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過去的番外:変態!?私は思った事を口にしているだけだっ!!

変態さんの視点です。ようやく名前が出ます。

出会いは、一年前の春…………。




真新しい制服が初々しい新入生が、続々と体育館の中へと入ってくる。

そんな光景を体育館ステージの袖から眺めていた私、綾館美雪あやたち・みゆきの視界に、我が愛しき人の姿は映っていた。


当時、その人は短髪で目つきが鋭く、周りの新入生も緊張気味に、彼の様子を窺っていた。


見た目は、完全に不良である。警戒しないはずはなかった。

だが、私には彼が不良だとか、素行の悪い生徒には見えなかった。

……なぜ?理由は簡単。


私は過去に、彼に出会っていたからだ。


そんな過去の出会いの話は後からでも話すとして、今は入学式の時の話に焦点を置こう。


たった一度だけ顔を合わした事はあっても、名前も、住んでる所も、まして彼女の有無なんて知らなかった。


だから、知りたい。

そんな気持ちもあって、私は入学式の間中、彼を視界にずっと映していた。


式は滞りなく終わった。新入生以下、他の生徒も後は翌日からの授業予定や日程についての連絡を担任から聞くだけである。

つまり、今日は半日。午後からは休み。チャンスはあるのだ。


そして幸運にも、私のだクラスの担任の話はすぐに終わった。後は学生玄関の前で、彼を待つ……だけ。




「あの!」

「はい?」


その時は来た。続々と帰路に着くべく学生玄関に集まって来た新入生や他の生徒の中に、私は彼を見つけ、声をかけた。


「……私を覚えていないだろうか?」

「…………いや……」


残念。彼は私を覚えていないようだった。


「そうか……いや、すまない。私は、キミに一度会った事がある」


前置きを踏み、私は過去に彼と出会った日の出来事を話す。

すると、彼も当時の事を思い出したようで、苦笑いで「ああ、あの時の!」と言った。

彼が苦笑いになったのには理由があって、当時の事を思えば、申し訳ない気持ちになった私……。


「あの時は、本当にすまなかった!今更の謝罪を不快に思うかもしれないが………」

「ははっ!気にしてませんよ。誰だって間違いはありますから!!」


文句や皮肉の言葉が返ってくると思っていた私を待っていたのは、あっさりとした嫌味の無い言葉と、ちょっぴり恐持てな彼からは想像出来ない、とても魅力的な笑顔だった。


「そ、そう言ってもらえて、私も嬉しい!!」


思わず言葉が詰まったのは、そのあっさりとした性格と、魅力的な笑顔のせいだと思う。

よく、普段はとっつきにくい人の意外な一面を見た時に、ドキッ!とする……なんて話を耳にするが、今、私はそんな立場にある。


…………惚れたのだ。


自慢になるかもしれないが、私はそれなりにモテる。現に、告白も何度もされた。ただ、本気で好きに思えた人がいなくて、全て断ったのだが。

その私が惚れた。一目惚れとは違うのだろうし、錯覚かもしれない。


しかし、その後の彼の言葉が、私の気持ちが錯覚ではないと気付かせた。




「すみません、俺、すぐに帰んなきゃいけないから!失礼します!!」


ハッとした彼は、慌てて下駄箱から靴を取り出し、帰り支度に急いでいる。


(もう、終わりなのか?もう少し話したい……)


言いようのない寂しさが、込み上げた。同性の友人ならまだしも、異性に対してそんな感情を覚えたのは初めてだった。


けど、帰り支度を急ぐ彼を止める理由など、私には無い。けど、何かを言葉にしなければ、せっかく出来たきっかけを不意にしてしまう。だから………


「私は綾館!綾館美雪だっ!!」

「あ、俺は相澤由希です。“由緒”の“由”に“希望”の“希”で由希です。それじゃ!」


靴を履き替えた彼が、颯爽と駆けて行く。再び見せた、笑顔を残して………


この日、私の記憶の中に、しっかりと彼の名前が刻み込まれた。











「如何なされました?」

「ん?少しな……」


迎えに来た車の中で、隣に座る侍従長のリリナは私に問う。私が小学生の低学年だった頃、リリナは我が家に来た。もう10年来の付き合い、私の些細な変化も気付いていたようだ。


「……どうやら私は、恋をしたようだ」

「あら、とても良い事ではないですか!」


目を細め、口元を緩ませながら、リリナは言う。

昔から、私はリリナを実の姉のように思い、今でも慕っている。

だから、包み隠さず何でも話せるのだ。


「告白とは、どのように伝えたら良いのだろうか?どのような言葉を伝えたら良いのだろうか?」

「やはり大切なのは、相手に対して自分はどのくらい好きなのか、という事です」


どのくらい………か。


「それに、告白とはインパクトのある方が良いと聞いた事があります」


インパクト………。




う〜〜〜〜〜む………










偶然とは、予測せぬ事があって、初めて偶然といえる。予測できるのであれば、それは必然と言えよう。

だからこの場合、私と相澤由希が出会ったのは、偶然である。


「あれ、綾館先輩?」

「え……ぬおぁっ!?!?」


彼、相澤と再会した翌日。私は気分的に歩いて登校していた。徒歩では学校まで30分近く掛かる通学路だが、本当にその日は何となく歩いて登校しようと思ったのだ。

そこで、学校まであと10分ほど………という所で、私の名を口にした声が聞こえた。そこは住宅街で、声の方向には、他の住宅とはさほど変わらぬ一軒家と………




想い人、相澤由希がいた――――




「おはようございます」

「お、おお、おおおおはよう!!!!」


出はなから動揺。無理もない、私は昨晩遅くまで、インパクトを織り交ぜた告白を考えていた。目の前にいる後輩の男子生徒に対して………。


「どうかしたんですか?」「あ、いや、あの……」


不意だから、返す言葉が見つからない。怪訝そうな顔の相澤に、私は焦るばかり!どうしよう、どうしよう、どうしよう!?!?!?


「あ、相澤!」

「な、なんですか?」


よほど私の形相はすごい事になっていたのだろう。相澤は若干気圧されていた。幸い、辺りには誰もいない。これは、私にとって千載一遇のチャンスだった。


「相澤、私はキミに惚れた!私はキミに〇〇〇〇で××××して□□□□されたい!!どうだ、私の一生の伴侶にならないかっ!?」


今考えただけでも恥ずかしい告白だった。伏せ字にしたのは、この内容がR―18にならないように……………だ。

だが、当時の私はこの告白で、完全に


(決まった!)


と、思っていた。若気の至りというヤツだろう。


「ぜっっったい嫌です!!!!」


だから、返ってきた言葉に愕然とした。


「な、何故だ!!?!」

「俺にそんな趣味は無いです!!」

「そうか、だが、私はキミが好きだ!!将来と言わず、今、キミと一つになりたい!!!!」


自分の素直な気持ちを叫んだのだが、それがかえって逆効果だった。


「嫌だあぁぁあっ!!!!」


住宅街で叫んだせいか、他の住民が何事かと顔を覗かせ、相澤は恥ずかしさと気まずさと、おそらく私に対する恐怖心(?)から、全速力で走り去って行った。これが、私の第一回目の告白であった。




それから幾日かは、遠くから相澤の姿を見続けるばかりで、言葉を交わす事もなければ、顔を合わせる事もなかった。

しかし、彼が親しい友人の間では《ユキ》と呼ばれている事や、見た目とは違うギャップで、次第に他の学生とも仲良くなる姿を見て、ますます、彼に対する想いは強くなっていった。














彼が入学して一ヶ月が過ぎた頃である。以前、彼に好意を寄せていた私の耳に、衝撃的な噂が飛び込んできた。


“3―Eの松井が1年の相澤って奴と付き合っているらしい”


松井というのは、私の中学時代の先輩。だけど、あまり良い噂は聞かないし、複数の男と付き合っているという話も聞く。直接話した事もないし、面識という面識も無いのだが、あまり好意的にはなれない女性。

不安になったのは、いうまでもない。


噂を確かめるために、私は中学が同じだったという共通点を利用して、さりげなく先輩に話しかけてみた。するとやはり、先輩は相澤と付き合っているという。不安は的中である。

しかし、他人の恋愛に口を挟むつもりは無いし、相澤が幸せであれば、私は潔く身を引こうと思っていたのだが、先輩の言葉の端々から、相澤に対する感情の薄さに気付いた。


「つーか、ぶっちゃけあいつとかどーでもいいし」

「へぇ〜………」


思わぬ言葉に、冷静な口調で返したものの、心の中は先輩に対する憤慨で一杯であった。


「さっきから相澤の事ばっかだけど、ひょっとしてあいつの事好きなん?」

「ええ、好きですよ」


先輩の問いに、私は素直に返す。


「ふぅ〜ん」

「ねぇ先輩、私に相澤をくれません?」


興味なさそうな先輩の言葉に返したのは、我ながら最低の言葉。


「タダじゃ……ねぇ?」

「………いかほどでしょうか?」

「2万でどう?」


最低だ…………金で相澤を売ると、先輩は言ってるのだ。こんな女を彼女にした相澤を情けなく思うが、もっと最低なのは、財布に入っていたお札全てを、彼女に渡した私。


「あら、こんなに?なら、私も当たり障りの無いようにあいつと別れてあげるわ!」


ヒラヒラと手を振り去っていく先輩を見つめながら、私が犯した罪悪感と、彼をお金で売った先輩に、苛立ちはいっぱいだった。




翌日、気落ちした彼の姿があった。

慰めるフリをして、私は徐々に相澤との距離を縮めていった。

そして再び、告白。


しかし、二度目の玉砕。


だが、私という人間は、執着心というものが強いらしい。いつか必ず彼を私の恋人にする!その想いは、今なお続いている。




あれから丸一年。未だ初恋は報われない。しかも、彼は私がどういった人間かを知っているし、私も自分のスタイルを変えるつもりは毛頭ない。


彼は私を下ネタばかりの変態だと言う。だが、私は私が思っている事を口にしているだけだ!変態などとは失礼なっ!!気持ちを素直に言っているだけで、未だ行動には移していない。


私は今朝、相澤由希に宣戦布告した!終わりのない告白を!妥協の無い信念を!!全力をもって彼にぶつけ、私は必ず、ユキの恋人になると!!!!


不安はある。だけどそれ以上に、私の心は期待とドキドキでいっぱいだ。

ねぇ………なんかコメディ要素減ってるし。今回、ようやく変態先輩の名前が出て来ましたね。むしろ遅くねっ!?って、私自身が思ってます。

まだユキと先輩の出会い編は出て来ませんが、そのうち投稿します!………って宣言しとかないと、本気で忘れてしまいそう……

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