69‐2:昼前〜夕方
書き忘れてた内容……というか付け足しのようなものなので短めです。
我が家に来て早々の綾館姉妹だったが、突然「しまった!何の準備もしてなかった!!」と、帰った。
その際にリリナさんが凜と獅子神さんに耳打ちし、なぜか二人も外出。
まぁそんなわけで、俺は家に一人ぼっちである。
やることもなく部屋でベッドに寝転びながら、ヒマを持て余す。
たまにゃゲームでもするか!なんて思ったが、そんな気もない。
仕方なく起き上がった俺の目に、それは写った。
夏休みの始め、皆で海(綾館家の別荘)で遊んだ時に撮った集合写真……。
思えば、今年の夏は楽しかった。海ヘ行った事を皮切りに、物置を漁って地下室を発見したり、盆や盆過ぎにゲーセンヘ行ったり、綾館姉妹と服を買いに行ったり………その殆どで、俺の横には美雪さんが居た。 毎日を退屈だと思わなくなったのは、強引で、騒がしくて、自分の欲望に素直で、俺を振り回してばかりなのに、どこか憎めない……そんな先輩のおかげだろう。
だからこそ、俺は自分が求める《理想の恋人》というものが、わからなくなっていた。
“綾館美雪”という女性は、美人で頭が良く、そして堂々たる人物だ。
ただ、騒がしくて、強引で、自分の欲望に素直で、俺はいつも、振り回されっぱなし。
……でも、憎めない。ちょっぴり変態ちっくな女性なのに、いつも俺の近くに居てくれる。今ではその関係が、当たり前だと感じている俺。
かつて美雪さんは俺に「私はユキが好きだ!自分の気持ちに妥協はしない!!」と宣言されたことがある。だから俺も「自分の理想に妥協はしない!」なんて言葉を返した。
なのに、結局今まで突っぱねることなんて出来てはいない。それどころか、少しづつ、けれど確実に、俺は綾館美雪という先輩に心を惹かれている……。
平行線を辿ってばかりだった関係が、徐々に美雪さんに軍配を上げ始めている。なのに、少しも不安を感じないのは、既に心の中で自分の気持ちが、固まりつつあるからだろう。
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知らず知らずのうちに、俺は眠っていたらしい。気付けば外の日は傾き始め、夜の到来も間近に迫っていた。
静まり返った部屋の中で上体を起こした時、不意に携帯が新着メールを知らせた。
“芦原の神社に集合”
八文字の短くて素っ気ない文章を送りつけてきたのは凜だ。あまり待たせるわけにもいかないので、俺も手早く着替え、財布に携帯を手に、家を出た。