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61:墓参と酒宴と恵さんの感性

今回は連日投稿です。

 その後、なんやかんやとゲームセンターを物色した俺と真琴さ……マコ姉だが、俺の記憶にある限り、UFOキャッチャーしかしてない。

 というのも、マコ姉がUFOキャッチャーのコーナーから一切動かなかったというのが原因。


「ユキ、あのワニのぬいぐるみはどうやって取れば良いんだ?」


「あのウサギのぬいぐるみ……可愛い……」


「携帯ストラップのUFOキャッチャーもあるのか!」


 台の大小を合わせ、数にして12台のUFOキャッチャーの全てにチャレンジしたのは、このゲーセン史上、俺とマコ姉だけのような気もする。

 救いがあるとすれば、このゲーセンのUFOキャッチャーのアームが強かったということ。おかげで沢山の景品をゲットする事が出来た。


 財布はダイエットしたけど……




 夕方になり、再び祖父の家に戻れば、酔っていた親戚達は、既に身なりを整えていた。


「親父とお袋に挨拶せにゃなぁ!」


 叔父や父の親父とお袋……すなわち俺や凜、従姉妹にとっての祖父母の事であり、暑さが和らぐ夕方に墓参しようというのだ。


 祖父母の墓は家からあまり離れた場所にあるわけではない。家の裏手にある山の麓の集合墓所に在る。

 俺とマコ姉も、ゲットした景品を客間に置き、直ぐさま墓参の準備をした。







 まだ新しい墓石に、しっかりと刻まれた《相澤家》の文字。この墓石の下で、今は亡き祖父母は眠っている。


 うっすらと生えた苔をタワシで擦り落とし、磨きあげる。墓前に備えられた花を取り替え、線香に火を燈す……。

 父や叔父が墓前に語りかける中、俺は静かに手を合わせた―――







「ユキ、えらい長く手を合わせてたね?」


 墓参を済ませ、徒歩で祖父母の家に戻る道中、俺の墓参での様子を見ていたらしい恵さんが、不思議そうに尋ねた。


「ユキがお祖父ちゃん子なのは私も知っていたが、先程の様子だと特別な思い入れがあるようだな」


 マコ姉もまた、そんな俺の様子に気付いていたのだろう。


「ちょっとね……あまり信じられる話じゃないかもしれないけど――」

 そう前置きをした後、俺は入院していた時に夢に見た、祖父母のことを話した。






「――っていう事があったんだ。まず信じられるような話じゃないのはわかってるけど、やっぱ俺は、じーちゃんとばーちゃんに助けられたと思ってるから、その意味も込めて、ありがとうって手を合わせてたんだ……って恵さん!?」

「うぅ〜!良い話じゃん、お姉ちゃん感動して涙が止まらないぃ!!」


 か、感動してくれるのは嬉しいけど、鼻水垂れてるよ恵さん……


「私は信じる。ユキがそう思うのなら、真実、祖父母がユキを救ってくれたのだろう…………ところでだが、入院していたなんて初耳だぞ?なぜ連絡の一つも寄越さなかったのだ?」

「そ、そうだよ!そうと知ってれば、お姉ちゃんが手厚〜い看病をしてあげたのに!!」


 あれ?このパターンって、前に母とやり取りした時と同じじゃないか?


「由希、お前入院してたのか!?……そういえば、前に預金がけっこう引き出されていた事があったような……」


 あ、親父も知らなかったんだっけか?つかあの時、凜は母に電報で知らせてたんだったが……


「ん?たしか……「兄が死にかけてる。このメールを見た貴方は、親戚十人にこのメールを廻しなさい」とかいう変なメールが送られてきたんだよな。俺は新手の迷惑メールだと思って無視してたんだが――」

「いわれてみれば、私宛てで《奇妙な手紙》が届いた事があったな……差出人や住所は書いてなかったが「もうすぐ夏ですね、そちらは如何お過しでしょうか?私の兄は今、生死の境をさ迷っています」という不気味な内容だったのを覚えている」


 おい……まさか……


「お父さんには迷惑メール風、真琴お姉さんには前暑見舞いの手紙風にして知らせてみた」

「やっぱお前かよ凜!!」


 これで親戚や親が見舞いに来なかった理由がハッキリしたよ!つか死にかけてた人間を茶化してんじゃねぇよ!!!!




◇◆◇




 祖父母ん家に戻った一同だが、まさかまた宴会になるとは……呆れて物も言えねぇ。

 つか凜!さりげなく晩酌してる親戚をおだてて小遣いもらってんじゃねえよっ!!!!


「あ、そうだ!恵さんにお土産。マコ姉と一緒に行ったゲーセンの景品なんだけど……」

「うわぁ可愛い!!私こういうの大好きなの!ありがとユキ!!」

「は、はは……」


 俺が恵さんにプレゼントしたのは、本物とそっくりに作られた《蛇》のオモチャ。質感とか重さとかも妙にリアルな代物で、これもUFOキャッチャーの景品……。喜んでくれてなによりだが、俺は上手く笑えねぇ……


「な?だから言っただろう?」


 得意満面なマコ姉。さすが、姉である恵さんの事を知っていらっしゃる。

 俺には恵さんの感性が全く理解出来ねぇけど。


「……あれ?なんでユキはマコを《マコ姉》って呼んでるの?」

「ふ……人望の差というやつだ」


 ゲッ!?あんまし恵さんを挑発しないで!ただでさえ《マコ姉》って呼ぶだけでも恥ずかしいのに!!


「マコはずるい!じゃあユキ、私の事は《恵お姉ちゃん》か《ハニー》って呼んで!!」

「絶対ヤダ!!」


 何が悲しくて従姉妹を《ハニー》と呼ばなきゃならんのだ!?




 そういや、恵さんって美雪先輩にそっくりだよな……顔や背恰好は全然似てねぇけど、性格は瓜二つじゃないか?

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