77:俺の本音
文面ぐだぐだです……申し訳ありません(謝)
体育祭の練習も学年練習から全体練習へと移行、授業も体育祭の練習を主とし、学校で過ごす服装も制服より体育服がメインとなり始めた、体育祭一週間前。
相も変わらず「ユキ~!通い妻がやってきたぞ~!!」と、朝も早くからテンション高めでやって来る(メイド付き)が、体育祭の練習が本格化した今、会話したりスキンシップ(一方的)したり出来る時間も少なくなってきた。
学校で顔を合わした際には
「う、うぅ~~~!!」
何かを言いたそうに唸ったあとで、桜花先輩(と美雪さんは同クラス)に「はいはい今は敵同士~♪」と引っ張られていく始末。つか【敵】って……
まぁそういう訳もあって、学校じゃあまり会話も出来ない。
……だからだろうか、学校で全校練習がある際には、無意識に美雪さんの姿を探してしまう。
「……何やってんだか……」
そんな自分に気づいて、思わず苦笑。居たら居たで煩わしく思うくせに、居なきゃ寂しい……なんて思う俺は、随分と【美雪さん】という女性の魅力に毒されているらしい。
「どうした?」
そんな俺の様子に気づいてか、河南も時折、俺を気にかける。「いや……」と言葉を濁す俺の態度は、河南の瞳に、どう映っているんだろうか……?
⇒⇒⇒
それは体育祭も間近な3日前の放課後―――
「いよっしゃあ出来たぁ!!」
紫団のメインとなる【段上イラスト】が完成。畳10枚分となった巨大なパネルには、紫の龍のイラストがリアルに描かれていた(いや、龍とか見たことないけど)。
”わぁ~っ!!”と歓声が上がり、徹夜&完成にテンションがハイになるイラストパネル班。気持ちは良くわかる。それにしても……
「なぁ、なんでこれ3枚重ねなんだ?」
普通、イラストってのは1枚(多くても2枚)しか描かないはずだが、なぜに3枚も重ねてあんだろうか?なんて疑問を―――
「ちょい待ち相澤!残り2枚は本番まで見るな!!」
イラスト班のリーダーである小杉(女)に慌てて止められた。何なんだ一体?
まぁ本番では嫌でも目にするだろうから、お楽しみはその時にってヤツなんだろう。
すると今度は―――
「相澤、ちょっと来てくれ」
団長の河南に呼ばれる。いや、河南だけじゃない……俺と普段よくつるんでいるメンバー(健一以外)の3人も、なぜか俺の後をついてくる。
そして河南のあとをついて行って到着したのは、人気の無さ校内ナンバー1の、校内排水処理施設(施錠有り)。
「なぁ相澤……お前、美雪さんのこと、どうするんだ?」
俺らしか居ないことを確認した河南は、開口一番にそう尋ねた。
……いや、ちょい待て、なんでいきなり美雪さんのことを俺に聞くんだ……?しかも「どうする」って一体―――
「相澤、私らに隠しても無駄だって!」
「ユッキーは顔に出やすいにゃ~!」
「……(こくり)」
「何のことだ?」
大方の予想はついている。おそらくだが、最近の俺の行動(無意識に美雪さんの姿を目で追っている)のことだろう。こいつらとはもう2年以上を一緒に過ごしてきた仲だ。些細な変化だって、見逃しちゃいないはず。
それでも恍けたそぶりをする俺は、まだ些か天邪鬼を被っているのかもしれない。
「なぁ相澤……つまらん意地を張るのは、いい加減やめたらどうだ?」
「……」
「もうみんな、ユッキーが美雪先輩に好意を寄せてるのは気づいてるにゃ」
「それに、美雪先輩とわいわい時間を過ごす事だって、あと少ししかないんだよ……」
「……(こくり)」
如月の言ってることの意味を、俺は痛いほど理解できているつもりだ。美雪さんはもう3年生、この体育祭が終わった後には、本格的に受験勉強を始めるだろう……そうなれば、必然的に我が家に遊びに来る回数だって減るだろうし、今みたいにくだらないやり取りだって出来なくなる。
けどな、みんな―――
「……きっかけが、無いんだよ」
体育祭の練習が始まる前までは「ユキぃ、今日も魅力的で私のハートはブロークン!そして一緒に婚姻届を役所に出しにいこう!!」な~んて理解に苦しむ美雪さんなりの【告白】をされていた。
けど、今じゃもう何も言われない……朝会えば「おはようユキ!」、昼に会えば「練習ははかどっているか?」、我が家を出る(帰る)際には「おやすみユキ、お腹を冷やすなよ?」……。何気ない会話の中に俺を心配する言葉はあっても、かつてのような【意識する】言葉が見つからない……自業自得なのは良く分かっていても、そんな些細なきっかけすら、掴めない……作れない……
「河南たちの言うとおりだよ……俺は今までの現状に満足していて、ろくな返事すら返してねぇ……そのくせ、居なきゃ寂しいなんて思ってる。……告白するきっかけなんて、いくらでもあったのに……」
正直、今俺が河南たちに言ってるのは、愚痴以外の何ものでもない。でも、それが本音……。自分から行動することの出来ない、臆病な俺の本心……
「相澤、もしきっかけが作れたら……お前はどうしたい?」
低く、けどよく通る声が、俺に返答を求めてきた。その問いに対する答えは、俺自身の本音の気持ちを待っているように……。
「俺たちは紫団の応援団であり、同じクラスの仲間だ。そいつが助けを求めなくても、俺たちはそいつを助けてやりたいと思う……聞かせてくれ……お前の…相澤由希の本心を!」
そう……そういうやつなんだよ、河南たちは。だから俺も……俺の本当の真実の気持ちを、隠さずに曝け出そう―――
「俺は、綾館美雪さんが好きだ……美雪さんが大好きだ!そう言ってやるさ、それが俺に出来る唯一のことだから―――」
そう、これが俺の本当の真実の気持ち。
「そういうことだ。みんな、聞いたか?」
「うん!」
「にゃ♪」
「……ん……」
河南も如月も結城も湊も、満足そうに頷いた。それから河南はまっすぐに俺を見据え、こう切り出した
「きっかけを作るには、一つだけお前にも頑張ってもらわなきゃいけないことがある……」
「俺に出来ることなら、何だってやるさ」
「……いい顔だ。なら、3日後の体育祭、俺たちと共に優勝を狙うぞ!」
「……マジか?それなら俺だけが頑張っても意味ないんじゃ……」
「安心しろ、お前は自分の参加する種目に精一杯頑張ってくれればいい」
「……わかった、約束する!」
その返事を待っていたとばかりに、河南も、如月たちも、顔をほころばせた。
優勝なんて無謀な気がする……けど、なぜだろう……みんなを見ていると、不思議と優勝も夢じゃないと思えてくる。
きっかけなんて自分の手で掴む(作る)もので、「甘えるな!」と怒られるのが当たり前だろう。けど、そんな俺に力を貸してくれる仲間がここに居る。
だから俺も、精一杯の力を出して応えよう……それがみんなに対する【誠意】だと、思うから。
あれ、ところで――――
「な、なぁ……そういや健一は?」
すっかり忘れていた。うるさいくらいの自称【ムードメーカー】の姿がどこにも見あたらない。
「こんな話をしてたら必ず冷やかしたり邪魔したりするだろうから、小杉に頼んで管理棟の中央柱に括りつけておいた」
あぁ、さすがは団長兼参謀。健一の思考回路も把握済み&対処済みですか……。
ぼちぼち完結が見えてきました。おそらくですが、展開的にはベタかなぁ……と思います。
残りも少ないですが、もうしばらくお付き合いください。