58:妹は母の血を濃く受け継いでいる
文章短めです。
結局、菜々子(母)と凜(妹)は、朝からガッツリとトンカツを召し上がりやがった。買い物した際に肉を買ってて良かったよ、まったく……。
「ユキ、美味しかった!ご馳走様!!」
「誰かに料理を作ってもらうというのは、嬉しいものですね。ユキ、ご馳走様でした!」
「美味かった〜!なんか身体もスッキリしたぜ、ご馳走さん!!」
お粗末様です。喜んでくれてなによりだ。
まぁ、綾館姉妹も獅子神さんも、朝飯を食ったら各々自宅へと帰って行った。 んで現在、我が家には母・妹・俺の三人が居る。母は休暇と称して、フローリングの床に寝転びファッション誌に目を通し、妹は部活という名目のもとに外出の準備。俺は課題も終わったので、いつものように洗濯・掃除・皿洗い。
「っし、終わった!」
「ご苦労さん」
俺に一切の視線も向けず、イラッとくるような感情の篭ってない感謝の言葉を返す母。そんな性格は、凜がバッチリ引き継いでるよ……なんて思っていたら、いきなりガバッと跳ね起き、「そういえば……」なんて呟いた母は、俺に顔を向けた。なんなんだ?
「さっきのツリ目美人の……獅子神ちゃん、だっけ?あの娘と由希って、どんな関係?」
「どんな関係って……どんなんだろうか?」
正直なところ、俺と獅子神さんって、なんなんだろうか?まぁ一番しっくりくるのは“友達”だろうな。……年上の女性に対して友達というのもどうかと思うが。
「んじゃ、出会ったきっかけは?」
「ん〜……たしか、獅子神さんが歩道で倒れてたのを、俺が“拾った”んだと思うけど」
「ほうほう!で?」
「で?」と、言われてもな……
「その後は、なんか獅子神さんに因縁つけてる連中に俺が拉致られて、俺がナイフで刺されて死にかけたんだよな、たしか」
「へ〜!そうなの……って、刺された!?」
「で、まぁよくはわかんないけど、時々家に遊びに来てくれるような関け――」「ちょい待ち由希!あんた刺されたの!?」
今更だな母よ。俺は二週間くらいは入院してたと思うぞ。
「左胸にブッスリと。傷は深かったけど、心臓と肺をすり抜ける感じだったから大丈夫だった」
「私、あんたが刺されたとか入院したとか聞いてないんだけど!」
おいおい、んなはずは無いだろ。凜が連絡してたはず―――
「――あ、そういえば!なんかよくわかんない電報が書類の中に紛れてたような……なんか「アニキトクスグカエレ」とかなんとか書いてあったような――」
こんな時代にまさかの電報!?
「アナログってみた」
「やっぱお前か凜!」
「私は迷惑メールとかの類だと思ったわよ!!」
「テヘッ」
テヘッじゃねぇ!!感情0で舌出すな!
つか、完全に凜のせいじゃねえか、両親が見舞いに来なかったのは。
「そ、それより由希は大丈夫だったの!?」
「大丈夫なのか心配なのは母さんの頭ん中だ。無事だから此処に居るんだっての!」
「まさか幽霊!?」
「………」
ツッコミを入れるべきか悩む事を言うな。