテレビドラマなんかで”わが子の晴れ姿を見て興奮し、周りから失笑される親”なんてシーンがあったりする。現実問題としてそんな親なんて”希少種”であり、今の今までそんな光景なんて見たことがなかったために、「あんなの嘘だろ」なんて思っていた【過去の俺】よ、その光景は嘘なんかじゃない!!


「由希、こっち向けこっち!!」

「あなた、今がシャッターチャンスよ!!」

「……」

「相澤ぁ、似合ってんぜ!!」


 我が両親はそんな”希少種”であり、俺はそんな希少種の息子だった。めっちゃ恥ずかしい!!しかも獅子神さんまで居るし!!!!

 両親の辺りからは失笑……同団のメンバー内からも「クスクス」と笑い声がこぼれている。いっそ行進している列から抜け出て両親を正座させて説教の一つでもしなけりゃ気が済まないが、今は体育祭の本番である。うかつな行動は生徒どころか他の生徒の親・親類にまで知れ渡ってしまう。

 ぐっと堪えてやや俯き気味に行進する状態の中―――


「どんまい」


 隣で行進する如月の言葉がより一層、俺の心中をどん底まで叩き落した……。




 行進を終え、全団がグラウンドに集まる。その後は校長の”ありがた~いお話”や来賓からの挨拶があったり……。快晴で日差しがきついからはよ終われ!なんて心の中で悪態をつきながら、ようやく準備運動に入る。

 その後、いよいよ体育祭が始まる……最初の種目は―――


「相澤、行くぜ!」

「あぁ、最初っから出番か……」


 無駄にテンションの高い健一に連れられ、俺と健一、そして湊とその他女子(表記するのも面倒)の4人は【男女別100m走】のため、再び選手入場口へと足を向けた。




⇒⇒⇒




「お疲れ様っす相澤先輩!!」

「なぜ既に俺が疲れていると……いや、言うな……」


 入場口に着いて早々に、最近やたらと懐かれている後輩の門司から挨拶される。こいつは初対面こそ少しばかりムカッときたが、なかなか空気も読めるし気も利いている。健一バカとは大違いだ。


「ん?なんか言った?」

「……いや」


 口に出したはずは無いのだが、もしかして俺、健一にまで思考を読まれているのか!?……いや、単なる”勘”か。


「いやぁさっきは面白かったぜ由希の両しぶぺぁっ!?!?」

「……よかったな門司、このバカが俺が疲れている理由を代弁してくれたぞ」

「く、”口は災いの元”ってやつっすね……」


 引き攣り顔の門司を余所目に、俺は行動で「口にした瞬間にこうなるぞ」と注意。門司、これでお前もまた一つ賢くなったな。

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