57:宿酔い達の朝
二日酔い(宿酔い)って辛いですよねぇ……未成年の方にはわからないでしょうが(苦笑)
リリナさんに担がれ、早々に自分の部屋で就寝となった妹。
酔っ払って脱衣所(風呂場前)に乱入し、その後は勝手に俺の部屋のベッドを占拠した揚げ句、「ユキの匂いがするぅ」なんて変態らしい寝言を吐かしやがった美雪先輩。
いつもは姐御肌で何かと世話になりつつ、案外可愛い部分もあるのに、酒に飲まれてネガティブになった状態のまま、テーブルに上体を突っ伏す獅子神さん。
ま、これら三人は早々に眠ってしまったので問題は無いのだが、残る二人が、俺にとってはアルコール以上に頭痛の種になっている。
「アッハハハハハ!!」
「オホホホホホ!!」
笑い上戸な母とメイド。テーブルには、空となった酒瓶の山……。
話は尽きないようで、騒がしい。
「母さん、そろそろ寝たら?」
「ん〜?由希は堅物ねぇ〜」
「まったくですわ。自分の部屋で眠る妹に手を出さないなんて……据え膳喰わぬはなんとやら……ですよ?」
「「アハハハハハ!!」」
手ぇつけられん……。堅物なのは関係ないし、自分の妹に手を出せなんて、普通言わないだろが!出した時点で犯罪者の仲間入りになるだろ!!
「さあって、堅物息子は放っておいて、風呂にでも入ろっか!」
「でしたらお背中を流しますわ!」
「あら、至れり尽くせりねぇ!うちのお風呂は大人四人くらい余裕で入れるから、一緒に入りましょ!!」
「光栄ですわ!!」
あぁ……騒がしい……。でもようやく、俺にも安眠出来る時間がやって来たようだ。
◇
起床時刻、午前6時。何時もより1時間くらい遅いが、まだ誰も起きてる気配は無い。
なんせ、俺はリビングのソファで寝てたからな、台所や各部屋へ行く場合には、リビングを通る必要があるんだが、その形跡も無いし。
身体をバキボキと鳴らし、先ずはゴミ捨て。今日は……古紙か。
騒がしい昨晩から一夜明け、辺りはすっかり朝になっている。ただ、まぁ……暑い事には変わりない。
そんなこんなでゴミ捨てを終え、我が家に戻って洗面所で洗顔・歯磨き。その後は直ぐさまエプロン着用。なんせ飯食わなきゃ、一日が始まらない。
「……粥か?」
昨晩は酔っ払いが増加したので、あっさりとした食事が良いと思うのだが、お粥は安直過ぎるような気もする。
まぁ結果として粥を作る事に変わりは無いのだが、ちょっとした工夫は必要になるな。
「お、おはようご、ございま……うっぷ!?」
「おはようございますリリナさん。大丈夫っすか?」「き、昨日は調子にの、り過ぎまし……た」
リリナさんが弱ってるし。酒って強いな。
ま、自業自得だわな。……半分くらいは菜々子(母)のせいだけど。
「わ、私も、何かおて、お手伝いいたしま……うぅ……」
「とりあえずテレビ横の薬箱の中に“胃腸薬”があるんで、それでも飲んでて下さい。手伝える雰囲気じゃないみたいなので」
「こ、今回はお言葉に甘えさ、せていただ……ぐぅ……」
よろよろと壁を頼りに薬箱へと向かうリリナさんの為に水を用意し、再び朝食作りに取り掛かる俺。
うん、とりあえず副菜を作ってみるか。
◆
高菜の胡麻油炒め・鳥そぼろ・野菜味噌・鮭フレーク・梅とおかか(鰹節)の和え物………副菜はこんなもんでいっか。
いつも思うんだが、ただの白粥に梅干しだけじゃ、味気ないと思っていた。栄養価だって知れてるもんだし。やっぱ朝飯は活力の源だからな、副菜を粥の上に自分で自由に乗せて食べるスタイルなら、身体と好みに合わせて食べる事も出来るだろうし。
「ユ、ユキ……おは、よ……うっぷ!」
あんたもか美雪先輩。
「うぅ……相澤……お、おは……よ……」
うぅむ、獅子神さんも二日酔いだなこりゃ。
「おはよう由希!ありゃ?みんなどした??」
流石、鉄壁の胃袋を持つ《うわばみ》菜々子。
「ユキおはよう」
そして“うわばみ”の血を引く凜も普通に起きて来たみたいだ。
そういや、俺も昨晩はけっこう飲んだ(飲まされた)はずだが、体調に影響は無い。これも“血”だろうか?
さてと、全員揃ったみたいだし、朝飯食うか!
◆◇
「うむ、これは良いな!胃にも負担がかからない」
「あぁ、自分の好みに合わせて食べるスタイルもありがたい!」
「流石はユキ、味付けも申し分ないです。私は野菜味噌が気に入りましたわ」
宿酔いの三人には好評のようだ。作った俺としてもありがたいお言葉である。 とはいえ―――
「由希、私は物足りないんだけど。なんかカツ丼とかないの?」
「私はサイコロステーキが食べたいわ。200グラムくらいの」
我が家の肉食系女子(?)には、あんまり評価を得られなかった。
つか、どんだけ朝から濃いんだよ、見ろよ周りを!げんなりしてるだろが!!