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59:お互い苦労しますね……

 サブタイはあんまし関係ないです。

 八月十三日〜十五日の三日間といえば、先祖の御霊が帰ってくる《お盆》である。


 その盆の始めである十三日、我が家一行は父の実家を訪れていた。


「久しかねぇ!まま、入りんしゃい!!」


 叔母に迎えられ、言われるがままに広間に行けば、既に他の親戚は集まっていた。


 駆け付け三杯ともいうべきか、親父は勧められるがままにビールを煽る。

 母は……オイ、なんで普通の家にジョッキが用意されてんだ!?


「ユキもリンも久しぶりやね!元気してた?」

「あ、はい」

「うん」


 酒を煽る大人達はさておき、俺や凜は、久しぶりに顔を合わせる従姉妹に声を掛けられた。


「そかそか!」

「恵さんも真琴さんも、相変わらずですね」

「アハハハ!私は何時も通りよ!!」

「うるさくない日は無いわ」

「マコが静か過ぎるんや!」


 なんとも掛け合い漫才を見てるような気分にさせてくれる我が従姉妹。名前を相澤恵けい真琴まことという姉妹だ。


「ユキぃ、お姉ちゃんユキに会えて嬉しいわぁ!!」


むぎゅ♪


「恵さん、暑いから!何気に首にキテるから!!」

「えぇ〜!お姉ちゃん離れたくないぃ〜!!」


ぎゅぎゅ〜!!


「く、首……!息……息が出来な!!」


 恵さんは、元気が取り柄のプロレスオタク。可愛い顔とは裏腹に、力が半端なく強い……ってか意識飛びそ……


ゴン!


「いったーぃ!!」

「やめろバカ。ユキが苦しんでるだろう」

「た、助かった……」


 け、恵さんの愛情表現はリスクがデカイ。胸は小さ………なんでもない。

 それにしても助かった!やはり頼りになるのは真琴さんだ。危うくお盆に死んだじーちゃんと遭遇するところだった。


「助かったよ真琴さん!一瞬じーちゃんの姿が頭に浮かんだよ……」

「ごめんユキ、うちのバカが」

「姉に向かってバカとはなによ!」

「身長も成績も私に負けてる恵に、姉の威厳は無いわ」

「ぅわ〜ん!マコがいじめるぅ〜!!」

「……よしよし」


 ま、従姉妹の中では一番年少の凜に助けを求める時点で、恵さんに威厳は無いわな。むしろ真琴さんのほうが姉っぽいし。

 つか、なんで凜は恵さんに膝枕してんだ?







「ユキは可愛くなくなった!昔は「けーちゃん」って私の後ろを着いてまわってたのに!!」

「何時の話!?」

「えぇっと……たしかユキが幼稚園の頃――」

「覚えてねぇよ!!」


 ある程度、腹の中に食い物を詰め込んで、兄弟同士・嫁同士・従姉妹同士でバラバラの会話が弾んでいた。

 ちなみに俺達兄妹と恵・真琴姉妹の話題は、なぜか俺の小さい頃の話になってた。やめろ恥ずい!


「リンは変わんないよねぇ〜!今も昔も可愛い!!」


ぎゅ♪


「恵!リンまで犠牲にするな!大丈夫かリ――」

「美少女と密着……ふふ……」

「「………」」


 恵さんにぎゅっ♪とされ、ご満悦のマイ・シスター。ごめん真琴さん、俺もどうしていいのかわかんねぇ……。

 とりあえず――


「ほっとくか……」

「そうですね……」


 お互い苦労しますね。ハァ……。




 変人同士、気が合うというか……凜と恵さんは、外出。二人の会話に出てきた《リサイクルショップ》にでも行ったんだろう。

古本やら中古CD・ゲーム・ホビーとなんでも売ってあるらしく、中々面白いと言ってたからな。


「やれやれ……うるさいのもいなくなったが、酔っ払いの相手をするのも気が進まないな」

「まぁほっといても心配ないでしょうね、大人は大人同士、勝手に盛り上がるでしょ」


 こういう集まりって、子供は損するんだよなぁ………基本的にほったらかしにされるし。

 凜や恵さんのようにマイペースな人間には、関係ないかもしんねぇが。


「……そういえば、最近新しくゲームセンターが出来たんだが、息抜きに行ってみないか?」

「真琴さん……熱でもあるんですか?」

「む、心外だな。私はそんなに堅物ではない」


 真琴さんって、真面目を地で行く人だから、どうもゲーセンと接点が無いように感じるんだけど……ハッ!まさか!?


「もしかして、好きな人が働いている……とか?」

「生憎だが、私は従兄弟をダシに好きな人に会う口実を作ろうというほど器用ではないし、生まれてこのかた、好きな男などおらん!!」


 やっぱ堅いな真琴さんは。つか、異性に興味が無いんだろうか?

 まぁとにかく、せっかくのお誘いだし、断る理由もないから――


「行きますか!」

「ん、行こう」




 真面目な人とゲーセンという組み合わせ、こりゃ興味津々だ。

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