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78:体育祭2日前

 視点はユキ⇒美雪⇒ユキです。

 裏で何があったのかは定かじゃないが、紫団に属する(同じ組)のメンバーの士気が、日を追うごとに上がっている。


「お前らぁ!死ぬ気で優勝もぎ獲んぞぉっ!!」

『おぉぉぉっ!!!!』


「2年も続けえぇ!!」

『うおぉぉっ!!!!』


「3年も遅れんなあぁぁ!!」

『っしゃあぁぁっ!!!!』


 ……異常である。他の団から「何事だ!?」と言わんばかりに注目を集める紫団の連中は、練習でも手を抜かない。本当に、この調子なら優勝だって夢じゃない……。

 だから俺も、頑張る。事なかれ主義とはさよならだ。


「相澤先輩っ!ぜってー優勝しましょうね!!」

「……あぁ!」


 後輩の門司は、俺の本心を知っているのだろうか……自分の想い人に対する”きっかけ”作りに、俺はみんなを巻き込んでいる……。

 みんなの目標は【優勝】だ。俺の目標は、優勝後の【先】だ。

 利害関係が一致しているなら、俺は俺の持てる力の全てで、優勝を狙う。

 だから俺の横で無邪気にはにかんでいる門司に対して、俺も力を込めて頷いた……。




⇒⇒⇒




「ユキたちの団は、例年以上に盛り上がってないか?」

「あーそーだねえー」


 ユキの居る紫団の団席から少し離れた位置にある我が青団の団席から、私と桜花は紫団の様子を見ていた。いや、おそらくは私達だけではなく、他の団も、その異常な紫団の様子を傍観しているかもしれない。

 時折「今年の紫団ってめっちゃ気合入ってねえか?」だの「妙に団結力がある」だのと、私の周りから口々に紫団の噂をする人間が増えてきてるのも事実だ。


「今年は紫団が優勝するかもしれんな……」

「まぁ団結力は他のどの団よりずば抜けてるね、アハハ!」


 そんな紫団の様子を見て、桜花は意味ありげに笑う。というより―――


「桜花、何か知ってるのか?」

「ん~?さぁ……。まぁ私達も今年が最後の体育祭だし、せっかくだから優勝したいね」

「……そうだな」


 はぐらかされたような気もするが、桜花の言うことも一理ある。私達3年は、この体育祭が終わった後、本格的に受験や就職活動に専念せねばならない……。その点、ユキにはまだ1年も残されている……ならば私は私のために、最後の体育祭を優勝という成績で終わりたい。


「……ならば私達は、紫団の優勝を阻止しつつ、優勝を狙うべきだな!」

「そーだね、相澤くんに美雪のかっこいい姿を見せつけなきゃ!!」


 ユキには悪いが、私には3年生として最後の意地がある。そうそう優勝なんて渡さんぞ!!




⇒⇒⇒




 日も傾き我が家へと帰宅した俺を玄関で待っていたのは、美雪さんとリリナさんだった。既に凜は夕食の最中らしく、リビングからは美味しそうな匂いが漂っている……。


「ユキ、今年の紫団は気合が入っているな」

「ええ、本気で優勝を狙っているので」

「そうか。ならば我々青団も、全力で優勝を狙う。ユキには悪いが、私達3年は今年が最後の体育祭だ……どちらが勝つかなんてわからん……だが、そう簡単に優勝させんぞ。正々堂々と勝負だ!!」


 そうか……美雪さんも最後の体育祭だもんな……。けど、俺にも負けられねぇ理由がある。たとえその相手が美雪さんでも、こればかりは退けない。みんなが一丸となっている、みんなが優勝を狙っている、正々堂々の勝負だと言うのなら、俺も全力で美雪さん達や他の団を押さえ、優勝をもぎ獲るだけだ。


「……負けませんよ」

「望むところだ!」


 にこっと笑った美雪さんは、何も言わずに右手を差し出した。対面し、その手を握る俺の手のひらに、ぐっと力が入る。それは決意の表れで、美雪さんも俺の手を握り返した。


 一筋縄じゃいかない……けど、なぜだか嬉しい……。優勝なんて簡単なことじゃないが、心にめらめらと闘志が宿っているように、胸が熱くなる。

 正々堂々の勝負なら、俺は負けない!負けたくない!!

 それは自分のために……そして紫団のために、俺は狙う……【優勝】を―――

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